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めぐりあわせ4  作者: のぼり
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幼いさき

無くした記憶と向き合うことになったさきは、自分の過去を知ることになる。

さきと絵理子が出ていくと万里子は佐々木夫妻に向き直り、今までのさきの話とは少しずれた話を始めた

「さきの両親のことですが、行方がわからなくなる前にトラブルはありませんでしたか?さきがいない方が教えて頂けるかと思いまして。」しかし、「本当に温和な方でね。余所のお子さんの事も良く気が付く方たちでした。職場でもトラブルも無くて本当にどうしていなくなってしまったのか思い当たる事が無かったんです。最初は久し振りに実家に帰るので離れがたいのかと心配してもいなかった。それくらいトラブルとは無縁な人だったんですよ。」と由利子は答えた。「刑事をしていると自然と人の行動って目に着くんですよ。でも西野さんには気になることなんて無かったですよ。庇っている訳じゃないですよ❗」武史も決して庇っている訳じゃないと強調した。「そうなんですか。そんな立派な人が何故さきを独り置き去りにしたんでしょう?益々わからないんです」万里子の疑問も最もだ「うーん。私たちは一緒にいるもんだと思っていましたから。」「まさか独りで保護されたとは。」武史も考えがまとまらないらしい。「絵理子からさきちゃんに会ったと聞いたときはさえ子さんや西野さんも一緒かと思って安心したんですけど、養女に入ってると聞いてどうなっているのかと心配になりました。でもよいご家族のようで…」「ありがとうございます。さきは私達夫婦の宝です。どこにもやるつもりもありません。こちらにまで伺ってさぞかし、過保護だとお思いでしょう」申し訳ない表情の万里子だ「そんなことないですよ。気になさらないで下さい」由利子が微笑む。万里子は意を決した様子で「実は他にも確認したいことがあるのです。私どもにはさきの外に娘が独りおります。私共夫婦にとっての実子です。でもその娘が短大を卒業した翌日に家を出て未だに戻っていないのです」「まぁ…」由利子は言葉を失った「さきを引き取った年に手紙が途絶えて、もう20年になろうとしています」「それまでは年末に一度手紙で元気でいると知らせてくれていました」「同じ年…。偶然ですかね?」武史も何か引っ掛かる様子でいる「としか言い様がないのですが先程、奥様からさきの母親の名前がさえ子さんだと伺って…もしやと思いました。でも似たような状況はいくらでもあり得ますし…。」「ええっまさか…」由利子達は突飛な話に驚く。「娘の名前は沙依子なんです。実は、さきの名前の漢字にも心当たりがございます」「漢字ですか?」「家を出る前に娘が自分の子供に清水の清を使って名づけると話していたのです。勿論偶然ということも考えられます」「さきちゃんの清紀…」「紀の字は父親から清は清水から取ったのではないかと…。都合良く考えたいところですが、違った時の反動を考えると怖いのです。今までなんの情報も無かった事が急に出てきて、うれしい反面、偶然の場合も同じ様に不安も強くて怖いんです」「あり得ない話ではないですが、降って沸いた様な感じですね」「ええ。私もまさかこんな身近に娘の情報が出てくるとは。何か判るきっかけがあるとは…。でも偶然も然りで、もしも違っていたらショックも大きいですし、さきには知られずに詳しいことを調べて見ようかと思っています。」「こんな事があるんですかねぇ…」万里子も由利子も不思議な縁を感じている

「事件が解決する時ってこう言うことがまま起こるんだよ」武史が呟いた

「はっきりさせるにはDNA鑑定が一番だろうね。今は、かなり精度も上がっているだろうから。」武史は何か考えているようだ「でも、鑑定に使えそうな物は残っていないです」万里子は残念そうに呟く「あら、お二人のDNAがあれば良いですよ」由利子が万里子に言った「私達のですか?」「血縁を調べることは出来ますよ。確か、親子とは違うんですが血縁の確率を鑑定出来ると効いたことがあります」「そうなのですか…。では早速調べてみます」

「血縁が無くてもさきちゃんは清水さんの娘さんに違いないんですから今の状況を大事にして下さい。私達は、さきちゃんが元気で幸せに成長した姿を目に出来て本当に嬉しいです。」「西野さんについては、私も知り合いに確認してみます。もう定年して時間が経っているので新しい情報は入らない可能性が高いのですが。」「ありがとうございます。どうぞ、宜しくお願いしたします」万里子は深々と頭を下げた

