表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

政治経済エッセイ

GDPが4位になった今こそ「GDP信仰」を脱却せよ! 労働環境改善と税負担の改善をすることで国民の幸福度を上げよう!

作者: 中将

筆者:

 今日は日本のGDPが名目で4位になったということで、

GDPについて僕なりの個人的解説をしていこうと思います。



質問者:

 年初から言われていましたが“ついに4位”という感じの印象を受けましたね。



◇“調子の悪い”ドイツに抜かれた要因



筆者:

 この報道を見て「さぞかしドイツは好調なのだろうな」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のところドイツは全然好調ではありません。


 24年1月にドイツ連邦統計当局がまとめた暫定値によれば、10-12月の国内総生産(GDP)は前期比0.3%減少。年でも0.3%減少。

 それに対して日本の同時期比較は0.1%減少、年は1.5プラス成長。

 このようにドイツは日本と比べて実を言うと悪いのです。



質問者:

 え……それではなんで逆転されているんですか……。



筆者:

 GDPを評価するときに必ずドルに換算して評価し直すという特性があるからですね。


 ユーロは対ドルに対してこの1年で3%ユーロ高ドル安になっています。

 円は対ドルに対して22年12月末時点131円だったのが23年12月末時点で141円(今は150円)と10円の円安ドル高となっています。


 つまり為替換算の影響で10%以上影響が出ているということなのです。


 さらに日本も物価高3%ほどで問題になっていますがドイツは年で6%も上昇しており、

 ここも物価の変動を加味しない名目GDPにおいて日本はマイナスに働いているのです。



質問者:

 だから経済成長率の2%程度の差なんて簡単に吹き飛んでしまったわけなんですね……。

 日本が苦しんでいるのは個人消費が落ちているということのようですが、

 ドイツはどうしてマイナス成長なのでしょうか?



筆者:

 ドイツは主要な輸出先であった中国の影響が大きいようです。


 ドイツも日本のように自動車産業が活発な国ですが、

 中国車の安さもあって売れ行きが芳しくないようなのです。

 中国そのものが今、一部の富裕層以外であまりいい兆しがないというのもありますけどね。


 また、ドイツ内需に関しても、人件費の急増やコスト増で年6%弱のインフレが起きており、日本のように節約・縮小傾向が強いようです


 欧州中央銀行(ECB)による高金利政策も長期化しており、個人消費や住宅投資が圧迫され続けていることから今年の楽観的な見方をされているアナリストは少ないようです。



質問者:

 つまり、GDPの順位について一喜一憂する必要はないということでいいのでしょうか?



筆者:

 ただ日本の状況がよくないことも間違いなく、インドやイギリスにも抜かれて6位になる日も近いと思いますけどね。



◇無意味に近い「GDP信仰」は捨てなくてはいけない



筆者:

 しかしながら、そもそもの話として僕はGDPが国の豊かさを表しているとは思っていません。


 例えば1位のアメリカや2位の中国においては格差社会が深刻ですし、

一部の者が富の独占をする傾向が年々強まっています。


 日本のGDPの順位が4位になったこと“そのもの”にはあまり意味がないと感じています。


 日本の内包している経済問題はGDPが成長しないことではないと思っていますからね。



質問者:

 具体的にどういうことが問題なんでしょうか?



筆者:

 やはり物価を加味した際の実質賃金の低下でしょう。

 日本は現在時点で21か月連続低下しているだけでなく、

 その前から長期的に見ても1995年を100とした場合に2020年がほとんど同じとなっています。


 ドイツの場合は1995年を100とした場合に2020年は120を超えていますから、GDPなんかを問題にしないでこちらを問題にして欲しいところです。


(ただし2023年に限って言うのならドイツは実質賃金4.7%減少と日本を下回る)


 物価がドイツの方が上がっているにもかかわらず実質賃金でこれだけの差が出るのは、

 やはり国の制度や大企業の搾取が顕著だということでしょう。


 国民の租税負担率は日本とドイツはほぼ同等であり、実質賃金の分だけ日本は貧困だと言えるのです。


※通常デフレ経済の場合は実質賃金は上がりやすい傾向にあります。

そのうえで税金は増え続けており、同期間で可処分所得はさらに減少しています。



質問者:

 ドイツと一番見比べるべき数値は実質賃金だったんですね……。



筆者:

 物価や為替程度で影響してしまう程度のGDPを見比べても何の意味もありません。


 それに、成長率でドイツに勝っているからと言って日本の問題が消え去ったわけではないですしね。


 租税負担割合が同程度にも拘らず実質賃金でここまで差が出てしまうのは、

 どう見ても日本政府が税金を取るべき相手を間違っているということです。


 特に日本では社会保険料や消費税に関しては低所得者の負担は大きく、

 可処分所得の減少の一因となっています。

 


質問者:

 GDPを見ることでプラス面がないことはよくわかったのですが、

 逆にGDPにおけるマイナス面ってあるんですか?



