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目の前が真っ暗になると、僕は現実(リアル)の体に戻っていた。

「えっ!?」と思いあたりを見回し時計を見れば午後11時、ログインしたのが朝の7時なので16時間ずっとゲームをやっていたことになる。

最近のVRギアには最長16時間しかログイン出来ない様に安全装置が仕込まれており、その時間を過ぎると強制的にログアウトされる仕様。

昔見たニュースでやっていたが、あまりにもゲームの世界に入りすぎてリアルに戻れなくなった人。戻りたくない人が出すぎて事故が起こり、こういった対策を取らざる得なくなった。

その当時は「ふーん…そんなものか…」ぐらいにしか思ってなかったが確かにあの世界は魅力が詰まっている。

超人的な肉体。獣的な興奮。達成感の渇望。後……温もり……。

いや、所詮ゲームそこまで考える事じゃない。

僕はシャワーを浴びてそのまま眠り着くことにした。




   ◇◇◇



ログインすれば見た事無い部屋に居た。

上から光が注ぎ体を起こそうと手をつけば大理石のような冷たさが僕の手に移った。

寝ていた場所は街の石畳のでは無く祭壇のような場所で僕は目覚めることになった。


「おはようございます異邦人様」


声の方を見てみたら修道服を着た女性が僕に声をかけてきた。


「……おはようございます。ここは?」

「ここは教会、異邦人様の肉体が消失し魂が天に帰る前に繋ぎ止められる場所。神へと続く扉の前。」


……そういう設定か。

プレイヤーがモンスターなどに倒され死んだ場合この場所から。教会から再スタートってわけね。

どこのドラゴンの物語か…

まあ僕は街中で死に戻りですが!

初の死に戻りがまさかログイン過多とは…


「そうですか、お世話になりました」

「いいえ。では異邦人様のこれからの開拓を祈って……」

「……失礼します」


変な言い回しを聞いたが、僕は気にせず寝かされていた祭壇のような場所を降り、教会から出ていった。


教会を出れば日が昇り朝日が僕の目を刺激する。

「マブッ…」と言いながら手で朝日を遮り気になる事を確認した。

現金。

死に戻りってどうなるの?ドラゴンのみたいになるの?それとも強制ログアウトは違うとか?

僕がメニューから確認すると金額が1200となっていた。

……買い物はしたね。うん、した。こんなに使ったっけ?答え:NO

使ってないよ!たしかに色々買ったけどこんなに使ってないよ!?

なんでさ!?

死に戻ったからさ!

そうですね。

あの苦労はいったい…

「ハァー」っとため息をついて僕はとりあえず自分の泊まっているシルビナの宿屋へと足を進めた。


悲しいとき~。僕が死んだとき~。

悲しいとき~。強制ログアウトで死に戻り扱いされたとき~。

悲しいとき~。お金が半額以下になったときぃぃぃぃぃ。



    ◇◇◇



僕は歩きながら宿屋に着くと第一声にシルビナから「断ってから朝帰りしな!」と怒られた。

うん、強制ログアウトとは言え仕方ない。夕飯作っていてくれたのに食べなかったんだ。御叱りを甘んじて受けましょう。

昨日の夕飯を食べられなかったことを少し後悔しながらシルビナとパーナに謝り昨日のいきさつを説明した。

説明を終えるとシルビナに「街中で寝ずベットで休みな」とあきれられた。

そうですよね。


三人で朝食を終え今日はどうするかと考えたが、やはり目的は本。図書館を目指すのが何よりの優先だと思い僕はまた依頼を受けに冒険者ギルドへ行く事にした。

果たしてあと何回依頼を受けたらFからEになるのか…


中央広場を過ぎ冒険者ギルドが見えてくると大きな声が聞こえた。


「待ちやがれ!」


僕は振り向くと鎧を着た男と僕と同じ格好をした男が合わせて三人いた。

恐らくプレイヤーだろう、こっちの方を見ながら声を荒らげている。


「昨日はよくも恥をかかせてくれたな、ぶっ殺してやる!」


どうやら誰かに因縁を付けているようだ。僕は恐らくいるであろう前の方を見るがみんながこっちを見ていた。


「お前だ!お前!!」


僕は彼らの方を見ると僕を指さしていた。

ん?何で僕?……?

