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プロローグA

「いよいよ明後日からだな」

「そうだな、夏休みだな」


そんなに楽しみかと少年は話しかけてきたもう一人の少年へと相槌を打つ


「違う、『Uncivilized earth online』のログイン日だ!」


昨日発売となったVRMMORPG『Uncivilized earth online』そのゲームの正式ログイン日が夏休みと同時なのに少年、羽田京助(はねだきょうすけ)は浮かれていた。

昼休みにゲームの話、どこにでもある風景とも言えるが高校生の昼休みとしては色気が足りない。

ともう一人の少年佐藤大地(さとうだいち)は思っていた。


「昨日買ってからずっ………とキャラ作成してたから、早くプレイしたくてしたくて」

「キャラ作成なんて、そんな時間のかかる事か?」

「『UEO』は事細かにできるからな」

「(UEO?…ああ、略語か。未確認飛行物体みたいな名前だな…)へ~、そうか」

「俺のキャラが英雄になるのが待ち遠しいぜ!」


元々この手のMMORPGは物語上のキャラを動かすのではなく自分で作ったキャラを動かすのが主流である。

京助のようにキャラ作成に時間をかけ、自分が主役の物語を遊ぶ人も少なくはない。


「あ、大地はまたデフォで作る気なんだろ」

「…そうだけど」

「止めとけって、また身バレして問題になるぞ」

「…んー、だけどVRは自分の体に近づけないと違和感すごいしな…」


彼の言うVRMMOとは今までのゲームのようなコントローラーでキャラクターを動かすのではなく。

自分自身がゲーム内で手足を動かすようにキャラクターを動かすフルダイブ型の事で背丈や体型を変えすぎると体が拒絶のように違和感を訴える。


「分かるけど、せめて髪の色や髪型だけでも変えとけって」

「そうだな」

「よし、じゃあ今日大地の家に行ってキャラ作りだ!」

「いや、自分で出来るからいい」

「冷たい!?大地冷たい!!」


そんな話をしていると一人の女生徒が二人に声をかけてきた


「二人とも、もうキャラ作り終わったの?」

「おお、美月、お前からも大地に言ってくれよ」


二人の会話に参加したのは瀬戸美月(せとみずき)、二人の幼馴染に当たる女の子


「俺はまだだが、京助がまたこだわったらしい」

「え~、また。もう、中二病的なキャラやめてよね。見てるこっちが恥ずかしい。」

「あれ?、俺が批判されてる!?」

「パーティ組んでやるんだから横で「俺の邪気眼が疼く!」とか言われてもね…」

「男はいつまでも中二病!」

「…ところで加奈ちゃんは?」


美月は京助を「こいつはもうダメだ」と無視することに決め、となりの大地に妹の状況を確認することにした。


「今日、俺と予約したソフト買いに行く。キャラ作成はそれからだな」

「そう、じゃあ私も今日キャラ作ちゃうわ。その後『スキル』取得の相談をメッセでしましょう」

「ああ、わかった」

「放置!!」


昼休みの教室で仲の良いクラスメイトの数日後に控えたゲームの話は続いて行く。



   ◇◇◇



さて、彼らの物語が始まろうとしている傍らで三人の席の近くに携帯端末をいじりながらぼっち飯をしている僕の名前が阿池雄一(あいけゆういち)と言います。

あ、あっちが主人公と思いましたか?申し訳ない。僕です。

僕が端末で何をしているかと言うと、本を読んでいます。

ぼっちゆえに誰からも相手にされずにではないですよ。……ホントに……


僕は本が好きなもので、ずっと読んでいたいのです。

しかし今の時代、紙媒体の書物がなくなりだしてもっぱら電子書籍が主流になり、僕は一抹のもの悲しさを感じている昨今です。


買えばいいじゃん。とお思いでしょうが、紙媒体の本は高いのです。

値段の方は、そうですね…

一冊買うだけで、一男子高校生のおこづかいの二か月から三か月ぐらいでしょうか。


しかも今僕は瀬戸際です。現在読める本が無くなりだしました。

僕が田舎から親戚の叔父の家に引き取られて、早一年と数か月。

叔父に金銭的に負担をかけまいとなるべくお金のかからないよう、元々の趣味の本を買う方から、図書室や無料のネット小説に切り替え、金銭がかからないようにしていたが、残念ながらそれも終わりが見えてきた。

僕はネット上で無料で読める本が無いか探しつつ、昼食を食べながら何ともなしにクラスメイトの話に耳を傾けていると先ほどの話が聞こえてきたわけですよ。


…べ、別に盗み聞きしてたわけじゃないんだからね!


