03
図書館を出てから僕は冒険者ギルドを目指しているとある事に気付いた。
場所が分からない……
人に聞けば良いのだが如何せん恥ずかしがりやなもんでテヘッ
まあ、先ほどの中央広場に行けばいいかと気軽に考えながら僕は歩いて行った。
中央広場に到着すると噴水の近くに掲示板のようなものがあり、そこには様々な情報が書いてあった。
街の全容。手配書。迷い猫の依頼。ゴミ出しの日。etc…
小さなことから大きなことまで様々なようだが、まさかここから依頼を受けるのか?
僕が首を傾げながら掲示板を見ていると同じように隣で見ていた女性が右手を動かし明らかにメニューバーを操作する動きをした。
指でスワイプしながら一人でフムフムとうなずいている女性に僕は尋ねてみることにした。
「あの、すいません」
「ん?なにお嬢ちゃん……いや、少年か?」
「いちおう男です」
「おっと、それは失礼」
カラカラと笑いながら全然反省してないような声で謝られた。
「いえ、いいのですが…少し質問して良いですか?」
「おっと、ナンパかい?もっと大きくなってから……うん、違うね。何だい?」
「この掲示板からギルドの依頼を受けるのがこのゲームの基本ですか?」
「私も気になって今掲示板を確認したんだがどうやら違うみたいだね。
ああ、この掲示板ではなくサイトの方のね」
「サイトの掲示板?」
「ああ、メニューバーからここのホームページにだけ飛べるから、そこから掲示板を開くと……って、こんなの最近のゲームじゃ当り前だよ」
「すいませんVR自体はじめてなもんで…」
「……そう、だったら仕方ないね…お姉さんが手取り足取りナニ取り教えて…」
女性は優しく僕を慰めるようね声で話ながら何故か両手をワキワキさせながら近づいて来ると『ピー!ピー!ピー!』と何所からか音が鳴り出し僕の前に突然メニュー画面が開いた。
『ハラスメント行為が発生しました。通報しますか?Yes/No』
「ハラスメント?」
「っち!早い…はぁ~、まあ、いいか。で、何だっけ?ああ、ギルドの依頼関係だったね…
答えは違うだよ。
……ふむ、そうだ、君は冒険者ギルドに登録したのかい?」
「え?いいえ、これから冒険者ギルドに行って登録しようと思ったのですが」
僕は一応NOを選択しながら女性の問いに答えた。
「そう、だったら私もまだだから一緒に行こう」
「良いんですか?」
「ああ、初日だからどこも混んでるだろうし、道すがら色々教えよう。
迷惑かも知れないけど君には私の話し相手になってもらうよ」
気を使われたかな?
「ええ、よろしくお願いします。僕の名前はユウと言います」
「私はバルト。正式な登録名は長いからバルトだけでいいよ」
「分かりました。よろしくお願いしますバルトさん」
「ああ、こちらこそ」
手を差し出されたので握手しようとしたらまた『ピー!』と言う音と共に何故かハラスメント警報が出た。
◇◇◇
冒険者ギルドは中央広場より南側。最初に降りた船着き場と中央広場の間の位置にあった。
ひときわ立派な建物には外まで続く長い列がなっていた。
「やはり初日、予想通りだよ」
「みんなプレイヤーみたいですね」
長蛇の列に並びながら僕とバルトは今まであった事、といっても船での出来事ぐらいだが、話ながら順番を待った。
「…そうか、なるほど。どうやらプレイヤーのスタート地点はバラバラで始まるようだね。
私の場合は馬車でこの街に入った所からスタートした。
だけど掲示板での情報だと同じような馬車組の中にはイベントが発生したプレイヤーとそうではないプレイヤーがいるようだね。
何が条件なのかは分からないが…」
確かミーシャも言っていたな、パーティメンバーと時間帯がずれたかも知れないと
…しかしこれはプレイに影響あるのか?
