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世界征服しますね  作者: せんり
9/13

09 逃げよう、ここはまずいって

 周囲を観察していると、三人の耳に甲高い警笛の音が鳴り響いた。

 どたどたと騒々しい足音が押し寄せてくると、あっという間に周囲を囲まれてしまった。

 

 警備隊なのだろうか、服に厚い板でも入っていそうな服に拳銃を取り出し、微動だにせずに構えている。

 その銃口はまっすぐと、それぞれ一人一人しっかりと向けられていた。

 


 「手際のいいことで――」


 「両手を上に、膝をゆかにつけそのまま前へ、倒れたら両手をゆかにつけてうつぶせになれ!」

 指揮官なのか、正面に立っていた男が銃を向けたまま動作のすべてを命令してきた。

 完全に犯罪者扱いである。


 「ねぇ、旦那様、あれって何ですか?」

 ――あ、私旦那様呼びになったんだ……じゃなくて、美亜には銃なんてわからないよね。


 「お前!今すぐ両手を上げろ!!」

 男がさらに声を張り上げる。

 指はトリガーにかかっており、いつでも打ててしまいそうである。

 

 ――次に行く世界は元の世界で決まりね。世亜ちゃんのエネルギー庫なしはちょっと辛くなってきたかも。


 そんなことを考えて、少し間が空いた。

 通常なら気にもしない間だろうけど、世亜と留美ならそれで十分に意思疎通を成しえる。


 「たった四人のチームで動くってここの重要性ってそんなに高くないんですか?」

 世亜がぽつりと口を開いた。指揮官の銃口が留美から世亜へと向けられる。――私に気を散らしていいのかなー?

 口角が上がるのを抑えながら指揮官を見ながら世亜は心の中でせせら笑う。

 


 「セントラルに侵入しておいて抜け抜けと!銃殺を許可する、うっー――」

 


 男の指示はもう聞こえない。

 部下たち三人に聞こえた指示はこの状況を脱出した私達の追跡であり、その号令のもと三人を追いかけるために動き始めてしまっていた。

 そして指揮官も私達三人に逃げられたと、幻を追いかけて行ってしまった。


 「――人間って便利」

 ちょっと感慨深くつぶやく世亜であった。


 



 三人はセントラルと呼ばれていた豪邸を飛び出し、外へ出る。


 そこは完璧に舗装されたアスファルトの道路だった。

 左右の植え込みには灌木が植えられ、中心の分離帯には小低木と5メートル毎に円柱のライトが並ぶ。左右の灌木には背の高いランタン状の街頭が並んでいた。

 その街頭の下には警官のような服装をした男達が一定間隔で整列していた。


 その傍らには女性がいる。

 半裸の姿で、それも一人や二人じゃない、数十人と転がっている。


 「なに――これ」

 二人は目を見開き唖然とその様を見た。



 すべての女性に言えることだが、半裸で放り出されているだけでなく、体中に痣や傷、汚れが目立つ。尊厳など皆無な姿にこの世界のあり方が垣間見えた気がした。


 「留美ちゃん、この国やばいよ」

 「わかってる――だけどこの状況って」


 二人が状況を把握しようと騒ぎ立てていると、悪寒が走った。おぞましく、背筋からぞわっとする感覚におそわれる。いくつもの視線が三人に注がれた。

 


 「この視線って」「ターゲットにされてる――?」

 

 まだ汚されていない若い女性というだけで世亜達三人は危険だった。捕まればあたりに散らばる犠牲者と同じ末路になることは明白であろう。

 セントラルの中だけじゃない、外も同じだ。この国すべてが三人にとって、いや女性にとって破滅的に危険な場所だった。

 ――ここは男のための世界だ。

 

 「逃げるよ」

 「ここでパジャマ姿って私達あり得ないくらいついてないよね!?」


 「――服はなくてもいいと思うけど」ぽつりと美亜が言う。



 「服はちゃんと着なさい!」

 そんな美亜の声を聴いて、――美亜ちゃんの生活態度は私がしっかり見てあげないと! と、意気込む世亜であった。


 

 留美のお陰で苦なく逃げ切ることのできた三人は次なる行動に移ることにした。

 現状三人の恰好はこの世界、もとより文化的な世界で行動する恰好ではなかった。

 

 次なる目的地はもちろん服屋!

