この素晴らしいポエムを朗読します・1
さあ見せてやろう、風紀委員との違いをな!
黒木 花さんはヤマト高校の美化委員である。
美化委員と言っても、窓枠の埃を抜き打ちでチェックする鬼姑レベルの厳しい規則はなく、月に2回の校内点検と草むしり程度。
放課後の清掃は各クラスの当番制とはいえ、廊下や階段の陰などに捨てられたゴミをそのまま放置するのは嫌な花さんなので、見つけ次第 片付けるのが日課である。
◆◇◆◇◆◇◆
ある日の昼休み
「ギャハハハハッ!筆箱投げんの反則ーー!」
「アッハハハハ!アンタもペットボトル投げんの禁止ーー!」
何が楽しいのか、お互いの教科書や私物を投げ合って大騒ぎをしている、迷惑女子コンビの竹林と堀田。
二人の周辺は足の踏み場も無いほど、大量の丸めたテッシュやノートの残骸なども散乱し、クラスメイトたちの「いい加減にしろ!」「あんたたち早く片付けなさいよ!」という苦情も、ヘラヘラと笑いながら「ア~、キッコエッマセェ~ン(笑)」と無視。
「片付けたいんならアンタらがすればぁ~?ギャハハッ」と言われ、ムカッとするクラスメイトたちの一人が、廊下を歩く花さんを見つけた。
助けが来た!と「黒木さーん!緊急出動お願いしまーす!」と手をブンブン振る。
「緊急?大量?」
「うん!気絶するほど!」
「了解!待っててね~」
◇◆◇◆◇◆◇
自分のクラスに戻り、掃除用の七つ道具を持って戻ってきた花さんは、
「ゴミなんか ほっといても「教室の中に放置しても消えて無くならないよ」
「そのうち誰かが片付け「あなたたちじゃないよね」
と、有無を言わさず、ゴミと私物を的確に素早く仕分けしていく。
「自分たちで散らかした後始末すら出来ないのに、私にグダグタつまらない言い訳するくらい暇なんだから、手分けして手伝ってくれてる人たちへの感謝のセリフの一つでも考えないの?あ、でも『落ちたの拾うとか、手が汚れたらヤダー!』とかバカみたいな事を平気で言っちゃう人たちなんかが、うっかりでも急に感謝っぽいことなんて言ってきたら、後でとんでもない無理強いさせられそうで怖いわ~。もちろん、私は受け取り許否するわ~」
清掃作業の早さとは反対の、のんびり世間話でもするような毒舌のギャップに、得体の知れない怖さを感じる、迷惑女子コンビ……
◇◆◇◆◇◆◇
「よっし!予鈴3分前!お疲れ様~♪」
「「「「お疲れ様です!」」」」
「「………………」」
「じゃあ、今日の掃除当番さんにゴミ捨てお願いします」
「はーい、任された~(笑)」
「「「「自分から任されたんか~い!(笑)」」」」
「「………………」」
和やかな雰囲気の中、自分のクラスに戻ろうと教室のドアに向かった花さんの背中に、それまで無言だった竹林がいきなり、
「偽善者ぶって偉そうにっ!!」と、何かを思いきり投げつけた。
ゆっくりと振り向いた花さんは、眠そうにも見える無表情になり、別人かと錯覚するような抑揚の無い低い声で、
「へぇ…アンタは私に、こういう事をするんだ…ふぅ~ん…コレ…残ってたゴミなのかなぁ…?」と、投げつけられたノートの残骸を摘まみ上げる。
「誰のか知らないわよ!落ちてたんだから勝手にすればいいじゃない!!」
「ふぅ~ん…落とし物でいいんだぁ…ふふっ」
「っ!?」
ニンマリと頬笑む花さんを薄気味悪く見送った竹林だったが、この選択のせいで黒歴史が刻まれようとしていたのだった……
黒木 花さん:ヤマト高校2年4組・美術部・美化委員・お姉さんがいるが名前は『瞳』ではない