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「なんだ、知り合いか?」

「この前話したでしょ。最初のスタート地点が同じだった子よ」

「ああ、そう言えば…そうだっけ?」

「ハァー…まったく。ところでユウ、久しぶりね…と言ってもまだ三日前か」

「ええ、お久しぶりです。ミーシャさん」


ミーシャはジークと呼んだ赤髪の男の返答に呆れ、改めて僕に話しかけた。

そうだ、忘れないうちの確認しておこう。


「不躾な質問ですがミーシャさん、船の時ノープリウスの殻いくつ手に入れましたか?」

「ん?…何で?」

「いえ、確か僕たちの倒したのが四匹なのに僕の方に素材が三つ入ってたので気になったもので…」

「ああ、そういう事。気にしなくていいわ。確かに私の方が少なかったけど、パーティメンバーの中にイベントスタートした子もいたから」


ぬ…やはりミーシャの方が少なかったか。気にするなと言っているが借りた恩は返せとじーさん言ってたし…む~


「うんうん、やっぱりいい子じゃないか。ドロップアイテムの配分を気にしているなんて」

「え?あ~…」


やべ~…使ってもう無い、何て言えない雰囲気になって来たぞ。どうしてくれんのヒーロー…べ~わ~…


「本当に気にしなくていいのに……そう言えばやりたい事って終わったの?」

「え?いいえ。それが冒険者ランク上げないといけないようで…」

「ああ、そうなの…へーそうなの…じゃあ行きましょうか」

「ん?」


何故かミーシャが悪い顔をし僕の脇に手を入れ言ってきた。

え?何?ドキドキしちゃうじゃない。

ドキドキしているとヒーローが僕の逆の脇に手を入れてきた。

え?何?イライラしちゃうじゃない。


「そうだな行こうか」

「あれ?なんで二人で僕の腕を抱えているんですか?」

「「いいから、いいから」」


僕の両脇を二人で抱え拘束する様に腕を組み、どこかの宇宙人を確保したときの絵面だ。

そのまま僕は引っ張られるように冒険者ギルドへ連行された。

ダメよ~ダメダメ。



   ◇◇◇



冒険者ギルドに入れば掲示板前に二人の男女が居り、ミーシャが「おーい」と呼ぶと、こっちに気付き、彼らは振り向いて僕を見て疑問を浮かべる。


「やっと来たと思えば……なんだそれ?」

「拾った?」


それでゴメンナサイ。どこかの犬みたいに拾われてゴメンナサイ。


「違うわよ!前に話したでしょ、船で一緒になったユウよ」

「ああ、聖女だ」

「そうか」


いやいや、ジークの方には納得しないでよ。

男の方は鎧を着ており、女の方は僕の服と同じ初心者装備だが少し改造しているようだ。


「初めましてユウと言います」

「初めまして?…まあいい、アースだ」

「ん、カナン」

「俺、ジーク英雄になる男さ!」

「所で何故ユウを?」

「前に一緒に冒険の約束したから連れてきたの」

「そうか」

「あれ無視!?冷たい、アース冷たい!!アースなのにアイスみたいだ」

「所で何の依頼受けるか決めた?」

「そうだな…これなんてどうだ」

「放置!!」


ジークの事を無視し三人がどんどん話を先に進めていく。

これ僕が慰めたり相手をしなければいけないのか?

めんどい!ジークめんどい!!

てか僕、なーんにも聞いてないんだろけど…


「ん?調査依頼?」

「ああ、西の草原から森にかけての調査だ」

「ほらユウもこっちに来て、そんなの無視して」

「え…うん」


すまぬジーク


==========


依頼:Eランク


『西の草原生物調査』


西の草原で大量に発生したホーンラビットの生態系調査。

最近異常繁殖したホーンラビットが何故増えたのか調査して欲しい。




報酬:4000コル

※素材の買い取り価格は別になります


依頼主:冒険者ギルド


==========


ほー調査依頼…で、これ僕も受けるの?


「……これ僕も受けるのですか?」


僕が質問するとミーシャがわざとらしい声を出す。


「…ああ~、素材が全てユウに行くなんて悲しいわ~。悲しわ~…」


チラチラとこっちを見ながら悲しそうに口元を隠しながら言って来る。笑ってません?ミーシャさんそんな性格でしたか?でもノープリウスの素材の話をされると困る。なぜならすべて使ったからだ、あの時の僕を殴りたい。


「でも僕のランクFですけど受けられるんですか?」

「それは大丈夫よ。パーティメンバーの中にEが一人でもいれば受ける事は出来るから」


ふむ…でもな~。パーティとかね~。何か恥ずいし~。断っちゃう?


