お求め“安く”なりました
昨日に引き続き、『きれいな箸使い』に関する物語です。
今日のお昼の事だ。
ランチに行った先で、
たまたま“ぶつかって”しまった泰子が…
許可も出していないのに私の“空間”に割り込んで来て…
「“アラサー”って…
30歳の前後3歳〈27歳以上33歳以下〉が最も一般的な定義なんだって!」
と、のたまった。
図々しく割り込んだ挙句に…したり顔でこんな事を言ってくるカノジョの…
『隠してるけど近々婚約するんだよね でもあなたに悪いから表立っては言わないけど 私が先にオトコ狩って、あなたに勝ったって事は認識しておいてね』
って言いたいのが、その薄手のワンピの下の芸の無い黒キャミの様にミエミエでウンザリする。
まあ、気にはしませんけどね こっちは…
チューブトップにローライズジーンズの時代からRe.musのオーダースーツを着こなす今に至るまで一貫して言える事。
それは
“いついかなる時でも私が一番”!!って事
泰子なんかは歯牙にも掛けない。
あ、例外があった。
“できちゃった婚”のあゆみを筆頭に始まった“結婚狂争曲”には参戦しなかった。
当然よね。
“傅かれてナンボ”の男の…パンツなんて気持ち悪くて洗えやしない!
ましてや“そいつ”の子孫繁栄の片棒を担ぐなんて…
あり得ない!!
そうなのよ…
最近はオトコがつまらなくって!…
「おねーさん」って慕ってくれる可愛い娘たちと居る方が…
楽しい!!
カノジョ達を手塩に掛けてステキにしていくのは
他では得難い充実感がある。
ただ、本当に残念なのは
大抵のコが途中でリタイアしてしまう事
最近、一番ショックだったのは…私の一番のお気に入りの真姫ちゃんが…カノジョと同僚の“もっさい”オトコにヤられちゃった事…
カノジョからその報告を聞いて私は…昔、愛聴していたトクナガさんの“秋桜”を思い出して泣いてしまったのよね…“母”の気持ち、分かるわ~
この様に寂しい事もあるけれど…“お気に入り”のコは常に何人かいるの。
犬を飼ってる方なら分かるでしょ?
“ロス”にならないようにしてるの。
さて、私はこの“独白”を…とあるダイニングバーのパウダールームでしているのだけど…
今、何をしているかと言うと…私のお友達を引き連れての合コンだ。
えっ?!
「言ってる事、矛盾している!」って??
ふふふ、そう ここは確かに『十番』だけど…
カノジョ達には
『港区女子』みたいにはなって欲しくないから
今日の合コンも…
“反面教師”の教材って感じかな…
特に今日、目に付くのは
オトコもオンナも食べ方飲み方が汚い!!
私は“マナー講師”さんみたいなうるさい事は言わないけど…見ていて不快なのは良くないよね。
こういう“反省会”を合コンが引けた後にするわけ
つまり、カノジョ達が『お持ち帰り』されないように“大きなお世話”を焼くわけだけど
いいじゃない。
その手のオトコの下心のはけ口は『港区女子』にでも任せておけば…
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カノジョ達を無事引率し終わって…
私は一人、降車駅前の定食屋で手酌ビールの一人打ち上げ。
ジャケットは畳んで大判のスカーフをふろしきにして膝上だ…
“脱いだ”後はカーキ色のノースリーブカットソー…定食屋の“空気”の中でも浮かず、落ち着いた雰囲気をこの身にまとわせてくれる。
目の前の焼きなすだけでは飲みのアテとして心もとないので、もう一品頼もうとカウンターの方へ目をやると…
椅子にジャケットを引っ掛けた
いかにもリーマンっぽい人が…
サバ塩焼き定食を食べている。
その箸さばきが!!
とっても素敵!!
思わず見とれてしまう
あっ!!
ジャケットが椅子から落ちそう!!
私、スイっと立って、既所で掬い上げた。
「ああ、すみません!」
と顔を上げたその人は
ちょっとはにかんだ笑いで…
その向こうに見えるお皿の上は…
取られた小骨でさえ整然としていた。
私…“感嘆”が顔に出てしまっていたのだと思う。
カレが少し不思議そうな目をしたから…
今度は私がはにかんでしまって
手の持ったジャケットをいつもの癖で畳んでしまう。
「ありがとうございます。」
ってカレが言ってくれたので…
私は畳み皺を整えてカレにジャケットを手渡す。
「こうすればお膝に置けますよ」
受け取ったカレの左手には指輪が無かったので、私は思い切って声を掛けてみる。
「今、お夕飯ですか?」
「ええ、もう“夕飯”って時間では無いですけど…ここで食べて帰れば後は寝るだけですから…あっ! 風呂は入りますよ…っつうか…女性を目の前に、ボクは何を言ってるんでしょうねえ~」と可愛くて反省してしまっているので
私はクスクス笑ってしまった。
するとカレが
「なんだかもう、ワーカーホリックですね」
と照れ隠しに言うので
「それはいけません。あなたにとって大切な方が悲しみます」とたしなめたら…
「残念ながら親も…歳の離れた兄も…既に他界して“そういう人”が居ない身の上なのです」
と返された。
私の口調の変化で…
私の“気持ち”をお察しいただけた?
もう言うしかないよね!
「そんなお話を聞かされたら…同じような身の上の私が…心配してしまいます」
と。
確かに今までは
『いついかなる時でも私が一番』
だった。
けれども、『それももう卒業』という事も感じている…
だから私は
新たに
胸にピン留めする。
『お求め易くなりました』って!
ん、まあ…
『安く』でもいいわ
ううん、やっぱり仮名だわね
『お求めやすくなりました』!!
こう申し上げておりますけど…
いつも綺麗に磨きをかけて
お手入れしていますし…
“中身”はずっと“真新しいまま”ですよ!!
『箸使い』に関して共感を得ましたので…もう一作書きました。
この方、才色兼備っぽいけど、どんな女性なのかしら…
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