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02

ミーシャと乗船員の傷を回復をして回ったその後は何事もなく『アルファス』の街に僕達の乗せた船は到着した。

回復の支援をし終えた僕とミーシャは、ムキ兄さん事グランデに別れの挨拶に向かうとたいへん感謝された。

ムキ兄さんに聞いた話じゃ、あの黒いモンスター『テンタクルス』はタコのような姿らしくめったに出会わないが出会った場合は船を転覆させるモンスターらしい。

今回は運が良かったとムキ兄さんはさわやかスマイルをゆがませながら語ってくれた。


僕とミーシャに「今はこれしか渡せねえが受け取ってくれ」とムキ兄さんは多少強引にアイテムを僕たちに渡した。

力では勝てず、僕たちは「ありがとうございます」と言ってアイテムを受け取る事にした。

どうやらこれはイベントの報奨金かな?

いきなりのイベントで運が良いのか悪いのか。


ムキ兄さんはこの後荷降ろしの仕事があるらしく僕たちは別れの挨拶を交わし、その場を後にした。


いきなりのイベントでなんとなく二人で歩きながら街の中央広場へと向かいながら話していた。


「私はこれからパーティメンバーと会う予定だけどユウはどうするの?」

「僕は予定通り目的の場所へ向かいます」

「そう、ユウさえ良ければ私たちのパーティに入らない?まあ、私だけで決められることじゃないけれど……どう?」


ミーシャは上目使いに僕に聞いてきた。

女性の上目使いは卑怯だと思いながら僕はミーシャの誘いを断った。

僕の目的は冒険ではなくあくまで本にあるし誘われても邪魔になるだろう…


「いいえ、申し訳ありませんが僕の目的はパーティには向かないと思いますので…すいません」

「うんん、私の方こそごめんなさい。無理やり誘ったみたいで…

あなたとの船旅面白かったわ、また一緒に冒険しましょう」


ここでミーシャとはいさよならは少し寂しいな。そうだな…


僕は[別れもまた人生、さよならバイバイ]と思いミーシャと別れることにする。


「うん、僕も楽しかった。また会った時にでも一緒に冒険しましょう」


「じゃあね!」と僕は手を上げミーシャと別れた。

ミーシャはどこか寂しそうな顔をして「うん、バイバイ…」と小さく手を振り別れの挨拶を交わす。

仕方ないと気持ちを切り替え走って行った。



   ◇◇◇



中央広場付近から当てもなく走り続けた僕は自分の愚かしさを呪った。

せっかく分かっていた道からズレ当てもなく走る事の意味のなさに

「まいったな」と思いながら走るのを止め辺りを見渡すといくつかの店が見える。

商店街と云うには閑散としていて、人がいないかと思えばそうではないようだ。


僕は辺りを見渡しながら頭の中で地図を描き、辺りをキョロキョロ見渡している。

周りから見たら田舎者丸出しだ。

いや、初心者か?

静かだ。

他の人がこの場所に来たら気持ち悪いと思うかも知れないが僕にとっては落ち着いた場所に感じる。

いくつかの店を素通りしながら歩いて行く。

どの店が何の店だか分からない、なぜなら看板に書かれた文字が全く読めないのだから。

プラプラ歩いているとベットのマークが描いてある店が見えた。


ベットの下には文字が書いてあるが…さすがにエッチなお店じゃないだろ……

しばらく拠点にするのであればどこかしら寝る場所に泊まらなけばならない、少し早いが宿の確保をしておこうとベットの絵が描かれている店に向かった。


店に入ってみるとそこは狭く、正面にはカウンターがあり、右は食堂らしくいくつかのテーブルが並んでいて、左には上へと続く階段がある。

店には客も従業員も誰も居らず流行ってはいないらしい

どこかの飲食店みたいな作りで泊まれるのかどうか分からない。


「すいませーん。どなたかいらしゃいますかー」


僕が声を上げて誰かいないか呼ぶと奥から「あいよ」と声が聞こえ背の高い大柄の女性がだるそうに現れた。

一瞬男と間違えそうな風貌で、男前な顔をしてるが胸も大柄だ。

年のころは40過ぎだろう、しわが見える。


「…いつまで人の顔を見ているんだい」

「すいません」


人の観察しすぎたのを指摘され流石に悪いと思い素直に謝った。


「そうだ、ここは宿屋ですか?」


本来の目的を思い出し確認してみることにした。


「当り前のこと聞くんじゃないよ」

「…すいません」


さっきから謝ってばかりだなと思い、もう別の宿を探した方がいいのかと思った時に女性の方から声をかけてきた。


「っで泊まりかい、それとも食事かい?」

「え?ああ、泊りでお願いします」

「…いいのかい?」

「……?何か不都合が?」

「あんた新人種だろ?」

「ええ、そうですが、それが?」

「はぁ~、…あんた知らないって事は外から来た異邦人かい」

「はい、田舎のモノです」

「普通新人種は私達、ドワーフの店には泊まらないもんなんだけどね…」


……ドワーフ!?いや、ドワーフって本来もっとこう…背が低かったり…

まあいいか、しかし種族差別とかあるとはアイルから聞いてないな。自分で感じろって事か?

