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世界征服しますね  作者: せんり
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07 モンスターハンター

 「それじゃサクッと捌きますか!」

 スチャっとポーズを決め、キラリと世亜の手には即席の包丁が握られていた。


 あれから仕留めた小鹿を三人がかりでなんとか必死で地下へと運びこみ、そこで解体となった。ここなら気温も湿度も低い、不便なのは水がないことだけど、腐ってしまうよりは何倍もいいだろう。



 そうして早速解体準備となったのだ、留美が集められるだけの貴金属から作った包丁は、少し切れ味が悪いけどなんとか使えるものになっていた。


 3人がかりで大きな体を切り分けていく。

 指先は血に染まるし、汗でパジャマはぐちゃりとするし、美亜は無理やり留美のパジャマを上だけ着せられており、パジャマ、ブラとパジャマ、ノーパンパジャマという危ない集団とかしていた。


 


 そうして三人で2時間掛かりの解体がおわると、早速バーベキューと相成った。

 とはいえ量が量なのでほんの一部食べるだけでほとんど食べきれないこともわかっていたが、そこはここで今まで生活していた知恵袋。美亜がいる。


 「このお肉食べきれない分ってどうするの?」

 「――さぁ?」

 まさかの回答である。


 「放置するわけじゃないよね? ここに置いておいてもすぐにダメになっちゃうよ」

 「大丈夫、全部食べる」


 「全部?」

 



 料理はキャンプみたいで楽しかった。

 本当のバーベキューとは違うが、石を敷きその石に熱エネルギーを与える。ただそれだけだが石自体が熱を保持し続けるので定期的に熱を加えることで加熱調理ができるのだ。


 ちなみに鉄板や網など、鉄製の物で作れば熱効率ずっといいのだが、すぐに冷めてしまう上に物質を作るとなると集める分子量が必然的に増えなかなか大変だったりする。

 

 そんな理由もあって即席石バーベキューセットである。



 「留美ちゃん、このお肉おいしいね」

 「ほんとー、生きててよかった」

 ふふっと世亜が嬉しそうに留美を見ながら微笑んだ。


 「美亜ちゃんもおいしい?」

 「むぐ?」

 有言実行、美亜は先ほどからものすごい勢いでお肉を食べていた。この小さい体のどこに入るのか、それとも食べられるときに食べるようにできているのか、すでに世亜の倍以上食べていた。

 

 「おいしい」

 「そっか」

 うれしそうに世亜が答える。

 「逃げないんだから、ゆっくり食べなさい」

 そんなやり取りを見て留美は諫めていた。


 



 「――――さてと、本番と行きますか」

  

 お腹いっぱいの食べた後、しばらくゆっくりしていた三人は大草原に来ていた。

 呟いた留美の言葉はずいぶん遠くにいる様子のドラゴンもどきを見つめていた。


 前回とは違い美亜が加わっての三人体制。とはいえ対抗手段が変わったと言わけではない。

 相変わらず世亜にはエネルギー庫はないし、美亜に至ってはそもそもエネルギー庫なんて存在も知らない可能性すらある。


 そんな中なぜ再度ドラゴンもどきと対峙しているかと問われたら、それは留美にとって激しい敗北感からくるリベンジでしかない。その結果命のやり取りがあろうと関係ないことであった。


 ともあれ結果的に留美対ドラゴンもどきという状況には変わりはない。とはいっても一対一で戦えるような相手ではない。



 そもそも前回ドラゴンと対峙したときはその巨大な体に距離感を完全に失わされていたことも大きな敗因である。

 留美の場合、エネルギー庫の有効範囲は100m程がなんの障害もなく効果を発揮できる距離である。

 また全力でならば300m程効果範囲を伸ばすことはできるが、同時に250m以上先はほぼ効果のない余韻を届かせる程度にとどまる。

 反対に50m以下の範囲まで縮まればその威力は最大限発揮できる。

 この距離はエネルギー庫と留美の距離にも同じことが言える。つまり100m先にエネルギー庫を置いて、200m先までは届かせることはできるが、そこから300m先までエネルギーを到達させることができるかと言われたら、答えはノーである。


