02 SAMURAI・・その名は。
赤い髪の侍は、その奪った金で何を食おうか考えているところ、「きゃ!!」と走ってきた女にぶつかった。
「助けて!!」と言って女は背中に隠れる。
女は赤い髪の侍と同い年くらいでだけど、背が小さい。子顔でまぁ・・・美人な方の顔立ちだ。
街娘って感じだろうか、時代劇に出てくる若い女の子を想像してもらうと分かりやすいだろう。
何だてめぇ??と聞こうとしたところ、チンピラみたいなのが二人、「おい、その女こっちによこしやがれ!!」
「ほらよ。」と赤い髪の侍は渡そうとする。
「えぇ!? あんたちょっと助けなさいよ!!」と女が嫌がる。
「なんで??」
「なんでって、こんな可愛い乙女が男二人に、襲われそうになってんだから、普通助けるでしょ!?」と女が大声で反論する。
「普通って、てめぇらの常識で、ものを図るんじゃねぇ!! 大体、自分のことかわいいって言うんじゃねぇ!!」
「うるせぇぞ!! さっきから!!」
そういって、チンピラ二人はドスを抜いた。
「そこのアマ、ナンパしたぐらいで、ぶん殴りやがって!!」
「あんたたち、あたしを連れ込んでへんなことしようとしたでしょうが!!」
「うるせぇ、借金があるくせに、えらそうにしてんじゃねぇ!!」
うるせぇなぁ・・・。とイライラし始めた、赤い髪の侍。
「てめぇら何だか知らねぇけど、うるせぇ!! 俺の行く道を邪魔する奴は、ぶっ殺す!!」
そう言って、まずドスを持った一人を刀を持ってないほうの手で殴る。
バキ!!と音がして、殴られた奴はぶっ飛んだ。
そして、もう一人もドスで誘うと向かってくるが、「うざい。」と言って、蹴りをかます。
「てめぇら、これ以上邪魔するなら・・・・斬るぞ??」
と目で脅す。
ヤクザでもこんなに怖い目をした奴はいない。
「てめぇ・・・覚えてろ!!!」
そう言って、二人は逃げ出した。
「すごーい! あんた強いのね!!!」と女が言って、肩を叩いたその時。
バタン!!と赤い髪の侍が倒れた。
「どうしたの!?」
「・・・・。」
「お医者に運ばないと!!」
「ん・・・・・??」
侍が気が付くと、布団の中で起きる。
廻りは白い壁で覆われている。どこだ・・??
「気がついた??」とさっきの女性が言う。
「てめぇはさっきのアマ! ここどこだ??」
「ここは病院で、この町で1番のお医者さんがいるところ。薬も作ってくれるし、何処よりも安いっていう評判のお医者さんなの。」
グー・・・。
と侍の腹から音がした。
「三日三晩何も食ってねぇから・・腹減った。」
「あ、ご飯ならあるみたいだから、一応取ってきてあげる。あんた一応、命の恩人だし。」
「俺様にすげー感謝しろよ??」そう言って胸をはる侍。
「はいはい。あたしは、彩 あんたの名前は??」
「俺は、比嘉 紅丸様だ! 覚えておけ。」
そう言って、彩は食べ物をとりに行った。
奥のほうから、カツカツと足音がする。
誰か来るようだ。
「どうですか? お加減は・・・。」
医者の顔を見て紅丸はびっくりした。
それもそのはず、賭場で出会った黒髪の侍が、ここにいたからだ。
「てめぇ! ここで何してやがる!?」
「おまえこそ。俺はここで医者をしている。名前は?」
「てめぇに誰が教えるか!」
彩が帰ってきて、「食べ物とって来たよ〜♪」と言うと、「あら、先生!」と言う。
「ここにこの男を運んできたのは、彩さんですか?」
「はい、倒れたので、町の人に協力してもらって。」
「そうですか・・・。」とすこし落ち込み気味に言う黒髪の侍。
黒髪の侍は眼鏡を指で少し上げると、「で、名前は??」とまた聞いてきた。
「てめぇに誰が教えるか。つーか、てめぇから名乗りやがれ!」と紅丸は毒づく。
ふぅ〜・・。とため息をつくと、「俺は、樋山 円水だ。
この江戸の生まれだ。今は見ての通り、侍ながら、医者をして人々に尽くしている。
俺のことは教えたな? じゃあ、お前の生まれと今何をしているのか答えろ。
じゃないと診療記録が書けないからな。」
すると、紅丸はあぐらを書いてこう言った。
「俺は、比嘉 紅丸〔ひが べにまる)〕様だ! 覚えておけ。生まれは琉球。
で、今は日本一の大剣豪になりたいから、江戸に来た。」
そういって、紅丸は彩の持ってきたおにぎりを食べる。
彩が紅丸におにぎりを渡すと、円水の顔を見てこう言った。
「琉球・・・って、どこ??」
円水は地図を持ってきた。
そして、地図の琉球を指差す。
「琉球は、この江戸からはるか南にある、最南端の国。最近見つかったばかりの王国で、我々とは文化も違うらしいが・・・」と円水が言うと、紅丸は、「お前らの文化とは違うし、気候も違ぇよ。年がら年中晴れてるし。」と言った。
「へぇ・・・・あんた、そんなところから来たんだ??」
「おう。琉球一になっちまったから、日本一もそんなに遠くないだろうから来た。円水だっけ?? この江戸で一番強い剣豪は誰だ??」と紅丸は頭をかきながら、聞く。
「この江戸で一番強い・・・・か。江戸なら・・・・」
「やっぱり、宮本武蔵?? 佐々木小次郎??」と彩は言う。
「もう何年前の人だ・・・??」と円水は冷静に言う。
「あ、もう死んでるの??」
「かなりの前に。生きてりゃ、相当だよ。」
「で、誰が一番だ??」
「ん〜・・・・・たくさんいすぎて、よく分からんな。ただ・・」
「何だ。役にたたねぇなぁ・・・。」と紅丸は頭ををかくと、むくっと起きて・・・「じゃあ、その辺散歩に行ってくらぁ。また戻ってくる。」とあくびをしながら出て行った。