第5話
エルはこれらの魔法の結果、物理と魔法の両方に耐性があるということになるが、絶対的な防御というわけではない。ただ、物理攻撃をしてくるモンスターは圧倒的に多いので、ユッカからしたら風魔法のユ・コートは憧れの存在である。
防御と言えば、ゴッドの持っている盾にはユ・プラスエンチャントの効果があり、一瞬だけパーティーに対するあらゆる攻撃を無効化する。ゴッドの盾でパーティーメンバーが何度命を救われたかしれないが、ゴッドから離れすぎると効果が得られない為、距離感が大切になる。
攻撃は専業剣士のクウガの長刀が雷属性を帯びている名刀で、かなりの切れ味だ。アルナも水魔法使いながら普段は弓を使って攻撃しており攻撃力は侮れない。ゴッドの戦斧も破壊力があるし、エルはその防御の高さを生かして接近戦を仕掛けていく。
ユッカの双剣もかなりの物だが、61層で通じる程のレベルではない。ただ、土魔法のパク・ドラゴンを召喚することで敵の攻撃をそちらへ向ける等の補助的な役割は期待されている。
61層で最初に遭遇したモンスターはデーモン系だった。黒い肌に角を生やし、赤い目をしている。パーティーが気づくと同時にデーモンも気づいたようだ。デーモンは知性が高く、逃げられると仲間を呼ばれてやっかいだ。
クウガがデーモン目がけて走る。デーモンは一瞬逃げるが迷ったようだが、その間にクウガは距離を詰め、長刀で一刀両断にする。デーモンは体を真っ二つにされ息絶えた。
その後、レアな薬草を二箇所で採った後、一時休憩として簡単な食事をした。そのまま、レア鉱石を採掘に行く予定だったが、炎魔法がないと倒しづらいモンスターがおり、鉱石は諦めた。
パーティーは61層のほぼ中央の廊下を北へ進んでいた。通路を進んで行くうちに、スーツを着た男性と出会った。
「ようこそ、お嬢様方」ヴァンパイアだった。
「ユッカ、目を見るな」エルが鋭く言うが遅かった。
ユッカはヴァンパイアによって催眠状態にかけられてしまっていた。双剣をアルナの方へ向けて振りかざす。そのユッカの双剣をクウガが長刀で叩き落す。それでも、なおユッカが素手で飛び掛かってくるので、ユッカの腹に思いっきりパンチを当てた。ユッカはようやく気を失い、床に寝そべった。
ヴァンパイアに対しては、エルが向かった。互いに素早い動きで敵の攻撃を避ける。ヴァンパイアの武器はステッキだが、まともに食らえば、骨が砕けそうな威力である。