お○ま様に摂り憑かれて…大嫌いな「将棋」が大好きになっちゃった!!!~中盤⑥ お○ま様思考~
真実は静かに「後手△35歩」と読上げた‥舞は「矢倉が…」と力なく呟いた…
半年間、父からは金矢倉しか習っていなかった‥何度も叱られ‥涙を堪えながら指していた…
勿論、流模から教わった事も多いにあったが、舞は金矢倉を組み棒銀で1筋から攻めようと思っていた…
金矢倉は相手も金矢倉で囲い、成立する戦法だと、父から教わっていた
流模からも居飛車と振り飛車の相性の悪さを教わっていて、勝つには研究を幾度と重ね、たどり着く者の成せる技だった
「矢倉に…」と再度呟く舞…「糞ガキ‥矢倉なんぞ、組んでいる暇は…多分ねぇぞ…」と扇子越しに田が言う
舞は、まだ諦めた訳ではない「船囲いなら一手早い‥でも…▲78銀の左美濃は出来ない…
▲48銀か…でもその時点で居飛車だ‥相性が悪い‥まだ5手目だと言うのに…」そう思い、唇を噛み締めた
「振り飛車にしろ金矢倉にしろ銀を上げなきゃ…」そう心に決めた、舞の選んだ手は▲68銀であった
真実は「先手▲68銀」と読み上げ終わると同時に、田は△32飛車と指す…
3筋を見据え、扇子で口元を相変わらず隠していた…舞は田の姿を見て「沢山指してきたんだなぁ…」等と思い盤面に目を戻す
それは見た目は二十歳そこそこの姿‥だが「往年の棋士」の風格と思考を感じさせていた…
真実は「後手△32飛車」と言う声が、向かい合った2人には、もう聞こえていない…
その他の「お駒様達」は、静かに見守る以外なかった…
田は、舞の思考を読んだ訳ではない‥「遠い所で喧嘩すんな‥もっと早い手を考えろ…」と独り言の様に囁いた
「私、1筋を攻めてどうするんだろうね‥遅い将棋じゃ負けちゃうね…」と、舞もそれに応じる様に答えた
舞は覚束無い手で68の銀を持ち、更に突き進めた
「先手▲67銀」と、真実が読み上げる‥外は土砂降りの雨に変わっていた…
※これまでの棋譜
▲76歩△34歩▲66歩△35歩▲68銀△32飛車▲67銀