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星降りの谷 私、もう王都には戻りたくありません!  作者: ゆきあさ


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ブランとフルーヴ

来ていただいてありがとうございます!


後日談三つめです


長いので後書きにあらすじがあります




『なかなか呼んでくれないからつまらないねー』


ブランはシエルと一緒に霧の中に浮いていた。以前にソランジュから翼が無いのにどうして飛べるの?って聞かれたことがあるけれど、ブランには良く分からなかった。逆にどうして翼が無いと飛べないの?と問い返してソラを困らせた。


『お爺ちゃんも飛んでるよねー』


青い大老を思い出してブランはシエルに話しかけたけれど、シエルは首をかしげた。よく分かってないようだ。




やがて霧の中、待ち望んだ声が聞こえてくる。


「……ン、ブランー!聞こえる?聞こえたら出て来て欲しいんだけど」


『あー!ソラが呼んでるー!行こう!シエル』


ブランとシエルはソラの声が聞こえる方へ飛行の向きを変えた。いくつかの境目のようなものを越えてソランジュの光を目指して飛ぶ。辿り着いた二人(?)は大喜びでソランジュにまとわりついた。


いつもの通りソランジュの周りには仲間がいた。いつもと違うのは今日はソランジュの隣には緑の青年がいて、黒の青年とピンク色の女性は周囲を警戒してることだった。



『えー?ソラのごようじゃないのー?』


「うん。バジル君が色々聞きたいんだって」

ブランのがっかりした様子に申し訳ないという顔をしたソランジュ。そんな顔をして欲しくなくてブランは軽く頷いた。


『分かったー。いいよー』


しっかりソランジュの隣に座って撫でてもらいながらブランはソランジュの仲間だというバジルの話を聞いた。反対側の隣にはシエルもちゃっかり座っている。



「あの黒の魔獣の落とした精霊石の研究をしててね。ブランに聞きたいことがあるんだ」


黒の魔獣は人の負の感情を食べて成長してた。恐らく最初は恐怖や痛みの感情を食べるために人を傷つけていたんだろう。けど死んでしまえばそれは無くなってしまう。それを学習して、フランセットや王妃を捕まえて生かしておいた。より長く苦しめるために。というのがバジルの見立てだった。城でも研究者達はおおむね彼の意見に同意した。ソランジュとアルベールに二人を取り返されて、今度は餌として優秀なジュリエンヌを失わないように体内に取り込んだのだと。


「これで合ってるかな?君の見解を聞いてみたいんだけど」


『んー、たぶん。あれはねーいしつなんだってー。青いお爺ちゃんが言ってたー』


ブランはバジルの問いにあいまいに答えてから話し始める。バジルの話は難しかったのだろうとソランジュは思った。

「異質なの?」


『うん。僕たちと同じそんざいなんだけど、あり方がちがうんだって―』


「在り方が違う……」


『うん。僕たちはそういうの食べない。すうだけでだいじょうぶ』


「うーん、要領を得ないな……。ソラ、青い神獣を呼べないかな?」

バジルはソランジュに青の神獣と話をさせてもらいたいと頼んだが、ソランジュにもどうやったら会えるのか分からないようだった。ソランジュはブランに青の神獣と会いたいと言ってみた。


『僕からはよべない―』


どうやら神獣にも上下があるらしい返事が返って来た。





考え込んでいたソランジュが何かを思い付いたようにヨシッと拳を握った。

「フルーヴ!いるー?!聞こえたら出てきてー!」

ソラが霧の天に向かって大声で叫んだ。慌てたのがシュシュテインだった。

「ソラ!そんな、また名前なんてつけて!何が起こるか分からないぞ!」

力ある存在の怒りを買うかも……そんなシュシュテインの焦りをよそにそれはすぐに現れた。



『フルーヴ……それは我のことか?』


青い神獣が霧を晴らしながら現れた。どことなく嬉しそうな気配を感じる。シュシュテインの心配は杞憂に終わったようだ。


「あ、出てきてくれた!」

「ああ、またややこしいことに……」

喜ぶソランジュに額を押さえるシュシュテイン。


「……王国には黙っておけばいいんじゃない?幸い誰も見てないし」

「何でもかんでも報告を上げなくてもいいだろう」

バジルとアルベールはそんな勝手なことを言っている。


だが、まあ、とシュシュテインは思い直した。


(ソラが自由にこの神獣を呼び出せると知ったら、王国は侵略戦争でもやりかねない。それに下手をすればソラが拘束される恐れも……。だったらこの事は黙っておくほうが得策だな)