「ちなみにギルド貢献ポイントはFランク依頼の倍以上よ」

「やります。当り前じゃないですか。何言ってるんですか?断るなんてそんな事あるわけないじゃないですか。ははははは」


いやだなー断るなんて言ったやつ何なの?ははははは。


「…いや、いいんだけど。じゃあ、さっそく受けましょう」

「「「おう」」」

「……おう」


うん、他人とのノリはいまいち分からんけど。



   ◇◇◇



「ホーンラビットの調査依頼なのに森に入るんですか?」


僕たちは現在森の中に居る。先日の狼が出て、高い品質の薬草があった場所。

確かホーンラビットの生態調査のはずなんだけど?


「ああ、そうだ。ユウ、お前はこのゲーム。この世界のモンスターはどう出てくるか分かるか?」


僕の疑問に返答したのはアース。だが答えを言わずそこからさらに違う質問をしてきた。

モンスター?そりゃ……どうなんだろう?普通のゲームだとリポップし無尽蔵に湧き出てくる。

だけどこの世界は違うのか?この世界に四日ほど居るがどうなのか知らない…たしか薬草は無くなっていたが…


「食物連鎖。色々言い方はあるがこの世界はモンスターは恐らく無尽蔵では無い。」

「私達が前にやっていたゲームでもそうだったんだけど、AIの進化は新たな世界の構築を限りなく再現したの」

「ああ、PAOだな」

「生態系があり、今回の場合はホーンラビットの異常繁殖だ。恐らく近くのモンスターがホーンラビットを本来食べ、その異常さを食い止めなければいけないが…」

「だから俺たちはその…食物繊維?を知らべなくちゃいけない訳よ」

「食物連鎖ね」

「ああ、草原の先の森。つまりワイルドウルフの方に問題があるのではないかと思ったわけだ。」


ふむ、最近のゲームは凝っているな…でも狩りつくしたらそのモンスターが出ない何て他の人達に迷惑になるんじゃないのかな?

例えば初心者が最初に倒す敵、ホーンラビットを狩れなくなるとだいぶ困ると思うのだが…


「ああ、大丈夫。普通狩りつくすなんて出来ないから」

「ああ、あれは酷かった…ユニオン集団で三日かけてどうにかできたからな」

「ユニオン?」

「パーティとパーティが組んだ集団だな。このゲームでも出来るんじゃないか?」

「そうね、まだ誰もやってないと思うけどレイド戦になれば自ずと掲示板で組むことになるでしょう」


うむ、まったく分からん。レイドって何ぞや?パーティでも少ししんどいのに更にユニオン何て地獄みたいなものがあるのか…

よし、これが終わって図書館に入れたら引きこもろう。


「話がそれたな、つまり今回はワイルドウルフの調査かそれ以上のモンスターの調査と思った方がいい」


アースが話を軌道修正し全員がうなずくと話は終わった。



   ◇◇◇



「止まって…」


僕たちが進んでいくと先頭のカナンが手を上げ僕たちを止める。何かを見つけたようだ。

カナンはこのパーティで斥候役。他のゲームだと盗賊などの役割でモンスターや罠の発見などを主にやっていく役目。

恐らくスキルに《警戒》や《識別》や《解除》などを取得しているのだろう。


「ん…ワイルドウルフ三体」

「…そうか、今回は見送りたい所だがその前にパーティ連携をユウに見て貰う」

「僕は参加しないのですか?」

「ああ、いきなりは難しいだろう。今回は見学してもらって、次から中衛遊撃を頼む」

「はい、分かりました」

「よし、見ていてくれユウ。俺の雄姿を!!」

「はいはい、行くわよ」


前衛にジーク、アース。後衛にミーシャ。遊撃にカナンの編成。

盾を持つアースが『タウンティング!!』と叫ぶと狼が三体アースに襲い掛かる。

『タウンティング』?『パワーバッシュ』は?

