オリジナルの苦行、頑張ってね・4
注意:毒草が何種類か出てきますが、知らない野草・判らない実は、うっかり食べないで下さい(キノコも)
「えっと…さっきから気になってたんですけど、『スイーツ』じゃなくて、『フルーツ』ですよね?まぁどっちにしても、甘さや優しさが全く無い、毒の塊ですけど」
「…………」
嫌そうな顔で指摘した花さんは、自分が抜いた草でパンパンになってるゴミ袋から、何やら毒々しい色の草を何種類か迷い無く取り出していく。
「それで、どうするの?あれだけ『自分のだ!』と騒いで、私が盗ったとか食ったとか色々叫んでたし、命を賭けたスイーツパーティーは決定か。あ、もちろん、1人でお家でやってね?はい、どうぞ♪」
「えっ…!?いや、要らない「はい、どうぞ♪」
「要らな「はい、どうぞ♪楽しみでしょ♪」
どこからか取り出したビニール袋に、手早く摘み取った実の部分をミッチリ詰め込み、ニコニコしながらグイグイ手渡そうとする花さん。
楽しそうな口調と笑顔なのに、全く目が笑ってない……というより、目が真剣すぎて圧が強い……
◆◇◆◇◆◇◆
「……トミコ、あんた何やってるの?」
校内から歩いてきた女性が、怪訝そうに呼び掛けてきた。
「あっ!!ママーー!!コイツ、頭オカシイこと言って、えみぃをブッ殺そうとしてんのーー!!」
どうやら女性は『えみぃ』の母親らしいが、『トミコ』って誰?と花さんは考えつつ、取り敢えず「こんにちは。失礼ですが、此方の女性のお母様でしょうか?」と挨拶。
「はい、そうですけど……この子、また何かやらかしたんですね…?」
((((既に やらかし済みかよ!!))))
妙に悟ったような『トミコ』?の母親と、心の中でツッコミを入れる美化委員たちと担当教師。
「私が清掃作業で除去した毒草の実は自分の物だから返せと言われたんですけど、なぜか受け取ってくれないんですよね~」
「これ全部?……え?ちょっと待って、毒草って言った?」
「あ、はい。食べたらほぼ死ぬ毒草ですが、無理矢理食べさせてブッ殺そうとはしてませんよ。娘さんには大事なスイーツだそうです」
花さんが説明した直後、
バッシーーーンッ!!!
「いったーーーいっ!!ママなんで叩くのーー!?」
『えみぃ』の頭を持っていた書類で思い切り叩く、『トミコ』の母親
「あんたは何やってるの!!そんなバカばっかりやって頭スッカラカンだから小学生以下って笑われるのよ!!今日は最後の日なのにお昼過ぎても起きないし!!先生にもフニャフニャとしか挨拶できないし!!あなたは何年生?」
「2年です」
「あんたも同じ2年だったでしょ!!ちゃんと脳みそ入ってる子に迷惑かけるんじゃないわよ!!」
周りからは、バカな娘をバッシバシ叩く母親に驚いて立ち竦んでるように見える花さんだが、
(さすが『えみぃ』のオカン!思い付くまま叫ぶのがそっくり!(笑)グシャグシャヘアーは、オシャレな寝癖だったか!(笑)『ちゃんと脳みそ入ってる子』って言う人、久し振りに見た!(笑)私に言った人は初めてだよ!(笑))
と、脳内は爆笑祭りである。
◇◆◇◆◇◆◇
「…はぁ、皆さん、ご迷惑お掛けしました。このバカ子は忘れて下さい」
「バカ子じゃないわよママ!!『えみぃ』って呼んでよ!!」
「まだ勘違いしてるの?あんたの名前は『トミコ』で、名字が『エミ』でしょ?それにあんたは外国の人じゃないわよ」
「え……違うの?……トミコが名前?でも『エミィ・トミコ』って名前書く所に書いてるよ?あれ?ママとか先生が『漢字で書いて』って言ってるのが本当の名前?」
「あんたやっぱり小学生からやり直しね……」
「「「「………………」」」」
あまりにもアホ過ぎる勘違いに、ほんわかしている美化委員 副委員長・船木先輩ですら、精神的に疲れてグッタリとしていた……
「ヨウシュヤマゴボウとイヌホウズキ、野生化したアサガオの種と、植え込みのアセビ。全部乗せパフェでヒャッホー♪とか予定してたら、大人の階段の前に、あの世逝きのエスカレーターか~。それにしても、あの毒々しい見た目なのに普通に食えると思うのかな?……あ!アレか!『わたしがかんがえた すごいしゅぎょう』だ!うーん、ちょっと思い付かなかったな~。ヤマト高校からは離脱しちゃったけど、『解脱』するまで、オリジナルの苦行、頑張ってね!」
満足そうに頷いてる、花さんを除いて。
あの世逝きのエスカレーターは、猫とネズミが仲良くケンカしている海外アニメがネタです。
毒草(アセビは毒木)はマジでヤバいヤツばかりなので(特にヨウシュヤマゴボウ!!)、『実際にやってみたwww』ネタで使うと、エスカレーターどころか、あの世逝き超特急に強制乗車です。