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星降りの谷 私、もう王都には戻りたくありません!  作者: ゆきあさ


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48 君達をのせて

来ていただいてありがとうございます!

残酷な描写があります。ご注意ください

苦手な方は後書きのあらすじへ




漆黒の翼の黒馬が空を駆ける。アル様と私をのせて。


「拘束の魔法は俺がかける。ソラは防御を頼む」

「分かりました」



地上ではセルジュ様達が手を振ってるのが見える。

「準備ができたようだな。行くぞ。ソラ」

「はい」

アル様が黒馬に魔獣の右側を飛ぶように指示を出した。


どんどん濃くなる幻霧の中、黒馬の翼が風を切る。


「まずはフランセットからだ」

「はい」



この魔獣の攻撃は口から吐く黒い炎。それから爪。でも今は前足には二人が捕まっていて爪は使えない。でも未知の魔獣だし、他にも攻撃方法があるかもしれない。防御は最初から全力でいく!精霊石のブレスレッドが光を放つ。


「何をしてるの?!早く助けなさい!」

魔獣の左前足に掴まれてる王妃様がこちらに向かって叫んでる。髪は乱れてドレスはボロボロだ。だけど……うーん、とっても元気そう。

「あっちはまだ大丈夫そうだな」

アル様が渇いた声で呟いた。


魔獣が私達の方へ顔を向けた!

「来る!!」

開いた口から、黒い炎が噴射された。私の魔力の盾がそれを防ぎ、同時にアル様の拘束の魔法が発動した。魔獣の雄叫びが響き、魔獣の右前足が痙攣してフランセット様を投げるように離した。


落下していくフランセット様を下で待機していた魔法使い達が風魔法で受け止めた。「おおっ!!」って歓声が上がって、シュシュ先輩とバジル君が手を振っている。

「良かった!大丈夫みたい」

「こっちは大丈夫じゃないな。両方(ふたりとも)怒ってるようだ」

「え?ふたり?」


魔獣の赤い目が私達を追ってくる。ほんとだ。かなり怒ってるみたい。長い尻尾をビタンビタンって塔の壁に打ち付けてる。黒い炎がまた噴射されたけど黒馬がよけてくれた。


「なんで、わたくしを先に助けないの?!そんな小娘なんか助ける必要ないでしょう?!早くなさい!!早くしてっ!!」


「うわあ、王妃様もかなり怒ってる」

いつ魔獣に握りつぶされてしまうか分からなくて怖いよね。見捨てはしないけど、同情もしない。アル様だってずっと怖かったんだから!少しはアル様の気持ち分かったかな?


あれ……?

「なんだか、魔獣が少し変化したような……?えっと?」

「角が一対増えて、大きくなった。体も」

「本当だ。どうして?魔獣って成長するんでしたっけ?」

「さあ、聞いたことが無い。が、相手は未知の魔獣だ。気を抜くな、ソラ」

私の腰に回したアル様の腕の力が強くなった。より危険度が増したってことだよね。

「はいっ」

私は更に気を引き締めた。


王妃様を助けに行きたいんだけど、今度は黒い炎と尻尾が襲ってくる。私が炎を防ぎ、アル様が尻尾の攻撃を剣でいなすんだけど、羽根をばたつかせて黒馬の体勢を乱そうとしてきて危ない。右前足はまだ痺れてるみたいでダラリと下がったままだ。でもいつ復活するか分からない。

「今のうちだ。突っ込むぞ」

「はいっ」

アル様も同じことを考えてるみたい。急がないと……!






★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★





魔獣の周りをアルベールとソランジュをのせた黒馬が飛んでいる。黒い魔獣の攻撃をかいくぐり王妃を助けようと奮戦していた。兵士や騎士達から歓声が飛ぶ。


「何よ……あんなの……わたくしだって」


アルベールとソランジュの息の合った戦いを目の当たりにして、ジュリエンヌの心に更に激しい嫉妬の感情が生まれた。



ジュリエンヌは助け出されたフランセットに近づいて行った。実はジュリエンヌは王妃に話をしようとして魔獣に遭遇し、恐ろしくなって今までずっと物陰に隠れていたのだった。彼女に王妃を助けようという気概は全く無かった。


ジュリエンヌは自分を置き去りにしたフランセットを見下ろした。地面に座り込んだフランセットの顔に大きな傷がついている。治癒魔法を受け続けているが傷が消えないようだ。


「あの二人はどうなさったの?」

「あ、ジュリエンヌ様……、この方はまだお話ができないみたいで」

治療を続けている治癒魔法使いの女性の言葉はジュリエンヌの耳には入らない。

「シモーヌ様とシルヴィ様はどうなったのです?」

二人の名前にフランセットがビクリと反応する。虚ろだった瞳に涙が浮かぶ……。


「あ、あ、魔獣が……、シモーヌ様のお顔が……、赤い腕が落ちてきて……、食べ……いやっ、いやああああっ!…………」

その後は泣き叫んで言葉にならない。よほど恐ろしい目にあったのだろう。


(わたくしを置き去りにして逃げるからそんな目に合うのですわ。いい気味……)


ジュリエンヌはスッと無表情になり、その場を後にした。


「待って下さい……フランセット様、あの魔獣は血の味を覚えてしまったのですか?」

そんな声が聞こえてきたが、ジュリエンヌの耳を素通りしていった。


(わたくしの望みは何でもかなってきたわ。今までも。そしてこれからもよ。そのためには……)


ジュリエンヌは冷たい瞳でソランジュを見つめ、城の方へ戻って行った。




同時に魔獣の赤い目がジュリエンヌを捉えた。





✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧



「やった!」

魔獣の攻撃をかいくぐって、アル様の拘束の魔法が魔獣の左前足に当たった。魔獣の左前足が痙攣してる。これで王妃様を離してくれれば!そう思った私達の目の前で魔獣が笑ったように見えた。


次の瞬間、魔獣は王妃様を投げつけたのだ。待って!そっちには崩れた城の壁がある。

「このままじゃぶつかるっ」

「待て!ソラ!」

アル様の制止も聞かずに、咄嗟に風魔法で王妃様の方へ飛んで壁に激突する前に受け止めた。受け止められたんだけど、私は背中を打ちつけてしまって一瞬気が遠くなった。それでも何とか風魔法を調節して無事に着地することができた。


「良かった。王妃様、生きてる」

ぐったりしてるけど投げられた時に気を失ってしまっただけみたいだ。打ちつけた背中が痛い……。見上げると塔の方で、アル様と黒馬が魔獣と戦ってるのが見える。こちらに攻撃が来ないようにしてくれてるんだ。

「私も早く行かなくちゃ……いたた、咄嗟だったから魔法の制御失敗しちゃったよ……」

痛みで座り込んでる私の上に影が差す。


「ジュリエンヌ様?ああ、良かった!王妃様をお願いできますか?私、今ちょっと立てなくて……」

私達の前に現れたのはジュリエンヌ様だった。もうすぐ兵士さん達が来てくれるだろうけど、ジュリエンヌ様がいてくれれば安心だわ。


「ジュリエンヌ様?」

「貴女、邪魔ですわ」

「え?」


ジュリエンヌ様の手が私の方へ向けられる。防御魔法を……そう思ったけど間に合わなかった。












ここまでお読みいただいてありがとうございます!


あらすじ

空中戦でアルベールとソランジュがフランセットを取り返す

黒い魔獣成長?

ジュリエンヌ性格の悪さ露呈

ジュリエンヌ、ソラを攻撃


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