見た事無い男達にいきなり因縁つけられるとは、これはカツアゲか?


「なに小首傾げてやがる!昨日の事を忘れたとは言わせないぞ!」


昨日の事……はっ!?まさかあの狼君たちか!!?

まさか人に化けてまで僕を襲いに来るとは……違うか…


「くそ!PKしてえが今日こそPvPを受けやがれ!!」


なんで彼はあんなに興奮しているんだ?

僕が困っていると人垣から声が聞こえた。


「ちょっと待った!」

「あ!?誰だ!!」

「か弱い女性を一方的に集団で襲う何て外道の道!!皆が許せても、俺は許さん。悪は俺が倒して見せよう!トウ!!」


聞こえた啖呵を最後に赤い物体が人垣から飛び出してきた。

飛び出した赤い物体は男たちから僕を隠すように僕の前に降り立った。

僕の前に立ったのは赤い髪の男で軽鎧を着て腰に剣を差している。

恐らくこれから麦わら帽子を少年に渡しに行く前に僕の前に現れたのだろう。

シャン…男はこちらを向いて微笑む。


「もう大丈夫ですよお嬢さん」

「は?えっと……あの…」

「なーに、ここは英雄(ヒーロー)に任せな」

「あ?邪魔するんじゃねえ!!」

「もう一度言おう。か弱き女性を集団で脅すその心は悪。俺がその心、打倒してみせる!!」

「うるせぇ!!構わねえやっちまえ!!PvPだ!!」


何か話が僕を置いて進んでいく。

ここは両手を組んで祈った方がいいのか?

そんな事を考えている間に互いにメニューバーを操作し終ると彼らの周りの薄い膜が現れ数十メートル四方のドーム型になった。

僕の足はひとりでにその薄い膜に押されるように退かされ、膜の中には赤髪の男と対峙する様に三人の男が立っている。


「へっ、いいのかよ3対1でも。俺一人でもいいぜ」

「ふっ、ヒーローってのはどんな逆境でも勝つものなのさ」

「ちっ!ふざけた野郎だ。やっちまえ!」


男の号令で鎧を着ていない二人が武器を取り下がる。

鎧の男が斧らしく、もう一人が槍、最後が弓の前衛、中衛、後衛とバランスの取れたパーティのようだ。

しかしこれは本当に何なんだろう?僕は当事者なのか部外者なのか。

そんな事を考えていると空に数字が表れカウントダウンが始まった。


5…


4…


3…


2…


1


Fight!!