最終的にはやはりこの街にたどり着くだけだし…
「ああ、そうだ掲示板と言えば」
「はい?」
「さっきユウちゃんが見ていた掲示板の依頼の話だけど、どうやら数人のプレイヤーは検証がてらクエストを受けたみたいだね。」
ちゃん付けって…
「―っで結果なんだが…
クリアしても何にも起こらなかったようだよ」
「何にも?報酬も貰えないんですか?」
「いや、報酬は書いてある金額、アイテムは貰える。だけどギルドの得点にはならないしBPの増加やイベントの持続なんかは無かったようだね。
……まあ、まだ検証段階だから無駄とは言えないけど…」
後半はなんとなく言葉を濁しながらバルトは言葉を切った。
「そうだね…ユウちゃんはNPCをどう思う?」
「?……そうですね。……人間ですね」
人間。自分で言葉にしながらNPCなのに、ゲームなのになぜかその言葉がしっくりきた。
「―ぷっ、あははは。そうだね、彼らはこの世界の住人で人間だ。」
いきなり笑い出したバルトに僕は自分がバカにされたと思ってムッとなりながら軽くにらむ。
「何なんですか」
「いやいや、いいんだよそれで……うん、それを忘れなければこのゲームを楽しく遊べるはずさ
それにさっきの話の答えでもあると思うよ」
バルトは何故かウンウンとうなずきながら自己完結した。
???まったく彼女は理解できない。
「ん?だいぶ進んだね」
いつの間にか列は建物の入口に入っていた。
建物に入ると入口付近には待合室となっていて、奥はカウンターがあり受付には職員らしき人間が座っている。やはり市役所だなと僕は思った。
「そうだ、ユウちゃん。先ずクエストを受けるなら薬草の採集関連がいいと思うよ」
「討伐などよりですか?」
「うん、そうだね、初日にこの人数。
たぶん数日でアレが起こるだろうからね…」
「アレ?」
「需要と供給は分かるかい?」
「はい、平均価格を割り出す方法でしたか」
「まあ、そうだね。だけど、この後起こる事は供給の問題……よし!ここはお姉さんがユウちゃんの色んなところを取って教え―――」
バルトがまた両手をワキワキとしながら近づいて来ようとするとバルトの両脇を白い鎧を着た二人がガシッと抱えるように押さえた。
「先ほど通報を受けた。君がこの子供に対して公衆良俗違反を行ったそうだな!」
「「えっ!?」」
突然現れた男は宣言するとバルトを引っ張って行こうとした。
「ちょっと待って!私はまだ何もしていない!!」
「それは自白だな!よし来い!話は事務所で聞く!!」
「ちょっと待ってください!」
流石に僕は慌てて止めようとしたが鎧の男性は僕の方へ向き優しい顔で
「もう大丈夫ですよ、安心してください。」
「え?いや、ちが――」
「ええい、放せ!私を捕まえても第二第三の属性持ちが表れるだろう努々忘れるなぁぁぁ!!」
「うるさい、連れていけ!」
「アッ―――!!」
「みなさんおかげで犯罪を未然に防ぐことが出来ました、ありがとうございます。ではッ!!」
鎧の男がビシッと敬礼して去っていくと後ろに並んでた数人のプレイヤーが同じように敬礼していた。
何これ?