 


 「男物しかないって徹底してるね……」

 入ったお店は完全に男性用の服しかなく、おそらくこの世界に女性用なんてないのかもしれない。

 そもそも女性という存在を道具としてしか、認識していないんじゃないだろうか。


 「そう考えるとさっきの警備隊の人達は普通の対応だったね」

 ふとそんなことを言う世亜に、留美は改めて考えた。通常完全な道具としてしか見ていないのなら、先ほどの対応にそれなりの反応があってもおかしくなかったはずだ。

 好みの問題とか甚だ理解しがたい理由もあり得るだろうけど。


 「――セントラルとそれ以外で考え方が違うとか」

 

 「旦那様、こっちにも服がいっぱいありますよ」

 そうやって二人で考えていると、いつの間に離れていたのか美亜がさらに奥のフロアへと向かっていた。

 ――あまり離れるといざってときに困るんだけどなぁ、それと旦那様呼びはやめさせよう。



 「美亜ちゃん、離れすぎると留美ちゃんの範囲からはずれちゃうよ?」

 そんなことを言いながら世亜も美亜の方へと向かって行くが、すぐに慌てて留美を呼びに戻って来た。


 「留美ちゃん! こっち大変!」

 「なにー、変な服でもあったの?」


 大ありだよ!と引っ張る先にあったのは一目で見てわかる、普段から慣れ親しんだデザインの服たち。


 女性物の服である。




 

 

 「着る服は男性もの。それもスーツ一択」

 留美の提案に世亜は頷くが、美亜はあからさまに嫌そうな顔をする。


 「美亜ちゃんもちゃんと着よ?」

 そういって世亜は美亜が着れそうな服を探し始めた。

 

 三人はスーツ姿になり、顔がわかりにくいように全員サングラスにマスクまでしている。やや怪しい集団と化した。


 ――男装もなかなかいいかも? 今度は美亜ちゃんみたいに思いっきり短くしようかな。

 そんなことを考えながら世亜は女性服の方も見ていた。


 もともとこの世界のお金もないし、下手に店員と接触して厄介なことになるわけにもいかない三人は仕方なしに服を拝借していた。

 もっと言うならば、留美さえいれば男装する必要もないが、万が一ということもあるので、全員が男装したのだ。


 世亜の気持ちとして、できるなら先々のことも考えてあと数着服が欲しかった。

 男装もいいとは思うけど、せめて普段着も3、4着欲しいと思うのは女子として当然である。

 

 ――まぁ、持ち歩くためにもキャリーバッグが欲しいけど――

 「あ! 留美ちゃん私大事なもの忘れてた!」

 「はいはい、なんですか?」

 「キャリーバッグ! 海外旅行するのに荷物なしも解消しよ」


 ――この異世界探訪を海外旅行言うか。


 ともあれ、それは留美としても歓迎すべき提案ではあった。

 何の荷物もなしに出てきているので、バッグくらい欲しい。


 文化水準が地球に近いここなら、もしかしたらキャリーバッグもあるかもしれない。

 窃盗は当然犯罪なので、これからするのは借りるだけ。できるならあとでお金を支払って買取も検討するし。


 頭の中で考えをまとめた留美は、世亜と美亜を見ながら指揮官のように声を張り上げた。


 「これより! 重要ミッションを伝える!」

 ピシっと世亜が敬礼のポーズをとると、美亜が慌ててそれに倣った。

 

 見よう見まねでまねようとする美亜の動きに二人はクスリと笑いそうになるが、その話はあとで置いておくとしよう。


 「これよりキャリーバッグと服を各自確保すること!」

 「ラジャ!」

 「ミッション開始!」

◆人物紹介◆


◇世亜のエネルギー庫 (01より)


白色の球体にピンク色の帯。

圧倒的火力、範囲、連続攻撃可能というチート武器。

「出番来る頃には新武器来てるよなー」 鼻ホジ

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