見つからなければ最強……かもしれない技の1つ(中編)
スキルなら【隠密】【気配遮断】系。 忍者の秘伝技より、某スタンド能力のほうがカッコいいと思う。
「…………どうしてこうなった……?」
中庭の端で、ぐったりとした表情の花さんが頭を抱えて唸っていた。
◆◇◆◇◆◇◆
花さんに「今日の放課後、中庭で勝負だ!」とドヤ顔で宣言した陸上部の安達・野球部の上杉・サッカー部の青山は、妙に掴み所のない花さんを警戒したのか、「女子なら何か弱点知ってるだろ」と、取りあえず話しやすい部活の女子マネージャーに声をかけるため、自分たちのクラスへ戻る。
途中で運良く、野球部マネージャーの照井サエコさん・サッカー部マネージャーの斉木スミレさんの仲良しコンビを見つけ、「生意気な黒木をボコボコにするから見に来いよ!」と、再びドヤ顔をする3人。
「黒木さんをボコボコに?本気で言ってるの?」「そりゃあ3人掛かりなら殴る蹴る出来るだろうけど、黒木さんを?」「ないわ~、有り得ないわ~」「知らないって罪だね、サエちゃん」「スミレ、知らないのが幸せなんだよ」「「困ったヤツらだね~(ニヤリ)」」
「何が困るんだよ !? 」
「マジで殴るとかじゃねーし!」
「おふ~(笑)まぁ期待してないでっす!」「そんなことよりスミレ、エミちゃん先輩に連絡だぁ!」「よし!ニャン丸2号機、発進します!」「え?スミレって1号機じゃなかった?」
賑やかに走り去る2人に、
「え?なんで陸上部の女子マネに言うんだ?」と、首を傾げる安達。
この後、「今からでも謝れ」「止めといたほうがいい」等とクラスメイトたちから言われた3人であった。
◇◆◇◆◇◆◇
ヤマト高校の中庭は、渡り廊下で前庭と後庭に分かれている。
どちらもテニスコート1.5面ほどの長方形で、植え込み以外の通路はレンガで舗装され、三人掛けのベンチとゴミカゴ(鋳造製)が配置されている。
文化祭では、通路の両側に飲食以外の屋台とチャリティーバザー、美術部の屋外用作品が並べられる。
(飲食の屋台は、正門~体育館前~運動場までの通路に設置)
◇◆◇◆◇◆◇
「クロキっちゃんが勝つか聞かれたけどさ~」「終わるまでわかんないよねぇ」
イマちゃんとナナコの会話を聞きつつ、
「……どうしてこうなった……?」と頭を抱えて唸る花さん。
「まだ『体育館の裏に来い!』って呼ばれたほうがマシだったよ……なにこの野次馬ギャラリー……勝手に賭けんなよ……って!私が勝っても負けても儲けが出るやん!自分で自分に賭けさせろ!取りあえず200円!」
「ほいほ~い♪まいど~♪オッズの確率は、」
「いらん!」
目立ちたくないのに悪目立ちで注目されキレ気味の花さん相手に、どこ吹く風な放送部の通称『チンドン屋の司会』酒井。
ニコニコ顔には出さないが、「体育館の裏に呼び出されたってマジ話だったのかよ!」と、心臓がドッキドキのバックバクな酒井であった……
◇◆◇◆◇◆◇
中庭(前庭限定)で始まった、3対1の『かくれんぼ』
100数える間に花さんが隠れ、数え終わると同時に捜索開始・制限時間15分・制限時間終了の合図と同時に『発見』された場合は『引き分け』・3人は走らず捜索・花さんの隠れ場所の移動は3回まで・花さんの隠れ場所をギャラリーが教えたら掛け金を全没収&花さんの『勝ち』
タイマー係と審判は、陸上部の女子マネージャー・吉永エミ先輩(3年)
◆◇◆◇◆◇◆
「開始1分で簡単に見つけるぜ!」と、お遊び気分で余裕な3人だったが、5分経っても見つからず、焦りのあまり仲違いを始めてしまう。
ギャラリーにまで「アイツが逃げたの隠してんだろ!」と八つ当りして、大ブーイングの嵐に。
いつの間にか見物に混ざってる先生方からも「時間ないぞ~早く見つけろ~(笑)」とヤジを飛ばされる。
残り3分を切る頃には、中庭で1番高い楠の木(樹高12メートル)の下で、「オマエそんなとこ登ってズルいぞ!下りてこい!」と叫ぶ始末。
ピョロロ~~♪
「終了ですよ~~」
調子外れな笛の音とエミ先輩の声で、3人の奮闘?虚しい『かくれんぼ』は終了、花さんの勝利が決定した。
そういや『一人かくれんぼ』で使うぬいぐるみや人形の撃退方法……というか、実践したオリジナル封印方法(効果は抜群だ!)を書いたメモ帳、どこにやったかな……