表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降りの谷 私、もう王都には戻りたくありません!  作者: ゆきあさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/63

アルベールとソランジュ

来ていただいてありがとうございます!


後日談最終話です


前半はほぼアルベールの惚気です

ご注意ください





危険の多い人生だったと思う。


子どもの頃から命を狙われて、護衛騎士にかくまってもらい、息をひそめて目立たないように生きていた。


平民(わたしたち)は一番上等なよそゆきの服を仕立てて神殿で誓いを立てるんです。その後に結婚式に来てくれた人達とみんなでご飯を食べたりお祝いのお花を貰ったりするんですよ」


ソラが夢見るようにうっとりと笑う。ソラは俺の人生にそそいだ二つ目の光だ。一つ目は護衛騎士のレノーとその妻のポレット。彼らとの出会いが無ければ俺は今ここにはいなかっただろう。


ソラの希望通りの小さな結婚式を挙げるために、星降りの谷の近くに小さな神殿を建てた。

「ずれてる……アル様ずれてるよ……!」

バジルには馬鹿にされたが、王都でソラを見世物にするのは嫌だった。それにこの地に移住する者も増えてきたため、いずれ色々な施設が必要になってくるだろう。今は皆青星塔で暮らしているが、バジルとシュシュテインもいずれこの地に屋敷を建てると言っている。もちろん俺とソラが住む為の屋敷も建設中だ。




「このドレス可愛いです!」


閉店後の店でソラが選んだドレスはシンプルだけど可愛らしいデザインだとシュシュテインが褒めていた。俺としては選んでくれたドレスが露出が少ないもので安心してた。ソラはそんなに高価なドレスは要らないといったが、俺はさりげなく最高級の生地で同じ形のドレスに仕立て直すように手配しておいた。



そして迎えた結婚式の朝。俺は待ちきれなくてソラの部屋の前の廊下でウロウロと歩き回った。

「少し落ち着きなさい」

呆れたようなレノーに窘められてハッと我に返る。


「アル様、小型の猫魔獣みたいな動きだね」

バジルはそう言って笑ってた。一年前の自分の時だってソワソワして椅子に座ったり立ち上がったりを繰り返していたのに。バジルは俺をからかうのがライフワークだと言っていた。いつかシメようと思ってる。


「準備ができましたよ、アル様」

ドアがやっと開いてポレットがソラの部屋から出てきた。


部屋に入ると、そこには女神がいた。戦女神じゃない。俺の光の女神だ。


蜂蜜色の髪に小さな花々が飾られ、真っ白なドレスに身を包んだ俺のソランジュ。胸元には青紫色の宝石をあしらったネックレスが輝いている。シュシュテイン、ポレット、ニナそしてレアが付き添ってくれている。どんな貴族の娘達より清楚で美しい。


「どうですか?アル様」

恥ずかしそうに頬を赤らめてる姿が可愛らしいと思った。

「うん。綺麗だ。ソラが世界一だ」

「あ、ありがとうございます……。アル様も素敵です」

更に真っ赤になったソラが可愛くて抱き締めようとしたが、シュシュテインに止められた。

「ドレスが乱れるし、化粧が落ちる」

少しくらいは大丈夫だろうに……。不満だったがなんとか我慢した。


青星塔から神殿へ移動し、結婚式が始まった。神殿にはセルジュとクレールも来てくれていた。そして驚いたことにソラの妹のリリアーヌの姿もあった。どうやらセルジュが連れて来てくれたようだ。


「リリアーヌ……!」

ソラはとても驚いた顔をしたが、次の瞬間嬉しそうに笑った。

「アル様が?」

「いや、俺じゃない。多分セルジュだ」

「……そうですか。後でセルジュ様にお礼を言わないとですね」

「ああ、そうだな」


ソラは神殿の吹き抜けの窓から差す光を見上げた。その横顔は美しいを超えて神々しくもあった。

「綺麗な神殿……。アル様、ありがとうございます」

「半分以上は自分の為だ。早くソラと結婚したかったから」

「私もです」

はにかんだ笑顔が本当に……。


二人で神官の前に進み、永遠の誓いを立てた。ようやくソラの一番近い存在になれた。





✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧





その夜も星がたくさん降って来た。


私とアル様は結婚式の後のパーティーの後、青星塔の屋上に上った。結婚式、国王様へのご挨拶と婚姻晶証明書を二人で提出したりと結構忙しかった。でもとっても楽しい一日だったから、きっと今日の事は一生忘れられない。



星空だけが賑やかだった星降りの谷の周囲には賑やかな街ができつつあるんだ。

「あのカフェの店主の息子がこちらに店を出すそうだ」

「え?そうなんですか?嬉しいです!またあのお店の料理が食べられるんですね!」

アル様の行きつけの王都のカフェはもう一度行きたいと思ってて、なかなか行けなくて残念に思ってたから本当に嬉しい!!


「セルジュ様とクレール様はもうお城に帰ったんですね」

「ああ、明日からまた仕事が待ってると言ってたな」

「リリアーヌを連れて来てくれたお礼が言えて良かったです」

「彼女は何と?」

「小さい声で、お姉ちゃんおめでとう、って言ってくれました」

リリアーヌはセルジュ様達と一緒に王都へ戻っていった。もうすぐ罰金を払い終えるそうで、その後でニコラと結婚するそう。

「そうか。良かったな」

「……はい」


リリアーヌと和解した訳じゃない。許せないこともある。だけどいつかまた子どもの時みたいな仲の良い姉妹に戻れるかもしれないと、ちょっとだけ期待できた。


一度全て失ってしまったけれど、今日私に新しい家族ができた。アル様が私にくれた。私はアル様の手をぎゅっと握った。


「……これからはずっと一緒ですね」

「ああ、ずっと一緒だ。……離さない」


アル様は私の手を強く握り返してくれた。


夫婦に、家族になったアル様と寄り添い合って星空と生まれたばかりの街を見た。シュシュ先輩とバジル君にも家族が増える。私達にも家族が増えるだろう。どんどん賑やかになっていくこの場所で二人で生きていく。思い描いた未来はとても明るくて……。




「アル様、私幸せです」

心からそう思った。










ここまでお読みいただいてありがとうございました!

一応今の時点で書きたいものは書けましたので、完結とさせていただきます。

お付き合いいただいてありがとうございました。

お楽しみいただけていたらとても幸せです。

読んでいただいて本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