知らないアーツだが《盾》のアーツなのだろう、左手の盾で狼を上手く捌きながら右手の槌で牽制する。

狼の攻撃が全てアースに行っているその間にジーク、カナンが《ダッシュ》で狼に近づき攻撃を開始した。

一撃狼に入れるたびに狼の攻撃対象が移りそうになるが、アースが『タウンティング』と叫び攻撃対象を自分に移す。

そうか攻撃対象を自分に向けるアーツなのか。

僕には必要ないがパーティメンバーの盾役には必要なアーツなのだろう。

ミーシャが前の時のように弓の攻撃でフォローをしつつ、時折アースに対して『ライトヒール』と回復をかける。


カナンが一匹の狼の首に剣を刺し。ジークが狼の腹を斬り上半身と下半身に分ける。

盾に攻撃をしていた、狼はもう残り一匹になっておりミーシャの矢が当たると動きが止まり、その隙にアースの槌が狼の頭部に下ろされる。

攻撃二人、盾一人、支援回復一人…これがパーティプレイか…

僕が参加しても攻撃に少し加わるだけだな。意味あるのか?

僕があれだけ苦労して倒した狼を三体、物の数分で倒された。


「どう!?カッコよかった?」

「え?ええ、そうですね…」

「おっしゃ!!」


戦闘が終わるとすぐにジークが僕の所に走って来て、自分たちがどうだってか聞いてきた。

スピードの速いワイルドウルフをあんなにもあっという間に倒したのだ。すごくないはずない。

…僕は自分が誰よりも強いとは思ってはいなかったが、それでもそこそこ強くなっていると思っていた。思い上がっていた…単純な戦闘力はこの中でも誰より弱い…今見た事でよかった。思い上がりを抑制出来て…


理解できてよかったよ…


「分かったか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「そうか、では次から参加してくれ」

「はい」

「大丈夫、大丈夫。気軽に行こうぜ」


僕の肩をジークが叩き笑顔で力を抜くように言ってくる。



   ◇◇◇



狼は五匹こっちに気付いて襲ってきた。

先ほどの戦闘から数回、本当に狼は減っているのか?連続で襲ってきてますが?

僕たちの今の戦闘編成は、前衛にジーク、アース。中衛に僕。後衛ミーシャ。遊撃カナン。

先ほどとあまり変わらないかも知れないが中衛に僕が入った事で少し連携がずれたかも知れない。

それを少しでも良くしようと何回でも反復練習を繰り返す。


流石に五匹全てをアースが請け負う事が出来ずジーク、カナン、僕がそれぞれ一匹ずつ受け持つことになった。


狼が飛び込んで来たのを僕は《跳躍》で木に跳び乗り、こっちを向いた狼の顔にミーシャの矢が刺さる。

狼が怯んだところに僕は《跳躍》で再び跳び、突き刺すようにホーンアクアを両手で持ち狼の体を貫く。

一発当たり光の粒子が体から出るが狼はまだ死ぬことは無い。僕は立ち上がろうとする狼に『疾風突き』を放つ。

足が前に一歩踏み出し腕が風を切り裂き槍が狼を貫くと光の粒子になり消えていった。


一匹倒したところで終わりでは無い。僕が振り向くとジークが今狼を斬り裂いた所らしく光の粒子が見える。しかしカナン方は捕まり狼に押し倒され噛まれようとしていた。カナンが危険なので僕は《投擲》で槍をカナンを噛もうとしている狼に投げた。

槍が体に刺さると浅いのか狼は唸るだけでカナンを離そうとしない。ミーシャも助けようと何度も矢を放つが効いてはいないようだ。

僕はマニュアルで詠唱しながら走り狼に近づくと刺さった槍を右手で掴み引き抜きながら左手で狼の体に触れ『ウィンドボール!』と魔法を放つと狼が横へと吹き飛ぶ。

吹き飛んだ狼は頭を振りながら立ち上がるところをカナンが飛び込んで剣を狼の喉へと突き刺し光の粒子へと変える。


「ん、ありがとう」

「どういたしまして」


僕たちはアースの所に戻ればジークが一体を斬り裂き、アースが最後の一体を槌で打ち下ろし倒している所だった。


「お疲れ様」

「ミーシャさん、先ほどは助かりました」

「どういたしまして」

「ふう、ここで少し休憩にしよう。いいかジーク?」

「ああ!」


何故ジークに伺うのだろうと考えているとミーシャが僕に耳打ちした。


「アースじゃなくジークがリーダーなのよ」

「……え?」


え?そうなの?あんなんでいいの?


「あれは、あれで役立つ」


僕が疑問に思っているとアースが答える。あれって…ひどくない?

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