◇◇◇
流石に無実で逮捕は可哀想なので訳を話したがバルトの取り調べは時間がかかるという事を言われた。
待っているのは時間を無駄にするだけだと思った僕は先に登録や依頼を受けておくことにした。
「すいません冒険者の仕事をしたいのですが?」
「はい、分かりましたこちらで請けたわります。ではこちらの水晶に手を置いて下さい」
水晶が出て来たので迷うことなく水晶に手を置いた。
「冒険者の説明を受けますか?」
「お願いします」
「分かりました。
冒険者のお仕事は主に依頼の受けることになります
そちらの掲示板から依頼の紙を見て貰い、受ける依頼を私たち職員に持って来て貰って受注してから依頼の始まりです。
依頼は様々あり書いてある条件を達成し私達のギルドの持って来て初めて依頼の完了になります。
依頼を完了した時点で報酬を受け取る事が出来ます。
依頼にはランクがあり最初の冒険者様はFから始まりそれからE、D、C、と依頼を受けて成功するごとにランクが上がっていきます。もちろんランクが高くなるごとに依頼は難しくなっていきます。
ランクが上がらなければ報酬の高い依頼などは受けられませんので注意してください。
以上が冒険者としての基本的仕事になります。何か他にご質問等ございますか?」
「同時に依頼は受けられますか?」
「はい、大丈夫ですが、依頼失敗はなるべく起こさないようにお願いします。
他にございますか?」
「いいえ大丈夫です」
「最後に冒険者カードを作るのに20コルいただきますがよろしいですか?」
何事もお金がかかるなと思いながら僕は20コル取り出した。
「はい、ちょうど。ではユウさんこちらをお持ちください」
「はい、ありがとうございます」
職員から冒険者カードを受け取り腰のポーチに入れた。
さっそく依頼で儲けてみようかと職員にそのまま聞いてみる。
「初めての人間でもできるオススメの依頼はありますか?」
「そうですね…今ですと『薬草採取』の依頼などどうでしょうか?」
さっきバルトも言っていたな。
「わかりました、それと討伐系をお願いします」
「そうですね……では、薬草採取と同じ場所で行える『ホーンラビット討伐』などは、どうでしょうか?」
「はい、大丈夫ですお願いします」
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依頼:Fランク
『薬草採取』
西の草原に生えている薬草を持って来て欲しい
0/20
報酬:200コル
※1個10コルで買い取り
依頼主:クーリー・クルル
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依頼:Fランク
『ホーンラビット討伐』
西の草原で大量に発生したラビットの討伐。
0/6
報酬:50コル
※素材の買い取り価格は別になります
依頼主:冒険者ギルド
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「どうでしょう?」
「ええ、そうですね…受けま」
依頼を受けようと思った瞬間自分のポーチにそこまで入らない事を思い出した。
「すいません、持てるポーチの容量がそこまで大きくないので入りません」
「そうなのですか?…こちらでバックの貸し出し、販売もしていますが?」
「あ、そうなんですか」
「はい、小さいのでも構わないのでしたら5コルで貸し出しできます。
販売だと100コルですね」
「では、売って下さい」
後々必要になるだろうし、あとで買うよりはいいだろう。
バックを受け取るとそのバックはショルダーのようになっており、槍の邪魔にはならない作りだった。
中の容量は50個のスットクがありポーチの倍は入る。
これで小さいと言うのであれば大きいバックはどれだけ入るのか。
「ではユウさんお気を付けていってらっしゃいませ」
「はい、ありがとうございます。いってきます。」
◇◇◇
この街のフィールドに出る出口は四か所ある。
中央広場のを中心に東西南北で僕とミーシャが船から降りたのが南。
僕が泊る宿、シルビナの宿が北。
今いるのが西の門の前。
で、まだ行ってない東と
実質南の船着き場は船に乗らなければ外に行けないから三か所か。
つまり初日に外に出て戦うプレイヤーは三か所に分散されるはず。
されているはずである。
多いわー、人多いわー…
何人このゲームをプレイしているかは分からないが見渡す限り人人人…
西側にみんな来たのかのような混雑具合。僕が言えた義理じゃないが他に行けばいいのに…
う、酔ってきた…
僕はなるべく人がいる場所を避け奥へと歩いて行った。
人がいなくなってきたので、先ずは薬草の採取をしようと思った。
スキルに《鑑定》があれば見分けがつくだろうと一房抜いてみる。
【素材:雑草】 レア度0 重量0 品質3
『説明:どこにでもめげずに生える草。君も負けずにがんばれ』
「やかましいわ!」
品質が少し良いのがさらにイラつく。
雑草を叩きつけた後、僕は薬草を探そうとそのまま次々抜いて探し続けた。