最初に動いたのは赤髪の男、剣を抜き走って斧の男と対峙した。


「ふっ、こいつは剣の負けだな。剣の武器と斧の武器じゃ明らかに力の差が出る。押し負けるぞ!」


僕の隣に居るおっさんがいきなり訳知り顔で話し始めた。


赤髪の男は剣で斧と対峙しているが明らかに余裕を見せている。

恐らく自分と相手のSTRの差を計っているんだろうが余裕の笑みは崩さず剣の斬撃の速度を上げていきながら相手を翻弄している。


「こいつは驚いた。何てこった!あの剣士、斧相手に打ち勝ってやがる!?」

「当然よ何たってジーク様なのよ」「「そーよ、そーよ」」


どこからか現れた三人組の女性がおっさんに反論する。…まあ、いいか。


赤髪の上手さは剣の斬撃では無い。射線の維持だ。

斧を誘導し槍と弓の射線を上手く防いで攻撃できないようにしている。


「こいつはあの3人に勝っちまうな…」

「「「当然よー」」」


まあ、このまま行けばそうだね。だけど勝ち方はある。


単純だ。槍が斧ごと刺せばいい。それとも弓が二人と一緒に赤髪を射抜けばいい。

最終的に勝つならば一人は残る。

さてこの茶番が動いたのは赤髪が走り出し斧を置き去りにして弓に攻撃をした時点でほぼ勝負は決まる。


斧の『パワースラシュ』が発動すると赤髪は《回避》しその足で弓まで《ダッシュ》を使い走り抜く。

弓は焦り射線が上手く取れないのか赤髪には当たらず三射目で赤髪を懐に入れてしまう。

赤髪の剣は懐に入ったと同時に袈裟切りで剣が左肩から右わきを通り体がずれてそこから光の粒子が飛び出し弓が消える。


赤髪に無視され走って追う斧は鈍足らしくその前に槍がたどり着いた。

槍が『疾風突き』を放つが赤髪はそれを体を仰向けのように反らし《回避》と同時に剣で喉を突く。


『疾風突き』と言うかアーツには弱点がある。

自動で出るところだ。

アーツの種類。型が分かるとさっきの赤髪のように避けるのが可能になる。

特に僕も使う『疾風突き』は右足を出してからの突きでありその時点で型が出来ている状態だ。

恐らくアーツの中でも早い部類であろうが突く位置がばれていれば後は自動で繰り出されるので回避されるのは当り前だ。これはAGI値が低かろうが避けられる。


赤髪は刺した剣を横に振り抜くと槍の喉から先ほどと同じく光の粒子が飛び出し槍が消える。

斧の男がようやくたどり着いた様で赤髪に「てめえ、よくも…」と言って睨んでいる。


「デスバトルルールで挑んできたのはお前達だ。これに懲りたらギブアップして悪事から足を洗うんだな…」

「うるせえ!!やったら『パワースラッシュ!!』」

『一閃!』


男たちの会話が終わると先に動いたのが斧の方。斧を振り上げると斧が赤くなりアーツが発動する。斧のアーツは昨日見たが恐らく威力が高いがその分隙があるアーツなのだろう。

やはり槍や弓が攻撃して隙をうかがい、斧でとどめを刺すのが理想だろう。


……ん?ああ、昨日の斧くんか彼は。


斧が振り下ろされる前に赤髪のアーツ『一閃』が発動する。横に構えた剣が光、斧より早く鎧の上からでも切り裂く威力があるのか右の脇腹から左へと通り抜けた。

腹から光の粒子が飛び出し斧くんが消えていく。

三人が消えると赤髪の頭上にWinと表示され薄い膜がはじけて消えた。


そこには最初のように立っている赤髪と目の前に膝をついている三人。これが彼らが言っていたPvPと言うやつか。ふむ…死に戻りにならないんだな。


「…これ以上悪さはしないな…」

「……もう、いい…」


赤髪の言葉を聞く斧くんはひどく落ち込んでいた。

まあ、よくよく考えたら割り込んだ僕が悪いのか。そうだね恨みを買って生きたくもないし。

僕は斧くんらに近づき、鞄の中から予備のポーションを9つ取り出した。

元々ポーションが欲しかった斧くんから始まった事なので品質落ちだがポーションで手を打ってもらおう。


「あの…品質が落ちてますが、よかったらどうぞ」

「あ?…いいのか?」

「ええ、横から割り込んだ僕も悪いですし。ごめんなさい…」


僕が少ない愛想を振りまくと斧くんたちは何故か顔を赤くし「ちくしょう!覚えてろ!」と言って走り去って行った。

…相変わらず他人は分からない。

折角の愛想すら恨みになるのかと僕がため息つこうとするとギョッとした。

赤髪の男が泣いている。

何?どっか悪いの?頭?


「感動した!」

「は?」

「俺はモーレツに感動した!君は女神か?マリアか!?」

「え?いえ、ユウです…」

「そうか、ユウ。君のような子は滅多にいない。自分自身が脅され怯えていようが、最後には相手を感心させてしまう。その慈愛!まさしく聖母と呼んでいいかい?」


え?嫌だよ僕男だし。

僕が断ろうとする前に声が聞こえた。


「こら、ジーク。あんたまたナンパしてるの?いい加減通報されるわよ…ってユウ?」

「あれ?ミーシャさん?」


聞き覚えのある声かと思えば船で一緒になり昨日見たミーシャだった。

ゲーム内ルール:1


PvP(Player vs Player)

プレイヤー同士がルールを決め互いの了承の元決闘するシステム。

1vs1から変則的1vs6なども可能。

最高6人まで

(死に戻りやアイテムロストは無い)

ルール


ワンアタック:相手に致命傷を一撃でも当てれば決着。(ただしかすり傷などはポイントにならない)


ハーフダメージ:どちらかのHPが半分まで減ると終了。(多人数の場合はHPが半分を切るとフィールド上から退場)


デスバトル:相手のHPをなくなるまで終わらない。(多人数の場合HPが無くなった時点で退場)

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