「分かった。そうしよう」

「ええ?!シュシュ先輩いいんですか?」

普段とても真面目なシュシュテインの言葉に驚くソラ。


「ただし、バジルはこの神獣から聞いたことを真実として報告はできなくなるよ?いいんだね?」

「ああ、それでいいよ。あくまで僕の推論ってことにするから。真実は僕の頭の中だけにあればいい」

自分の頭を指差して笑うバジルの言葉に、シュシュテインは仕方ないなというように少し笑った。







『話はまとまったのか?それで何用だ?』


律儀にも会話が終わるのを待っていた青い神獣ことフルーヴが声を掛けてきた。

「あ、もう知ってると思うんですけど、私ソランジュ。ソランジュ・フォートレルです。ソラって呼んでください」


(そら)か。良い名前だ』




「こちらからシュシュテイン先輩、そしてアルベール様です。こちらはバジル君です」

三人は深く頭を下げた。

「バジル君が聞きたいことがあるんです」


『……答えられるものならば答えてみよう』


フルーヴはゆっくりと頷いた。


「うーん、なるほど」

バジルの質問タイムが終了した。大体はバジルの推論を言ってそれが正しいかフルーヴが答えるという形になった。ほとんどに満足のいく答えが返って来たが、謎もまだ数多く残ったようだった。




「じゃあ、私からも聞いていいですか?」

ブランとシエルを撫でていたソランジュが手を上げた。

「貴方みたいな神獣……存在はブラン以外にもいますか?」


『ああ、あと二体ほど知っている。赤いのと黒いのと。雲海郷は広大だ。探せばまだおるやもしれぬ』


「まだ他に二体もいるのか!」

「……!」

バジルは驚き、アルベールは思わず剣の柄に手をかけた。シュシュテインは青ざめて声も出ない。





『そんなに知りたいことがあるのならば、こちらへ来ればよい』


フルーヴはソランジュを見つめて言った。その青い瞳はソランジュの中の光を見るように遠くを見ているようだった。


フルーヴの言う通り百聞は一見に如かずだ。ソランジュは考え込んだ。

「うーん、行ってみたいけど私も道案内の魔法をちゃんとできるようにならないと……。フルーヴ達の世界って遠そうだし……」


「無理かもな」

「無理じゃない?」

「……厳しいのではないだろうか……」

「シュシュ先輩まで!酷いですっ!!」

仲間達の言葉に涙目になるソランジュ。何度も言うようにソランジュは繊細な魔力コントロールが苦手だった。



『我が連れて行ってやろうか?元の時に帰れるとは限らぬが……』


「それは駄目だ!!ソラは俺のだ!」

フルーヴの言葉に反応したアルベールはソランジュを後ろから抱きしめた。その言葉の意味を即座に理解したようだ。よく分かってないらしいソランジュはポカンとしている。どうやら雲海郷はこことは違う時間の流れがあるようだ。そして今、招待されたのはソランジュだけ。


『ふむ。お前が空の(つがい)か』


「つ、番……。そ、そうですね。結婚式はまだこれからですけど……」

フルーヴの言葉に真っ赤になって頬を押えるソランジュ。そしてそれを見て嬉しそうなアルベール。



『……………………』


二人の様子を見てしばらく無言だったフルーヴは諦めたように口を開いた。


『まあよい。いずれ二人で我の元を訪れるが良い。その時は歓迎してやろう』


そう言いながら、フルーヴは霧の中へ消えていった。




「ふう、本当に来てくれるとは思わなかった。結構いっぱい教えてくれましたね」

「ソラ……君ねえ……今回は更にヒヤヒヤしたよ」

ソランジュの呑気な言葉にシュシュテインは疲れたような表情を見せた。


「全くだ。危うく連れ去られそうになった……」

アルベールはホッとしたようにソランジュを抱きしめる力を強めた。

「あの神獣と戦うことになるかと思ったよ」

「アル様、ちょっとそれ笑えないんですけど……」

バジルの顔が引きつっている。


「まさか!そんなことにはならないですよ」

一人まだよく分かってないらしいソランジュを見てブランとシエルも顔を見合わせた。



(『お爺ちゃんほんとうにソラをつれて行きたかったと思うけどなー。だって僕たちだっておなじだもん。今日はいいけどー』)



『じゃあ、僕たちも帰るねー』


ブランとシエルはたくさん撫でてもらったことに満足して霧の中へ消えて行ったのだった。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!




あらすじ

ブランとバジルの会話

青い神獣の名前→フルーヴに決まる

ソラ、フルーヴに連れて行かれそうになる

ブランとシエルもソラを連れて行きたい(今日は諦める)

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