 つまり、最初のドラゴンへの攻撃は250m離れていたのだ。

 ――効かなくて当然じゃない。人間相手とは違うってちゃんと理解できてなかった証拠ね。


 留美は自分の愚かさに嫌気がさしながらも次作を練っていた。

 その様子を世亜は楽し気に眺めている。今回世亜は留美の手助けをするが、特段なにか積極的に参戦するつもりはない、留美がそれを望んでいないからだ。


 距離の問題は近づけば簡単に解決するが、そう簡単にはいかない。

 対するドラゴンは足だけでもバスケットコート分はあるだろう巨体なのだ。

 下手に近づけば倒す前に踏みつぶされてしまうだろう。

 近づいてきたところを攻撃できればいいが、最低条件としてエネルギー庫から最低でも250mは近くにいないと起動することもままならなくなる。

 

 エネルギー庫を設置してその近くに来るまで待ち伏せるというのも手だが、それだと攻撃範囲が狭すぎてしまい、有効打にならない可能性もある。失敗すればエネルギー庫の再回収の手間まで付随してくる。




 しばらく考え込んでいた世亜がようやく顔を上げた。

 「二人とも、作戦決まったよ」


 そう言って留美は発光体のうち2つずつを世亜と美亜に託して、それぞれ所定の位置へと持って行ってもらった。

 留美も自身のいる場所に1つエネルギー庫を置き、ちょうど三人の位置をそれぞれ結ぶと正三角形になるように、ただし一辺200mもある大きな三角形だった。


 世亜は地面に作られた大きな三角形の中心に移動して、手元にあるのは4つのエネルギー庫のうち2つを残り一つで遥か上空へ打ち上げて、一つは足元においた。


 世亜と美亜は作戦に支障が出るので、すでに森の中に隠れている。

 

 ――こんなものでなにができるの?

 美亜は木陰から留美の様子を伺いながらそんなことを思っていた。

 ご飯の後ずっと黙り込んでいた二人の様子にも辟易としていたが、その後の行動も訳が分からなかった。

 留美が何かしようとしているということだけは辛うじて理解できるが、それだけだった。


 

 「さぁ、ドラゴンもどき君。わたしに平伏しなさい」

 上空に打ち上げるときの破裂音に気が付いたのか、ドラゴンはものすごい速度で接近して来ている。


 「一辺が200mの正四面体の外接円の半径、つまり正四面体の中心から各頂点までの距離約122.47m。私の射程範囲からすると届かないと思える距離。では内接円の半径、各面の中心までの距離ならばどうなるか、知っている?」

 ニヤリと笑う留美の顔は邪悪で嫌らしく、魯鈍な輩を小馬鹿にする笑みを浮かべている。

 

 各頂点にあるエネルギー庫が反応し、それぞれの三角形の中心へと飛び上がる。


 「私とあなたの距離はまだまだ遠い。それに君ほどの巨体だと生半可な攻撃では体の一部を傷つける程度」

 ふふふ―――。

 留美は不敵に笑う。

 

 もうすべてがうまくいった。

 「半径40m、それが正四面体の内接円の半径よ。同時に中心部にやって来るあなたとエネルギー庫の距離であり、私とあなたの不可侵の距離」

 

 「――焼き切れ」

 ギウィィィィィィイイインンンンンン!!!!!!


 突撃してきたドラゴンは、いとも容易く四分割に引き裂かれながら墜落した。

 



 「あ―――」

 「ああっ!――」


 落ちてきたドラゴンは、慣性が働いたまま轟音と土煙を巻きあけながら留美の方へ飛んできた。

 ――私のアホーーーー!!!!!!!!!

 

 「留美ちゃん!!!??!」



 

 巻き上がった土煙の中、真っ赤な肉と内臓がビクビクと未だ脈打つドラゴンの切断面を見ながら、留美は苦笑いを浮かべていた。

 ――巨大生物は死んだ後もおそろしいんだね。


 生まれて初めての巨大生物対戦は何とも言えない幕切れとなった。


◆人物紹介◆


◇留美のエネルギー庫 (01より)


9色の発光体!強力無比の力!

それぞれの役目は実は決まっていない!!

「知ってるか――俺たち初戦から負けたんだぜ」

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