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休憩として用意されたのはテントだった。


「これは?」

「テントはまだ使った事は無い?」

「ええ…」


リアルの方じゃないよね?この世界では無いな。


「セーフティーゾーン」

「そう、このゲームは外でのログアウトは全て死に戻り扱いだけど回避する方法はあるの、その一つがこのテント。

このテントは結界のようにモンスターを寄せ付けないだけじゃなく、寝ればこの場所でログアウトが出来ると言う優れもの……まあ回数が決まっているんだけどね」


ほー、これは買っておけば、あの時のような悲しい死に戻りが起こらないな。あれは悲しかった。

でも、お高いんでしょ~?


「いくらです、これ?」

「10,000コル」


……本当にお高いんですね?前振りでしたよ今の。


休憩と言ってもみんなログアウトするわけじゃなく携帯食料やポーションを飲んだりと思い思いに行動している。

なので僕も勝手気ままに過ごしたい所なのだがまたもやSPが無くなりかけている。

僕は鞄から料理キットを取り出し料理の準備をする事にした。


昼前なのに、今日のユウごはん。

本日は何かの魚、はい名前は知りませんので《鑑定》してみましょう。


【素材:アドハニハホイホイ】レア度1 重量1  品質3

『説明:白身で淡白な海水魚。美味くするのは君しだい』


うん、《鑑定》しても分からないね。

何この名前?なめてる?なめてるの?あはーん?

後説明、仕事しようよ、最近仕事ほったらかしじゃん…前からか。


この前市場にで買った商品の数々、実はあそこで新たな発見をした。

リンゴを袋で買った事を覚えているだろうか?

あれが新たな可能性のヒントだった。実は持ち物はまとめられる。

今まで薬草を200スロットいっぱいに入れたり、僕の鞄50スロットにバラバラに入れていたが実は重量10までは1個としまとめる事が出来るようだ。

これで食材の材料をかなり軽くできた、しかしポーチの方は別らしくまとめる事が出来なかった。

すぐ使うのならポーチに入れ、時間がかかるのは鞄と分けてまとめている。


さて料理の続き、先に鍋に水を入れ昆布で出汁を取るために火をつける、その間に野菜と魚を切る。

野菜は白菜、ネギ、ニンジンと比較的の簡単に手に入れた物、そして問題キノコ。

一応《鑑定》はしておいて毒は無さそうなんだけど見た目が悪い。食べたら1upしそうな色合いだ。

まあ、何事も経験。キノコを適当な大きさに切り投入、魚は三枚におろし、一口大に切り投入。


魚をおろす時気付いたが全ての血の表現、内臓などは光の粒子として処理されるらしい、これは僕が未成年で倫理コードに抵触するからであろうか…


鍋が煮えてきた所に魚醤で味を付けながら塩で調整していく、魚醤はもっと臭みが強いと思っていたがそんな事はなく、魚の匂いを引き立てていた。

味見をし僕が「うん」と頷き顔を上げると他のパーティメンバーが全員お椀を持って待機していた。

ジーク、ミーシャがニコニコしながら、カナン、アースは無表情で。アース、君は違うと思っていたよ。


「美味そうな物は皆で食べるべき」と言うジークのリーダー発言によりみんなで食べることになった。まあ、いいかと僕はみなのお椀によそい配って行った。


「うん、美味しいよユウ!」

「ああ、料理はこうでなくては…」

「悔しいわ、なんで《料理》持っているのに私はこうできないんだろう…」

「ん、リアルスキル。」

「くっ…」


毒舌さんが居たり、くっころさんが居たりと、思い思いに感想を述べていく中、そんなに悪くは無い感想に僕はホッとしながら料理を食べる。

水煮や寄せ鍋のように具材を切って煮ただけだが悪くはない。もっと色々な魚介類を煮込めば野性的なブイヤベースが出来そうだが今回はこの辺だな。

米が欲しくなるが今の街では見てはいない。育てなくてはいけないのか、それとも違う場所にあるのか…

たしかスキルに《農耕》などがあったが…いや、僕の目的とは、ズレている関係ない。


食事も終わり自分のステータスを見ると僕のSPは回復していた。

みんなもそうなのか、SPの空腹値が異様に減る速度が速い、何でだろうか?

それより気になるのがBPがまた増えている、今回増えたBPは前回に比べ半分の10だが新しいスキル取れそうだ。どうする?取っちゃう?

