04 SAMURAI・・・何処へ。
彩の家。
彩は一人で住んでいる。家と言っても小屋に近いが。今は家に忘れ物をしたので、取りに来たのだ。
彩がこの小さな家に住むのは、父親の残した借金があるからだ。少しずつ返していて、あと3両というところまで来た。円水のところでバイトをしたりと色々な仕事をしてきた苦労がもう少しで、報われるのだ。
ドンドン!と戸を叩く音がする。
「は〜い!」と出て行くと、チンピラ二人と、サムライ一人が待っていた。
「どうも、借金のことなんですが・・・・。」
「はい。きちんとお返ししてますが・・・。」
「いえ・・・大事なことを忘れていまして・・・・」
「大事なこと??」
「こちらの勘違いでね。利子の分を忘れていまして。」
「そんな!!!」
「ということで、あと10両になります。明日までに返してもらえますよね??」
「そ、そんな無理です!!!!」
「じゃあ・・・・・来てもらうしかないですね。色町にでも売るしかもうないですから・・・。」
そう言って、手をつかむ安川。
「離して!!」
「うるさい!!」
ボン!と彩の腹を殴った。
そして、チンピラ二人に「目立たないように連れて行け。」というと、「へい!!」と二人で担いで連れて行く。
紅丸は円水の診療所へと戻った。
すこし円水の様子が違う。
「おい、何してた!?」
「散歩だよ、悪いかよ。」
「彩さんがチンピラに連れて行かれたらしい。見たって人が今、家に連絡をくれた。」
「何処にいるんだよ?? あのバカは。」
「借金取りのアジトのようだ。強い用心棒がいるらしいし、ヤクザ者だから、同心たち〔警察のこと〕も手が出せない。」
「んなこと言って場合かよ!! 場所何処だ!?」
「川向こうに大きな屋敷がある。そこが奴等のアジトだ。」
「川向こうだな!!」
「おい、待て!俺も行く!!」
そういうと紅丸は走っていった。
円水もその後を走って追いかけていった。
「ん・・・・。ここどこ・・・??」彩は目を覚ますと、見知らぬ場所にいた。
暗いが、窓のむこうに月が見えるのでうっすらと光が見える。
「あ・・目が覚めましたか?? ここはヤクザの屋敷の中ですよ。」と笑うのはさっきの先生と呼ばれていた男。
「あ、あんた!!!」と彩が言うと、刀を喉元に突きつけられた。
「動かないほうがいいですよ?? 少しでも動いちゃうと・・・・斬れちゃいますからね。」安川はそう言いながら笑う。
「う・・・。」と怯えた目で見つめる彩。
「ふふ・・・その瞳たまりませんね・・・あなたの目のなかには、死への不安、恐怖、絶望、諦め、怒り、恨み、苦しみ、悲しみ、不満、そんな負の感情がドス黒く渦を巻いてるように見えます・・・・だから、私は人間が死ぬ瞬間を自分の手で作り出し、その瞬間を見るのが大好きなんですよ!! ふふ・・・・。」
「あんた、おかしいんじゃないの!?」と彩は少し怒りながら言う。
「おかしくないと、この仕事はやっていられないんですよ・・・・。」
そう言うと、刀をさらに喉元に近づける。
彩の首から血が流れ出た。
まるで、ダムから小さな穴があいて少しずつ流れていくように・・・。
「痛っ・・・・!!」と彩が声にならない声を出す。
「痛いでしょう?? 苦しいでしょう?? アハハハハハハハハハハ!!!!!!」と笑う安川。
その時、「ぐはぁ!!!」と屋敷の外から声がする。
「先生!!」と手下が中に入ってきた。
「何だ。」と返すと・・・「すげぇ強いやつらが2人・・・・来たんです・・・。」
「ほう・・・どんな奴だ??」
「なんか彩はどこだ・・!!とか叫んで切りかかってくる、赤い髪の男と、あと冷静に斬ってくる黒い髪の男です!!」
「まさか・・・あいつら・・・??」と彩が言うと、「ほう・・・そいつは面白そうだ・・・・。」安川はそう言うと突きつけていた刀を戻して、血を払う。
付いていた血は暗い地面にかかる。
少しずつ少しずつ、点を描く血。
「さて・・・強いやつらを殺しに行って来ますね。希望を失くすために。」と笑って、刀をしまいながら、部屋から出て行く。
「あんたなんか・・・・やられちゃうんだから!!」
「それならそれでいいですね。殺されてしまうのなら・・・・それも一興でしょう。」と安川は笑うと声のするほうへと向かっていった。
ヤクザ者20人くらいだろうか、紅丸と円水の周りを囲む。
「てめぇら、雑魚はすっこんでろ!!」と紅丸が言うと、円水は「冷静にな。」と言う。
「うらぁ!!!」とヤクザがドスを持って襲い掛かってくる。
紅丸はそれを払い、腹をぶった切る。
円水は冷静にかかってきた相手のドスを防御して、切り返す。
そうしていると・・・安川が入ってきた。
「フハハハハハハッハ・・・・・あれ??」
「うぜぇよ。」
そういうと、同時にシュウは安川を切った。
「恩義は返す。」
そういうと、シュウは刀をしまい、「じゃあな。」という。
彩は、「待ちなさいよ!! あんた何者なの??」
「俺は・・・・琉球から来た、剣士だよ。」
そういうと、シュウは立ち去った。