それとも単純言い忘れか………うん、そっちの方がありそうだ。あのうっかり執事には。


「っでどうするんだい?」

「え?ああ、泊りでお願いします」

「…夕飯付きで一泊20コル。先払いだよ」

「あ、はい。お願いします」


この金額が高いのか低いのかは分からないが、腰に付けているポーチに手を入れ金額20コルを出し、女将さんにお金を渡すとカギを渡され部屋へと案内された。


「ないと思うけど物を壊したりしたら弁償、外に出る時と夕飯を食べる時は一応声かけな」

「はい分かりました。お世話になります」

「ああ、ゆっくり休みな」


女将さんがそう言って出ていった後、僕はベットに腰を下ろすとやっと一息ついた。

部屋の中にはベットと机があり、その上に水差しがあるだけの簡素な部屋、僕は水差しから水を一杯飲むと「フウー」と喉を潤し次はどうするか考えさっさと目的の場所、図書館を探そうと決めた。


部屋から出て女将さんに一声かけて出かけようと僕は「すいませーん、女将さーん」と声をかける。

すると先ほどと同じように女将さんが奥から出てきた。


「どうしたんだい」

「さそっく外を見て来ようと思いまして」

「そうかい。それと私は女将って呼ばれるのは嫌いだよ。シルビナって名前があるんだ、そう呼びな」


えっ?シルビナ似合わな…


「何だい?」

「いいえ!?何でもありません!!」


語尾にサーが付きそうな勢いで首を振った。


「申し遅れました、僕はユウです」

「そうかい、っで夕食はどうするんだい」

「はい、帰ってきてからいただきますのでお願いします」

「わかった作っとくよ」

「そうだ図書館はどこにあるか分かりますか?」

「だったらまず中央広場を目指しな、そこから西に向かえば着くよ」


…やはり中央広場から行った方が早かったか…それはそうと


「…すいません、中央広場はどう行けば…」

「…はぁー、ここは北の住宅街だよ、そのまま南に行けば中央広場さね」


また呆れられた、そりゃそうか何にも知らないんだもんな。失礼失礼。


「ありがとうございます」

「気をつけて行っておいで」

「はい、行ってきます」


僕は女将のシルビナに挨拶をし出ていった。


(そういえば行ってきますなんて言ったのは久しぶりだな…)


いつも叔父の方が出ていくのが早いので見送られるの久しぶりだなと思い。

挨拶を交わし僕は目的地へ目指した。




   ◇◇◇



そのまま中央広場へ向かい今度は問題なく到着。

中央広場は様々な人が歩いていた。

おそらくプレイヤーが多いかな自分と同じ格好した人が待ち合わせしていたり話していたりする。

おそらくと言うのは僕には判断できないからだ。

先ほどの宿屋のシルビナや船員グランデもそうだがNPCがあまりにも人間らしい。

昔の村人Aのように何度聞いても同じセリフを返していくキャラはいない、これで決められたセリフを言っているようならものすごいセリフの容量であり、僕がどれだけ読まれやすい思考回路しているのかという事になる。

ラジカセからセリフが飛び出したら超COOL!


ノンプレイヤーキャラ(NPC)プレイヤー(PC)の違いは、スキルの《識別》を取得し確認しなければ分からないだろう。


そう言えば先ほど別れたミーシャはここが待ち合わせ場所と言っていたが、まだいるかと周りを見渡すがいないようだ。

ちゃんとパーティメンバーと会えたのかと少し心配したが、自分よりちゃんとしているミーシャが自分のような迷子になるわけないかと自分自身を納得させ僕は図書館へと足を進めた。



    ◇◇◇




シルビナに聞いた道を歩いて行くとひと際大きな建物が見えてきた。

先ほどの宿屋と同じように看板が掛かっており、よくわからない文字と本の絵が画いてある。

おそらくこれが図書館だろう。これで本屋ならとんでもなく大きい大型書店だ……そいつはステキだ……


素敵な夢を見ながら僕は夢遊病者のようにふらふらと建物の中に入ると目の前に受付があった。

受付の後ろには本棚が並んでおり僕は砂漠でオアシスにたどり着いた旅人のようにフラフラと本棚の方に歩みよって行ったが受付の司書さんに止められた。


「すいませんギルドカードの提示をお願いします」

「へ?ギルドカード?」

「……はい、図書館をご利用していただけ場合は身分証明書の提示が必要になります」


聞いてないよ!


「…それはどこで手に入るのですか?市役所」

「?お客様は異邦人ですよね?でしたら冒険者ギルドがよろしいと思います」


テンプレな名前のギルド名を聞いた。


「分かりました!すぐ作ってきます!!」

「あ!お持ちください!!」

「え?はい?」


僕はすぐに作ろうと走り出すポーズのまま固まって司書の方へ顔だけ向けた。

僕の方を見てなぜか司書さんは半眼のまま一度咳払いをして再度話し始めた。


「…ゴホン。いいですか、冒険者カードが作れてもすぐには図書館のご利用はできません」


え?何故?why?


「図書館内には様々な知識が置いてあります。

それらを閲覧するには危険な行為をしないと言う信頼が必要になります。

ですのでギルドランクE以上の方から順々に閲覧できる本が増えていきます。

最初に登録してもランクはFからなのですぐには図書館に入れません」


……な……ん……だ……と………

読めない。ここまで来て?餌を目の前に「待て」と言われおわずけ喰らっている犬の気分だ。いや、負け犬だ。

僕は膝から崩れ落ちorzの形を再現することになった。


「…えっと…大丈夫ですか」


………………くふっ………………

………………うふふふふふふふふふ

いいぜ、運営そんなに僕の邪魔をしたいならすればいいじゃないかその全てを攻略して図書館の本を、いやこの世界全ての本を読んでやる。

これでしょうも無い事が書いてあるならわかっているな。


「はーははははは」


ちなみに司書さんは僕がいきなり笑い出したのに「ヒッ!?」って言いながらドン引きしていた。


「ごめんなさい」

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