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ヘヴン・グローリー  作者: kawa.kei


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「魔王」

 「ここはよく来たとでも言えばいいか? 人族の勇者よ」


 そういったのは黒い肌に蓄えた広い髭が特徴的な筋骨隆々とした男だった。

 魔王カイパーベルト。 奏多達が通された先に居たのは魔王で、特に警戒する事もなく体格に見合ったサイズの椅子に座っていた。


 一通り名乗った奏多達を見て魔王はふむと首を傾げる。


 「それで? 我が同胞を散々殺した貴様らが一体、何の用事でここまで来たのだ?」

 

 言葉こそ辛辣だが、口調には感情が乗っておらず淡々としていた。

 

 「……まずは我々と話をする場を設けてくださった事に感謝を」

 「前置きはいい。 貴様らが聞きたいのはユウヤの事ではないのか?」

 

 優矢の名前が出て奏多が反応したが千堂が肩を掴んで強引に抑える。

 その様子を魔王は冷めた目で眺め、小さく鼻を鳴らす。


 「勇者の自分達よりも強い力を持っていると妬んだか? それとも似た力を恵んで貰おうと我等に擦り寄りに来たのか? だとしたら話は終わりだ。 我々は貴様らを軽蔑し、薄汚い侵略者として処理してやろう」 

 

 明確に魔王の言葉と視線に怒気が乗り、それに巌本は委縮するがしっかりしろと自身を奮い立たせる。

 

 「違います。 我々は魔族が悪と人族の王から聞かされ、ここまで来ました。 霜原君の事は気になりますが、知りたい事は正しい情報です」

 「正しい情報? 初対面の俺の言葉を貴様らは信じられるのか? 嘘を言って貴様らを騙すかもしれないぞ?」

 「――ですが、聞かなければ分かりません」


 魔王はさっきから飛びかからん勢いで睨みつけている奏多を一瞥し、僅かに眉を顰める。


 「まぁいい。 それで? 何を聞きたい?」

 

 巌本は内心で胸を撫で下ろし、頭の中で纏めて置いた質問をぶつける。


 「まずは根本的な質問から。 あなたは勇者召喚についてどこまでご存知ですか?」

 「召喚の石板を用いて異界から呼び出す存在だ」

 

 即答。 まるで常識と言わんばかりに魔王はそう答えた。

 それを聞いて少なくとも魔王は自分達よりも多くの情報を持っていると確信。


 「では、勇者を送り返す方法をご存知ですか? 人族の王は魔族討伐の暁には我々を元の世界へ帰すと約束しましたが――」

 「無理だな。 確かに召喚魔法陣は異界から勇者を召喚する代物で、この世界と異なる世界を繋ぐ力を秘めているのだろう。 だが、アレは条件に合致した存在を呼び出すだけであって、特定の場所と場所を繋ぐ代物ではない」


 こちらも即答。 魔王ははっきりと無理だと言い切った。


 「少し考えれば分かる事ではないか? 特定の場所にしか繋がらないのであれば都合よく、貴様らのように強い力を持った勇者を呼べるわけがない」


 もっともな話だった。 そうでもなければ奏多達だけが勇者として召喚されるのは不自然だ。

 彼女達が人族に召喚されたのは魔王の言う通り、勇者としての条件に合致したからだろう。

 そして条件に合致しなかった者達はそのまま事故に遭った。


 つまり人族の王は奏多達を騙して戦わせ、用が済めば魔法陣を用いてこの世界から放逐するつもりだったのだ。 嘘かもしれないといった気持ちは湧かなかった。

 優矢と話してからずっと心に纏わりついていた疑念は魔王の言葉ではっきりと答えが出てしまう。


 ――あぁ、自分達は帰れないんだな、と。


 死んだであろう古藤にとってこの事実を知らずに済んだ事はせめてもの幸いかもしれない。

 帰れない事ははっきりした。 そして人族に戻れない事もだ。

 

 「では、次に霜原君について教えて頂きたい。 彼は我々に巻き込まれたと言っていましたが、そちらで召喚した勇者ではないのですか?」

 「……ユウヤか」


 魔王は僅かに悲し気に肩を落とした。


 「優しい子だった。 少なくとも理不尽に人生を狂わされていい少年ではなかったな」

 「では、彼の召喚は本当に我々に巻き込まれたという事ですか?」

 「会ったのならステータスを見たのではないか? 勇者であるなら貴様らと同様に適性に見合ったスキルとステータスが与えられるはずだ。 ……あったか?」

 「……いえ」


 これは巌本も確認した。 優矢はレベルこそ異様な程に高かったがステータスは低く、スキルは鑑定と言語共通化以外の一切を持っていないのは見ている。

 

 「ですが、レベルの高さは――」

 「あれは優矢自身が自らの力で生き抜いた結果だ」


 つまり優矢は何か特別なものを与えられた訳ではなく、自力であの域に至ったという事だ。

 

 「ならあの武器は一体? あなた方が与えたのでは?」

 「あぁ、あの免罪武装という武器か。 この国を訪れた時点ですでに持っていた。 恐らく放り出された場所で手に入れたのだろう。 ユウヤ自身にも知っているかと尋ねられたが初めて見る代物だったので詳しくは知らんとしか答えられなかった」

 「では彼はあなた達の制御下にあるのではないのですか?」

 「ないな。 どうなったのかは聞いているが何故そうなったのかは分からん。 恐らくは例の免罪武装の仕業なのは察しが付くがそれだけだな」

 「魔族はこの事態に対して何か行動を起こすつもりなのですか?」

 「特に何もしない。 今のユウヤが何を目的として動いているのかは不明だが、こちらに来るのであれば元に戻す努力ぐらいはするつもりだ。 ――まぁ、ほぼ確実に殺されるだろうがな」


 そこまでで我慢できなくなったのか奏多が前に出る。


 「どうやれば優矢は元に戻せるの! 教えて! 優矢はどうすれば――」

 「……そこまで難しい話ではない。 原因は免罪武装である以上、アレを破壊するか引き剥がせば正気に戻るかもしれない。 ――できる出来ないは別にしてな」

 「あんた達が操っているんじゃないの! 優矢には私がついていないと――」


 優矢に対しての異様なまでの執着心を見せた奏多を見て、魔王は内心で汚らわしいと嫌悪感を浮かべる。 優矢と情報を擦り合わせた際に精霊の話を聞いた。

 縁のある物が稀に引っ張り込まれると。 この執着を見れば優矢を世界迷宮の最下層に突き落としたのは間違いなくこの娘だろう。 尚も優矢には私が必要だ、私がいないと何もできない等といった妄言を垂れ流していたので呆れて溜息を吐く。


 「貴様がユウヤに執着している事は分かった。 ただ、その気持ちが一方的なものとは考えられないのか?」

 「ど、どういう事よ!」

 「知らんし、知った事ではない。 今度はこちらが訪ねる番だ。 これから貴様らはどうするつもりだ?」


 魔王の質問に即答できる者は居なかった。

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