僕はスキルを[取る事に決めた]

そうだね…やはり《ダッシュ》は欲しいね、取得に必要なBPはちょうど13。また取得BPが増えているが取れない事は無い。僕は迷うことなく《ダッシュ》を取りスキルスロットにセットとした。

《調合》外すとDEXが下がるな…その分AGIが上がる…何事もバランスだな。

《料理》か《鑑定》外す?《料理》はそこそこステータスに影響あるが《鑑定》は今使えなくても別にいいか…いや、何かに使えるかも知れないから《調合》しておきましょう。


そしてもう一つ、《風魔法》がLVが上がり新しい魔法を覚えた。

『ウィンドエンチャント』

風をかける?風でうっとり?…下ネタ?違うか…

風の耐性を上げる魔法だろうか?

僕が悩んでいるとミーシャから「どうしたの?」と声が掛かった。


「いえ、新しい魔法を覚えたのですが…」

「へー…エンチャント系?」

「そうです、『ウィンドエンチャント』ってなっています」

「ああ、《風魔法》取っているのね。確かそれはAGI値を上昇させるバフよ」


も~う、また専門用語?バフってなにさ、どんだけあるのさ?どんだけー!


「バフって言うのは自分や相手に能力の上昇を促す効果を与える方法ね。アイテムでもバフと言われるわ」

「つまりこの魔法を使うとAGI値が上がり速度が上がると…」

「そうね、他の魔法もそれぞれLVが上がるとエンチャント系を覚えるわね」

「《闇魔法》は別」

「ええ、《闇魔法》の場合はデバフと呼ばれる阻害系魔法を覚えていくようね」


ミーシャの説明にカナンが補足をする。

まあ、自分を強化するのがバフで敵を弱くするのがデバフでいいのかな…


休憩も終わり戦闘をしながら魔法を試しながら進むことになった。

うん、早くなった気がする……が正直分からん。

どうやら『ウィンドエンチャント』は劇的な変化は起こらないようだね、AGI値が同一で足の速さが一緒の人と走れば分かるかもしれないが、0.01秒早くなっても誰も計測してないなら分からないLVやで。

持続時間はだいたい10分ってとこかな、それが無くなればまたかけるを繰り返す。

他にもジークの『ファイアエンチャント』でSTRを上げ、アースの『アースエンチャント』でVIT値を上げていく。…アースって名前かぶってね?

カナンはデバフらしく相手がいないと使えないし、ミーシャにも一応あるらしいがMP温存の為控えている。

僕たちは魔法系のスキルを上げながら進んで行くとある異変を見ることになる。



   ◇◇◇



カナンの《警戒》に反応があったようで僕たちを止めるが何も言わない。

それを心配してアースがカナンに確認を取る。


「…どうした?」

「……反応はあるのに見えない…」


どういうこって?

見えるのに、見えないこれなーんだ。みたいな謎々。

皆がカナンの言葉を聞き警戒して辺りを見回しているので、僕は見えないものを見ようとして単眼鏡を覗き込んだ。

……見えた…星空ではない、何か…

確かに狼などを確認しようと地上を見ていれば気づかないかも知れない。そこには異常な光景が浮かんでいた…いや、浮かんでいたのは狼だった。


「狼って空飛ぶんですか?…ジャンプとかじゃなく…」

「「は?」」


僕の言葉を聞いて最初に気付いたのはミーシャだった。ハッと気づき僕が見ていた場所を見て固まる。

確か彼女は単眼鏡と同じ効果のあるスキル《遠見》を持っていた。

僕は疑問を浮かべているアースに自分の単眼鏡を渡すとさっき見た場所指さした。


「何アレ……」

「…確かに浮いているな…バグか…いや、そうじゃなければあそこが原因なのだろうが…」


数十匹の狼が空中に浮いていた。木に跳びついたとか、そう言った物じゃない。その場だけ時間が止まったように空中に浮いたまま動いていなかった。

この世界がゲームと分からなければ異様な空間、いや、ゲームでも異様か…アースの言ったバグって言うのはあながちはずれではないのかもしれない…


「どうするジーク…」

「……調べよう」


ジークが最後に単眼鏡を覗き見て決断する。


辺りを警戒しながら進むとだんだんと肉眼で狼が見えてきた、やはり浮いている、僕は何かの魔法にかかっていて幻を見ているのではないかと思ったがステータスに異常は無かった。

