ハイハイ、ベタですね
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
自分と嫌なところを、別の人が持っていたり、していたりすると、同族嫌悪が凄まじいじゃないですか。
そんな、『何でも許せる方向け』の話。
創作物でよくありがちなのは、なんでも備えたキャラが他に靡く事なく、主人公だけを愛し、なんでもホイホイ言うことを聞いてくれる、というものであると私は思っている。
其れに対して眉間に皺を寄せながらも、根底において私も同じ穴の狢だと言わざるを得ない。
姉が漫画を読んでいる。偶然にもとある評論系ユーチューバーが酷評していた作品だった。
あらすじを述べると、何も持たない主人公がある日突然なんでも出来るハイスペに見初められ、さっさとざまぁして、溺愛される。という非常にベタな展開の話。そんなご都合主義故に、ツッコミ所も多く、破綻している箇所も多い。
俺はドン引きする。そんなものが好きなのか。と。なんでもチヤホヤされれば良いのか。と。
そんな俺の心情を見抜いてか、姉は俺を一瞥した。
「これ、気になるの?」
「あー……いや……別に……」
流石に姉とはいえ、趣味にケチをつける訳にもいかず、歯切れ悪く返答する。
「そ、つまんないから、お前に回そうと思ってんだけど。大して変わんないよ。アンタが前に買ってたラノベとさ。なんだっけ? タイトルクソ長いの。でも嫌ならいいや」
姉特有の暴君めいた一面を垣間見せて、本を閉じた。顔を見てみると、退屈そうだった。しかし今の返答が琴線に触れた。
「違うだろ。あのラノベとは」
「同じだよ。確かに主人公はなんでも出来るのかも知れない。でも仕事を手伝ったりとか、ちょっと良いとこ見せたぐらいで、ゾッコンレベルに惚れ込む事はないよ。
……作者の願望が透けて見える。ちょっといい事したぐらいで、学年で噂されるぐらいの美少女に惚れられたい。モテたいって。そんな簡単じゃない。人間ナメてるよ。
……ダッチワイフが欲しいなら、モノホン手に入れた方がいくない? その方がもっと気持ち良いよ」
苛立った時に見せる、矢継ぎ早の中傷の嵐。徹底的に詰って、ねじって、反論を捩じ伏せると、何時もの『アンタの考えがあるならどうぞ』という白い目で見つめ返してくる。
反論したところでまた暴言を浴びせられるのだろう。そう思って睨み返す。しかし姉の反応は想像と異なっていた。一度、自分の頬を平手で打つと、ボソッと一言。
「ごめん。アンタの好きな気持ちを否定するのは人としてやっちゃいけない事だった」
其れから部屋を出ると振り向き様に一言。
「でも……気が向いたら呼んでみてよ。男女の性別総とっかえしてさ」
最初はイマイチでしたが、今は結構好きな話になりました。対比が所々にある。
弟は姉の趣味を根っこではドン引きしつつも否定せず、姉は徹底的に捩じ伏せる。
けれども弟だって、ドン引きした作品と似たり寄ったりなものを読んでいて、人の事言えないんですよ。
ご都合主義が大好きで、血は争えないって言いたいんです。
そんな薄暗い人間模様が見えたので作者は満足。
作者は人のあくどさを食らって小説にするのが好きなので。
さて、前置きもこれくらいにして。
姉は何故『面白くない』と思いながらも読むのか。
多分、本当に面白くなかったら、読まないと思うんですよ。何かしら気になるから読んでるんだと思います。
それこそ、弟から借りたであろう、ラノベと共通点を見いだすくらいには。
だから怖いもの見たさ。的な心の動きかと。
そこで何故ここまで苛立っているのか。
多分弟に自分を自己投影しているからだと思います。
『面白くないなら読まない』をこれこそが正論です。
でも上記で記したように、怖いもの見たさで読んでしまうのだと思います。
そしてそんな自分が絶対に許せない。許せないから、冒頭で『同じ穴の狢』とも自己否定してます。
そうしてそんな自分の嫌な所と似通った存在が目の前にいたら、きっと八つ当たりを込めて暴言吐いてしまうのではないかな。と思うんですよ。
よくあるじゃないですか。
今の自分達の関係を、誰かに当てはめて本人の前で話をするって。
『〇〇って子がメンヘラウザくて〜(お前のことだよ)』
『えー、ウザっ。束縛キツっ。私その人大嫌い』
いや、貴方の事を名前変えて言ってるだけだよね。
どんだけ自分の事見えてないんだよ。って。
それと同じ感じかな。
コレは個人の意見ですが、上に生まれた子って、基本下の子に対して暴君じゃないですか。
だから弟妹は『兄/姉怖い』なんてよく聞きます。
だからちょっと暴君です。