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なんせ

作者: 玉手箱

昨日は雨らしい。明日は晴天のよい天気だった。街を歩く。道を歩く。電柱のすぐそばに人が立ち止まっていた。

「良い天気ですか?」

声を掛けるが、返事はない。こちらを凝視し続けている。まるで人を見ているかのようだ。それでも諦めず声を掛ける。

「悪い天気ですか?」

ちょっと言葉を変えてみる。たまに、というか結構な頻度で日本語を理解していると勘違いし、その言葉を恥ずかしげもなく、吐露してくる人がいるからだ。この人はどうだろうか。

今日も今日だった。昨日はもう少しで今日になるし、明日は今日だったものだ。右手には縄が、左手には包丁が置いてある。足元には見覚えのある人がある。息はあるようだ。

「大丈夫ですか?」

声を掛ける。しかし、あの時と同じように返事はなくこちらを凝視し続けている。あの時と違うのは、まるで物を見ているかのような目と、それに対する感情のみ。私は安堵した。

昨日も今日と同じだった。明日はどうだろう。明日を想像してみる。しかし私は「想像」というものが嫌いだ。想像とは、思考の怠慢であるからだ。明日は・・・、ふと、下から音が聞こえた。物体の息遣いが、生物だったときの名残りを表現するかのように聞こえてくる。音楽でもかけようかと思ったがやめた。音は音であるからだ。視界に音は、入ってこない。それはなぜなのか疑問に思いながら食事を済ませ、視界を閉ざす。明日は、街を歩こう。

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