近づいて上を見上げれば狼たちはまったく動いていない、いや、お腹から光の粒子が見えている事はダメージを受けているのか…絶命しているのか…

僕がさらに近づこうとするとカナンの「止まって!!」という大きい声が聞こえた。

皆カナンの方を向き動きを止めると同時にミーシャの「キャァァ!」と言う絹を裂く叫び声があたりに響いた。

ミーシャの方を向けば彼女は狼たちのように逆さになり空中に浮かびじたばたと激しく動いていた。


「ミーシャ動くな!」

「これは、糸…」


近づかなければ分からないような粘着性のある透明な糸があたり一面に張っていた。

これが狼たちが空中で止まっている原因なのだろう…


「ミーシャ待っていろ!」


ジークが剣を抜き糸を斬ろうとするが粘着性のある糸は剣を通さず、剣を取り込もうとさえする。


「ジーク、魔法で焼き切れ!」

「分かった!」


ジークの持つ《火魔法》ならばとアースが助言しジークが詠唱を始めた時、空が暗くなった。

…夜?いや、時間は確かまだ昼を過ぎたあたり…

空を見上げると空中で巨大な物体が太陽を隠し日の光を遮っていた。

逆光でも分かるそれは、八本の足を持ち、今までの糸で推察できる。

蜘蛛…しかし現実で見る蜘蛛とは明らかに体積が異なる。

僕たちの大きさを越え、倍以上はある大きさ…現実で見たら、建物の三階に届くんじゃないか?

僕たちは唖然とその大蜘蛛を見上げている中、最初に意識を切り替えたのはアース。


「カナン、ユウ。牽制!深追いはするな。ジーク!ミーシャの救出を優先!」

「お、おう!」「ん…」「はい」


それぞれの返事を聞きながらアースが盾を構え『タウンティング!』と叫び、自分に敵モンスターの意識を集中させる。

僕とカナンは《ダッシュ》で大蜘蛛に近づくと攻撃を開始しようとするが相手はほとんど上空に居て攻撃などは当たらない。

カナンが詠唱し『ダークブラインド』と大蜘蛛に向かい魔法を発動する。黒い霧が相手の顔の部分、目にまとわりつくのが分かる。

これが《闇魔法》のデバフなのだろうか。

恐らく目を暗闇で覆い見えなくする魔法なのだろう。

しかし大蜘蛛の目は八つありカナンの『ダークブラインド』では全ての目を包む事は出来なかった。


下から攻撃しても届かないので、僕は近くの木に《跳躍》で跳び乗り大蜘蛛に向かい再度《跳躍》し突こうとするが届かず、さらに大蜘蛛の異様な速さに避けられる。

大蜘蛛は下に降り、アースに向かって前足で振りかぶり思いっきり叩くように殴りつける。

盾のカァン!と言う音が鳴り響きながらアースは盾を両手に持ち唇を噛みしめ足を踏ん張る。後ろに下がった場合、それは救出中のミーシャやジークの命が危なくなる。


僕とカナンは降りてきた大蜘蛛に《跳躍》しながら攻撃を当てようとするが、大蜘蛛の体は大きく、他の足が邪魔をして思うように攻撃は当たらない。


「足から狙う!」

「分かりました」


カナンの提案に僕は返事をし近くで見ると気色の悪い大蜘蛛の足の関節部分、附属肢から攻撃していくことになった。一発目に『疾風突き』を放ったが附属肢の関節部分は硬くたやすくは刃を通さない。


「すまん待たせた!」

「ごめん、お待たせ」

「ジーク《火魔法》で攻撃、ミーシャ支援頼む!」

「「了解!」」


アースが大蜘蛛の攻撃を受けながら仲間たちに指示を出す。

ジークが詠唱しながら大蜘蛛に近づき『ファイア!』と叫ぶと右の附属肢が大きな火を上げ燃える。

「ピシャァァッァァァアアア!!」とダメージを喰らった大蜘蛛は大きく鳴き、他の足をジタバタと動かし暴れる。


「よし、効いたぞ!!」

「ジークそのまま魔法、カナン、ユウ、攪乱(かくらん)しジークに攻撃させるな、ミーシャ維持」

「「「おう!」」」


僕とカナンは大蜘蛛の足を避ける事を主に置き、ジークに攻撃が行かない様にする。

このままジークの《火魔法》で大蜘蛛のHPは削れるだろう。

油断したつもりは無かったが僕の体に糸が巻き付いた。糸をたどれば大蜘蛛の尻から糸は伸びている。


「くっ!」


暴れようとすると余計粘着力のある糸がからまる。


「ユウ動くな!」


ジークが僕の近くに来て糸を魔法で焼き切る。


「助かりました」

「どういたしまして。しかし、やはり戦闘中に糸を吐くんだな…糸を吐き出す前に倒すぞ!」

「はい」


ジークが魔法を使って大蜘蛛の足を燃やした時異変は起こった。

いや、当り前の事なのだろう。

足にダメージを与え、大蜘蛛はバランスを崩しそのまま体を地面へと着けた。アースを道連れにして。

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