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星降りの谷 私、もう王都には戻りたくありません!  作者: ゆきあさ


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43 白い魔獣 2

来ていただいてありがとうございます!


✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧




「ソラ!アル様!」


ソランジュとアルベールがまた霧の中に消えてしまった。シュシュテインは霧を睨み据え、走り出す。


「シュシュ!待って!」

バジルはシュシュテインの手首を掴んだ。

「私達も追いかけるぞ!!」

「危険だ!!」

「もう、待つだけは嫌なんだ!!」

バジルに向かって首を振る。バジルは仕方ないなと笑って頷いた。

「……分かった。でも危険だと判断したらすぐに引き返すよ?」

シュシュテインは目に涙をためて頷いた。


「君達!!」

騎士達と一緒に戻って来たテオフィルがシュシュテイン達に声を掛けた。テオフィルは魔獣に吹っ飛ばされた後、剣を手放し魔法を使って着地したため無事だった。

「ソラがあの白い魔獣に連れ去られました。テオフィル殿下は怪我人の収容を!私達の仲間は私達が必ず連れて帰ります」

決然としたシュシュテインの表情にテオフィルは止めることを諦めた。

「……分かった」


シュシュテインとバジルは頷き合うと手を繋いで霧の中を進んでいった。



バジルが作った揃いのブローチは一つの精霊石を四つに割って作った特別なものだった。バジルは魔法石の鑑定が得意だったが、魔法石を自分で研究することも好きだった。その研究の中で一つの魔法石は割れると同じ波長を出し、引き合うという特性を見つけた。その特性は希少性が高いものになると強まる傾向があった。精霊石でできたブローチは身につけていれば強く引き合い、ローブよりもさらに確実に互いの位置を知らせてくれる魔法道具だった。


「こちらだ……」

濃い霧の中を手を繋いで進むバジルとシュシュテイン。やがて、大きな岩が点在する場所に出た。

「何だ?ここは少し霧が薄いな……先程から魔獣もいない」

「シュシュ、警戒を怠らないで……」

「分かっている」

シュシュテインは道案内の魔法と防御魔法を発動しながら、バジルの手を強く握りしめた。


ふいに彼らの耳に求める声が聞こえてくる。


「ソラとアル様がいる!」

シュシュテインの顔がぱっと明るくなる。

「……あの魔獣もいるみたいだ。戦闘に……なってない……?」

「ん?何か騒いでる……のか?」

「…………」

バジルは嫌そうに顔をしかめた。





『だーかーらー、ちょっとかしてよ』


白い魔獣のものと思われる声が頭の中に響く。



「駄目だ。ソラは俺のだ」

アルベールはその白い魔獣に対して一歩も引かない。


『ソラ?それ、ソラっていうの?』


何故かソランジュの一角獣もこの場にいて、いやいやと頭を振っている。


アルベールはソランジュを背中に庇い、ソランジュの白い一角獣、シエルもソランジュの横に張り付いて動かない。



少し離れたアルベールの斜め後ろでは、アルベールの黒馬が呆れたようにため息をついて翼をパタパタと振っていた。もう帰ってもいいか?とでも言うように。



「あんた達何やってんの?」


バジルの冷たく乾いた声が響く。シュシュテインは状況を飲み込めないようで、戸惑った表情をしている。



「あ、バジル君!シュシュ先輩!良かった!これ、どうしたらいいですか?」


二人に気付いたソランジュの嬉しそうな声と表情にバジルとシュシュテインは顔を見合わせる。


「…………知らないよ」

バジルははあ、と深いため息をついた。



白い魔獣とアルベールとシエルはソランジュを取り合って口喧嘩(?)をしていた……。






✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧





白い魔獣に連れて来られて、もうダメだって思ったけどなんか違ってた。


『ねぇねぇ、あのきれいなのみせて』

 

急に大きな岩がそこここにある地面に下ろされたと思ったら、訳の分からないことを言われた。金色の目をキラキラさせて私をじっと見つめてる。

「え?」

戸惑っていると、魔獣は後ろ足で立ち上がって前足を空に虹をかけるように振った。立ち上がるとさらにおっきいな……。でも口調のせいかあまり怖くない。


『ほらー、あのひかりだよー』


もしかしてあの時、雷の攻撃を防いだ時の防御魔法の事?


「魔法のこと?」

そういえばあの青い魔獣も私の魔力を見てきれいって言ってた気がする。私は左手のブレスレッドに集中して左の手のひらに魔力を集めた。


『それそれー!』


白い魔獣は顔を近づけてじぃっと見つめてる。顔が大きくて開いた口からのぞく牙が大きくて、今度はちょっと怖い……。そこへシエルが急に走って来た。

「シエルっ?!」

シエルは手の上の魔力をパクっと食べて満足そうにしてる。シエルってほんと神出鬼没だよね。


『あー!ずるい!』


白い魔獣ががぁっと口を開ける。


「ソラっ!!」


そこへアル様が黒馬に乗って舞い降りて来た。ああ!剣を振るおうとしてる!何この既視感。


「アル様!!待って下さいっ!」

私は魔獣の前で手を広げた。

「ソラ?!どうして?」

「えっと、大丈夫みたいです。食べられたりはしなさそうっていうか……」


『えー!食べないよー!それより、ひとりじめずるいー!それちょうだい』


アル様は私の前に立つとビシッと人差し指を魔獣に向けた。


「駄目だ!ソラは俺のだ!」


シエルも私の腕の下に首を入れてきた。あ、ちょっと角が当たってちくっとした。えっと、この状況って何?どうしたらいいの?




「あんた達何やってんの?」

シュシュ先輩とバジル君が私達を追いかけて来てくれた。良かった!安心したけど、バジル君の声が冷たい。心配をかけてしまったのは悪かったけど、この状況は不可抗力だと思うんだよね。
















ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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