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星降りの谷 私、もう王都には戻りたくありません!  作者: ゆきあさ


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19/63

19 交流会

来ていただいてありがとうございます!



「交流会をやろう!」


西の森から無事帰還した後、テオフィル王弟殿下は何故か上機嫌で言った。会場は殿下の別邸を使うんだって。



交流会っていうけど、要するにパーティーをやるらしい。なんで貴族ってパーティーが好きなんだろう。それに正装(ドレス)じゃなくても良くない?私はドレスなんて持ってないから不参加でいいや。先に青星塔に帰らせてもらおう。そう思ってたらシュシュ先輩に先に言われてしまった。


「ソラも参加するんだよ。ドレスは私が貸すからね」

「え?でも……」

「テオフィル殿下は私達と西の森のみんなの交流を望んでるらしいから、絶対ソラも参加してね」

「……はい」

そうかなあ?私は要らないと思うんだけどなぁ。パーティーにはあまり良い思い出がない。まあ、みんなと一緒なら大丈夫かな……。いつも通りご飯食べてればいいか。はあ。



二日後の夕方、西の森に近いテオフィル王弟殿下の別邸へシュシュ先輩の家から一緒に向かった。夕焼けを背に佇む大きなお屋敷。

「……これ、もうお城じゃない……」

ため息が出た。そりゃそうか、王族のお屋敷だもんね。ダンスホールもあるような物凄く立派なお城だった。


私はシュシュ先輩のお屋敷に前日から泊めてもらってドレスを着せてもらった。シュシュ先輩は淡い薄紫色のドレス、私のは対になるような薄水色のドレスだった。なんだか姉妹みたいでちょっと嬉しかった。髪飾りはアル様からもらったあの髪飾りを使ってもらった。パーティーは苦手だけど、ドレスを着るのはちょっと楽しい。支度を全部してもらえて貴族のご令嬢になった気分。


会場ではもうすでにアル様達はみんなに囲まれてた。バジル君もセルジュ様もクレール様も。

「調査隊は殿方の方が多いのに女子のパワーは凄いね」

シュシュ先輩はご挨拶する貴族の人がいるみたいで、離れていってしまった。私は会場に用意された料理を食べに行こうかな。



夜風が気持ちいいバルコニーに料理のお皿を持ってきて、テーブルの上に並べてみた。借り物のドレスを汚さないようにゆっくり丁寧に食べた。

「あ、美味しい……。さすが王族のお家のお料理……。でも、アル様に連れて行ってもらったカフェのお料理の方が好きかも」

また王都に来ることがあったらあそこでご飯を食べようかな。

「それは良かった」

「!」


テーブルの上に影が差して振り向いた。アル様がバルコニーに来ていた。驚いた!手には小さくて綺麗なケーキを盛り合わせたお皿を持ってる。

「アル様、交流はいいんですか?」

「ソラだってしてないだろう?」

「私は別に必要とされてないですし……」

魔法学園にいた時もなるべく目立たないようにやり過ごしてたんだよね。「平民のくせに」って嫌味言われるから。あ、バジル君は主に男性調査隊員に話しかけられてる。何を話しているんだろう。魔法とか魔法石についての話かな?


「そのドレス、良く似合ってる」

向かい側に座ったアル様はテーブルに頬杖をついた。

「そ、そうですか?ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」

「ソラは綺麗だと思う。気づいてないのか?みんなソラに話しかけたがってる」

アル様に褒めてもらえて嬉しいけど、それは流石に……。シュシュ先輩を筆頭に綺麗な女の子達がたくさんいるのに。

「そ、そんなことは無いかと」

思うんだけど……。周りを見回すと何人かの人と目があった気がする。



ふいに目の前にケーキのお皿が出された。

「ほら、これも要るだろう」

「あ、ありがとうございます……」

デザートは後でまた取りに行こうと思ってたんだ。美味しそう!


「美味しいか?」

「はい、とっても。そうだ!あのカフェのケーキも食べてみたいので、今度王都へ来ることがあったら食べに行こうと思います」

今まではちょっと節約してキツキツにしすぎてしまったものね。きっと王都には美味しいものとかいっぱいあるんだろうね。

「その時は俺も行く」

「アル様、ケーキお好きなんですか?」

「……ああ。普通に食べるよ」

あれ?じゃあこのケーキって……。私がもらっちゃって良かったのかな?

「あの、アル様の分貰ってきます!」

「いや、いい。…………これを貰うよ」

アル様は私の手ごとフォークを握ってケーキを口に入れた。

「……あ、ある、様、……」

「ああ、ここの料理人も良い腕をしてるな」

そんな笑顔で……。アル様……なんてことを……。このフォーク、もう使えないよ……。手も顔も熱い。それにしてもさっき一瞬会場がざわめいていたような気がするけど何かあったのかな?


「やあ、君達ちょっとお邪魔するよ?ソランジュ・フォートレル君だったね!君、凄いじゃないか!」

バルコニーがぱあっと明るくなった。豊かな金色の髪のテオフィル王弟殿下がやって来たのだ。さっきざわめいたのはこの方がいらしたからか。アル様と私は立ち上がってテオフィル王弟殿下にご挨拶した。

「ソランジュ君と呼んでもいいかい?」

「あ、はい。光栄です」

「君は星獣を従えてるんだね。魔法の攻撃力も素晴らしかった!西の森の調査隊に来てくれたら助かったんだがね!」

え?魔法学園の卒業直前に勤務地が落星の谷に変更されたんですけど?

「一応、希望は出していたんですが」

「そうなのかい?」


ここでアル様が驚くことを言い出した。

「叔父上、俺がソランジュ嬢を引き抜いたんです」

「え?アル様?」

「魔法学園へ人材探しをしに行って、ソランジュを見つけて、人事に掛け合ったんだ。君に落星の谷に来て欲しかった」

アル様が私の顔をじっと見つめてる。……本当に?嫌がらせとかじゃなくて?アル様に必要とされて配属されたんだ……。それはとても嬉しい……!



「……迷惑だっただろうか?」

「……いえ、そんなことは」


何だ、そうだったんだ。でもいつ見られてたんだろう?結果的に良かった。ううん、本当は出会わない方が楽だったかもしれない。どっちかな?ちょっと辛い。アル様はきっと誰かを、もしかしたらあの令嬢達の中から誰かを選ぶ日が来るんだもの。でも出会えて一緒に過ごせてるのは嬉しい。複雑な気持ち……。


「ソラ?どうしてそんな顔をしてる?」

「私はいつもこんな顔ですよ、アル様」

泣き出したいような気持になってる私はきっと変な顔してるんだろうな。アル様の顔が見られない。


「……アル様、か。なんだ……。そういうことか。アルベールは見つけたんだね。ソランジュ君にこちらへ来てもらおうと思ったんだが、そういう事なら諦めるとしよう」

以前の私なら、テオフィル王弟殿下に王都へ戻らせて欲しいって頼んだかもしれない。でも、今は。誰の為でもなく私はアル様のいる落星の谷、青星塔にいたい。



「はい。私は落星の谷で頑張ります……!」







ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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