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星降りの谷 私、もう王都には戻りたくありません!  作者: ゆきあさ


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12 報告

来ていただいてありがとうございます!




「なかなか面白いことになってるね」


楽しそうに笑うシュシュ先輩。やっと帰って来てくれた。良かったけど、開口一番それですか……。まあ、否定しないけど。私も他人事なら面白がってた自信がある。


「セルジュ、少し離れたらどうだ。ソラが嫌がっている」

「それをいうなら兄上でしょう?まだ彼女に返事を貰ってないのだから、兄上にそんなこと仰る権利はないでしょう」

お昼の食堂で私の両隣に座るアル様とセルジュ様。無表情なアル様とは対照的にセルジュ様は不機嫌顔だ。


あれからずっとセルジュ様に付きまとわれている。言い方が悪いかもしれないけど、実際その通りなんだ。幻霧が発生してない時の青星塔での過ごし方は各々違う。バジル君は魔法石の研究が主な仕事だ。私やアル様は魔法の訓練や剣の稽古、魔獣の対処を素早くできるようにするために本を読んで復習したり、万が一に備えて魔法道具の整備をしたり。


セルジュ様はお風呂と寝る時以外、つまり私が自室にいる時以外はずっとくっついて来るのだ。正直鬱陶しい。でも、嬉しいこともあるっていうか……。私を庇う為にアル様もずっと一緒にいてくれてる。申し訳ないけど、本当に嬉しい。


「シュシュ先輩……。笑い事じゃありません……。バジル君も」

バジル君は真面目そうな顔をしてるけど、笑いをこらえてるの分かる。思いっきり笑ってるシュシュ先輩はやっと笑いをおさめると私を促した。

「ソラ、今から私が留守の間の報告を頼む。ランチを持って会議室へくるように」

「はい。分かりました」

私がトレーを持って立ちあがるとセルジュ様から不満そうな声が上がる。

「報告なら僕も……!」

「殿下、申し訳ありませんが、留守の間の責任者にはソラを任命してあります。報告書も彼女が書いていますので色々と聞いておかなくてはならないのです。お分かりいだだけますね?」

シュシュ先輩の言葉には有無を言わせない力があった。


アル様はお城へ帰ることもあるし、バジル君はそういうの凄く嫌がるしで私が一応責任者という事になってる。イレギュラーはあったけどあれから幻霧は発生してないから、特に問題は怒らなかった。私事以外には……。


「セルジュ、食事中だ。行儀が悪いぞ」

アル様に叱られて立ち上がっていたセルジュ様は渋々座り直した。


助かった……。





ホッとしたのも束の間、今度はシュシュ先輩の質問攻めが始まった。


一通りシュシュ先輩がいない間に起こった幻霧の時の調査についての報告をした。怪我人が出たことも。

「セルジュ第三王子殿下の事は王都で聞いていたけれど、困ったものだね。ソラもみんなも無事で何よりだ。頑張ったね」

怒られるかなって思ったけど、逆に労われてしまった。

「すみません。私が油断してしまったので」

「いやいや。ソラやバジルはまだ新人なんだ。無事に帰ってくることが一番大事だよ。この落星(おちほし)の谷はそこまで期待されてないんだからそんなに気にしなくていい」




「で?私がいない間何があった?ズルイな。こんな楽しそうなことが始まってたなんて。最初からかぶりつきで見たかった!」

わあ、シュシュ先輩楽しそう……。こっちが本題かな?

「シュシュ先輩酷いです。困ってるのに……」

私はシュシュ先輩に事の経緯を説明した。

「アル様は私を助けてくれだけなんですけど、それがセルジュ様の負けず嫌いを刺激してしまったみたいで……」

兄弟王子のバトル、といっても一方的にセルジュ様がアル様を敵視してるだけなんだけど。私を餌に喧嘩するのは止めて欲しい。

「…………ふうん、ソラの認識はそうなんだね」

私が書いた報告書に目を通しながら、片ひじをつくシュシュ先輩はライラックの瞳を細めた。

「?」


「で?どっちにするんだい?」

「もう!どっちにもしません!シュシュ先輩だってただの平民が王子様の妃になれるなんて思ってないでしょう?」

「そうかな?」

「え?」

「普通なら無しだけど、ソラなら有りなんじゃないの?」

「は?」

なんで私?

「魔力は王族に匹敵するし、星獣もいるし。可愛いし」

「何ですかそれ……」

特に最後の……。美人のシュシュ先輩に言われたら、普通はいやみにしか聞こえないよ……。シュシュ先輩はそんな人じゃないんだけどね。私はがっくりと肩を落とした。


アル様とずっと一緒に……。夢見ることはあるけど、現実的じゃない。私が王宮に入ったとして上手くやっていける自信なんてないし、周りの貴族が黙ってないだろう。そもそもアル様は私を助けるために嘘をついてくれただけだし……。セルジュ様となんて考えたくもない。そのうち飽きてくれるのを待つしかないと思ってる。


「無いです。あり得ません」

「んー。そうかなぁ。まあ、気が変わったら教えてよ。協力できるかもしれないよ」

シュシュ先輩は優しく微笑んで私を見てる。シュシュ先輩は時々何を考えてるのか良く分からない時がある。戸惑うことはあるけれど、それでも私はシュシュ先輩の事が大好きだ。



「それはそうと、王都で困ったことになってるそうなんだよ」

報告書を読み終わると、両肘を机について顎を手の上にのせた。

「困ったことですか?」


「ここからはみんな一緒に話を聞いてもらおうと思うから、悪いけどみんなをここへ呼んできてくれるかい、ソラ」

「はい。分かりました」

シュシュ先輩が深刻そうな顔をしてる……。どうしたんだろう。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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