「心配の種は尽きませんね。ところで清水さん、さきちゃんに縁談とかあります?それとも既に決まった方がいらっしゃるの?」「オイオイいきなり何を言い出す…。困っておられるぞ」由利子の話に武史が口を挟む「だって、同じ年だから絵理子もさきちゃんも。」「私共では、本人に委せているので、特に決まった方がいるとは聞いておりません。まだ紹介するほどのお付き合いがないのでは思っております。もしや絵理子さんにはご縁談が進んでいらっしゃるのですか?」「いえ、違うんです。でも警察官って危険な目に合う確率が高いから結婚させて落ち着かせようかと思っているんです」「それは辞めると言うことですか?」「私は警官になるのは反対だったんですね、でも主人や義父が警察官だったことが絵理子にはかなり刺激だったらしくて、警察官になってしまったんです」「まるで悪いみたいじゃないか、絵理子が聞いたら怒るぞ」「だから居ないところで話しているんですよ。警察官の仕事がどんなに素晴らしいか良く解っています。でなきゃあなたと一緒になりませんよ。でも子供がその危険な仕事に付くのと違うんです❗母親の感情です。あなたのお母さんだっていつも心配ばかりしていたわ」「お袋が?初耳だ。」「本人にはせいぜい気を付けて頑張ってとしか言えませんよ。今の私がそうなんだから。」「…」「親の心情は理解できますわ」万里子は由利子の手を取った「何か合った時に真っ先に危険な仕事をするのが警察だって一般市民は考えますから…。またそう教育されているでしょう?」「自分の身を守る事も同じ様に教育されますよ?ただ、何も知らない一般市民よりは知識が有る分前に出る事になるのですが。」「でも、自分を守ると何も知らない一般の人間はそれを責め立てる。だから犠牲になってまでも無理難題を押し付けられる。」

「そうなのよ。警察官なら怪我しても死んでも危ない目に合うのは当然みたいに思われてる。警察官だって生身の人間なのに、家に帰れば普通に家族が有るのに。」「…絵理子が結婚すれば警官を辞めると思うのか?」「いいえ、あの子は辞めないでしょう。危険な目に合うのは当然位に思っていますよ。だからこそ、自分にも守るものが有るって知って欲しいの。仕事を離れたらゆっくり寛げる家庭を持って欲しいの。」由利子の声が震える「由利子さん…。」万里子は手を握って声を掛ける「何か起こってからじゃ遅いの。あなたにはわからないかもしれないけれど。看護師の仕事をしていて仕事で怪我をしたり、命を落とした人を見てきたから心配なのよ❗」「私だって心配していない訳じゃないさ、でもな、今は、以前と違って警察官の意識も市民の意識も違ってきているし、絵理子が結婚した相手が警官だったら拍車が掛かるやも知れんぞ。」「だから保くんをと思ったのよ…。」「保くんって遠藤保さんの事ですか?」「ええ、幼馴染みでずっと一緒だったし、親同士も馴染みが有るし、何より、いつも傍で絵理子を見ていてくれたから。」「保くんには迷惑だったんじゃないか?断ってきたじゃないか。」「あら、うまく行かなかったんですか?遠藤さんが絵理子さんをとても大切に思っているようですが?」「そうでしょう?他人の目で見ても判るでしょう?でもお互いにその気がないと両家に宣言したんです。」「宣言ですか?」万里子は聞き返す「そうなんですよ。二人で揃って、幼馴染みで有るが恋愛対象ではないとね。無理に一緒にする気は無いので時間を置こうと両家では考えてはいるのですが、別々に相手が見つかる場合もありますし。」「絵理子さんはお付き合いしている方がおられるのでは?」「いえ、居ないでしょう。毎日帰りは遅いし、休みは家にいるんです。年頃の女の子ならどこか出掛けそうなもんでしょう?彼氏が出来たら家に居ないでしょうし、料理に一切手を出さないし、もう年頃の娘のすることは全くしないんですもの。さきちゃんと一緒に年頃の女性が好むことを始めてくれたら嬉しいわ」「うちのさきは家事は一通りさせています。でも今まで、お休みの日は町巡りをしていたのでお付き合いをしていた方が同行していたとか聞いたことが無いのですが、多分決まった人は居ないのではないでしょうか。」

気が付けば、万里子と由利子の母親トークになっていた。武史は二人から離れて庭を見ているが、視線とは別に行方の知れないさきの両親の事を考えていた。

写真…。(まだ見てないのか?)「由利子、西野さんの写真は?」「あら写真ならこの間、保くんが届けてませんか?」「はい、拝見しました。でもうちの沙依子はどちらかと言うとポッチャリしていたのであの写真の女性はスマートでしょう?ですから娘の事は結び付かなかったんですよ。こんなに共通点があるなんて」「もっとないか探してみたらどうだ…。」「あっいえ。もう時間も掛かってしまいますし、また今度改めてお伺いできればと思っています。主人もきっとお話を伺いたい筈ですし。欲張ってはいけないと思っています」「是非三人でいらしてください。写真も探してみます」由利子は明るく答えた





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