筆者:

 “見た目上のGDPのための政策”というのが数多くあります。


 例えば数字上のGDPを増やすために減税をしない状況

(数字の積み上げのため増税してばらまいた方がGDPはプラスになる)が起きています。

 事務経費が掛かる分同じ金額をかけた場合国民への還元は“税金を取らない”ことがベストなのにもかかわらず“GDPごとき“のために最善手を打てないのです。


 また、経済効果の時「GDPが何兆円増える~」とかよくありますけど、

 実際は奴隷労働のようにして従業員が働いていることがあります。

 大阪万博など最たるものだと思います。途中まで受注する建設業者すらいなかったんですからね。


 更に、輸入額が減少するだけで国内からお金が出て行っていないという判断からGDPプラス要因に働くという計算法もあるので、“購買能力が落ちて買えなくなった”といったことでもGDPはプラスに働くのです。


 このように短期的な数値上のプラス面は実際の実務の人たちから見たら“最悪の状況”を生んでいることも平気で起こりうるわけです。

 こういったことを合成の誤謬ごびゅうとよく言ったりしますけどね。



質問者:

 「GDPでプラスになる」と聞くと単純にいいことのように聞こえますけど、そんなことが起きている可能性があるだなんて本当に意味があまりない指標ですね……。


 それにしてもドイツは日本と比べて人口が3分の2という話を聞いたことがあります。

 

 それにも関わらずGDPが同程度なのはやはり問題ですよね?



◇ドイツから学ぶべき「労働の仕方」



筆者:

 ドイツの文化が日本と違うことがまず1点あります。ここ30年給料も物価も上がる状況が“当たり前化”しており「デフレマインド」の日本とは真逆です。


 そういったマインドや租税の問題以外でドイツとの決定的な差は、1人あたりの労働時間です。


 ドイツの労働者1人あたりの労働時間は2021年だと1341時間。

 それに対して日本は1607時間でした。2017年と比べて100時間減少するものの“サービス残業”が日本にはありますから実質的にはもっと差があるのではないかと思っています。



質問者:

 ドイツの方はどうしてこんなにも上手いこと働いているのでしょうか?



筆者:

 一つは日本が政府と企業が従業員から搾取しすぎているのが要因の一つありますが、


 もう一つはドイツの“休み方”があります。


 ドイツには労働時間貯蓄制度というものがありまして、


 残業や休日出勤など所定外の労働時間を従業員が社内口座に積み立て、

 後で有給休暇などに振り替えられる仕組みのことです。

 残業代でもらう代わりに有給休暇に振り替え、繁忙期を避けて休むことが可能です。

 ドイツでは従業員250人以上の事業所の約8割に普及し、デンマークなどにも広がっている評判のいい制度です。



質問者:

 残業時間分で休みが増えるのは嬉しいですね。

 休み前日の金曜などにやる気が出るのも休みが目の前にあるからですし、

 効率は確かに上がりそうです。


 もしかしたら給料が増えるより休みが増えた方が嬉しいかもしれませんね。


 人出が少ないときに遊べるならリフレッシュできそうですしね。



筆者: 

 それに対して日本は、そもそも当然の権利としてあるはずの普通の有給の消化、産休すら言い出しにくい日本は問題外の状況だといえます。


 厚生労働省がまとめた2023年の就労条件総合調査によると、

 労働者の年次有給休暇の取得率は62.1%と初めて6割を超えたようですが、

 正直言ってこの程度では低すぎて泣けてきますね。


 ドイツでは有給取得率93%である上に労働時間貯蓄制度までありますからね。


 オランダのリクルート会社randstad社がドイツ、日本を含む34の国と地域でおこなった横断的な調査結果によると、アメリカ78%やドイツ72%など西欧諸国が軒並み高い仕事満足度を示しているのに対し、

 日本が調査国中最下位となる42%の結果となり、仕事の上でも不満があることは明らかと言えます。



質問者:

 GDPでも抜かれる上に働く環境も雲泥の差ということですか……。



◇実質賃金と幸福度を上げることに注力すべし



筆者:

 日本にとって問題なのはGDPが問題ではなく可処分所得の減少と幸福度が低い事です。


 幸福度も先進国で最下位のレベルですからね。働き方との関係性もあると思いますけどね。


 GDPが世界最低でも国民が幸せに暮らしていれば(強制や洗脳でなければ)問題ないはずです。

 「お金があるが不幸だった」日本から「お金も無くなり不幸でもある」状況になりつつあるともいえるわけです


 日本の自殺者数が「不幸」の最たるものを示していると思います。

 特に10代や20代の若者の死因1位が自殺という国家は先進国で日本だけです。

 どれだけ闇が深い国なのかと思ってしまいますね。



質問者:

 それはどう見ても異常だと思いますね……。



筆者:

 やはり減税をして可処分所得を増やす政策ももちろんのことなのですが、

 仕事満足度を上げるためには有給や産休を普通に使えるようになり、

 労働時間貯蓄制度などを導入することが日本の幸福度を上げる第一歩かなとおもいますね。



質問者:

 なかなか道のりは遠そうですよね。まずは有給や産休が取りやすい環境整備でしょうか……。



筆者:

 これは周りの理解が大事なので、

僕たち大人が環境づくりをしていくことが今後重要になってくると思いますね。

 ということでここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回はGDPで比べあうことが政策の幅を狭めるためにマイナス面しかないこと。

 可処分所得が減少しているのは搾取されていることもあるが、労働環境が非常に悪いことが原因ではないか? ということから労働時間貯蓄制度などを導入することが望まれるのではないか? ということをお伝えさせていただきました。


 今後もこのような時事情報から政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] エネルギーをロシアに依存した末路で、製造業はボロボロで、将来性が見えない現象なのに、日本のマスゴミの編集する自由で、そのあたりの真実が見えない。
[良い点] こんにちは。コメント失礼します。 最近の経済誌を読んでいると、可処分所得について色々と記事があるのはご存知だと思います。 例えば○○万円あれば、何処どこに投資〜。みたいなものですが…。ただ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