(ゲームか……しばらく触ってすらいないな)


近年のゲームと言えばVR形式などが主流になり、その中でもフルダイブシステム。自分がゲームの中に入りゲームキャラを手足のように動かす仕様がもっぱらだが、僕はヘッドセットを付けない画面に接続して行う昔ながらの家庭用ゲーム、配管工がお姫様を助けるようなゲームなどが僕の中のゲームと言う。

じーさん曰くピコピコだ。


ゲームの物語も久しぶりに良いかもしれないが、ゲーム機本体をどこからか引っ張り出し、接続するのもめんどくさいと思い、僕はゲーム機の発掘を早々に諦め。

(夕飯の買い物帰りに書店でも寄って安い掘り出し物の本を探そう……)と僕はこの後の予定を決めた。




    ◇◇◇



とある書店のレジに大学生の女性が暇そうに端末をいじっていた。

藤井結奈(ふじいゆいな)この今ではほとんど見なくなった紙媒体の本を販売している店の娘、親の趣味で経営している本屋で店番をしていた。


客はほとんど来ず、閑古鳥が鳴く状態だが親は税金対策で経営している店にカカシの代わりに暇な娘を置いている。


来るお客はほとんど物好きの常連、現在はネットで買う電子書籍が主流なのでわざわざ紙の本を買いに足を運びに来る人間はいない。……高いし

居たとしても今いる常連ぐらいだ。

今店にいるのは若い眼鏡をかけた学生、結構な頻度で足を運んでいる。何?私目当て?


接客業なら愛想の一つでも振りまくべきものだが、結奈は気にせず端末をいじりながらあるサイトを見ていた。

昨日発売されたVRMMORPG『Uncivilized earth online』の公式ホームページ

結奈は元々廃人と呼ばれるほどのゲーマーで数本のVRゲームをやって来たが『Uncivilized earth online』は他のゲームの一線を画す。

従来のVRシステムはバーチャルリアリティの名のごとくリアルの自分があたかもゲームの世界に居るような錯覚を起こすが、所詮はゲーム、錯覚である。やっていれば何かしらの違和感を感じるもの。

だがこの『Uncivilized earth online』は違った。

サイト内にある体験版をプレイした結奈は感じた感想はリアルすぎて違和感がない事。

ラグや処理落ちは一切ないのは当り前、痛みや匂い、肌で空気なども感じ取れる使用だ。

ゲーム内ではなく自分自身が異世界に行ったような気さえした。


普通なら喜んでこのようなゲームをプレイしたのかもしれないが今回は結奈は恐怖を感じていた。

VRMMORPGならβテストぐらいはありそうだが、そんなのは一切なく、CMも公式ホームページだけと、商売としては成り立たない商法での販売。

小説などのデスゲームや異世界転移でも始めるのではないかと思ってしまう。

そんなゲームほっとけばいいのだが、今回はそうはいかない。

妹が興味を持ってしまった。


妹は結奈と違い、結奈が誘ってもゲームは一切やらなかったが今回は違った。

何が妹に興味をもたらしたのが分からないが、結奈がホームページのPVを見てると興味を持った。

持ってしまった。

わがままを言わない妹が初めてのおねだりだ、ソフトを買わない訳には行かない。

下手に止めると一人でプレイしだすかもしれないし

せめてもの救いはVRヘッドギアが届くのが数日とログイン日より日が遅い。

それまでに少しでも異変がないか調べなくてはならない。

妹に何かあってからでは遅いのだから。


自分自身の方向性を決め、顔をあげたが店にはお客は一人もいなかった。

先ほどまでいた常連客は帰ったらしい。

結奈は気付いたら数時間ネットを見ていたようだ。

これなら本当にカカシを置いておいた方がましな気がした。



   ◇◇◇



買い物をすませた僕は家に帰ると家事をこなし始めた。

叔父が僕を引き取ると決め購入した家、新築ではないがそんなに年数は経っていない。

この家は僕と叔父の二人暮らしにしては広く、僕は家事を自分のできる唯一仕事としてこなしている。


今日は目的の本屋に行っても自分のおこずかいで買えそうなよさげな本は置いていなかった。

僕は夏休みの時間を使い次に出る本の為にバイトしようかと考えながら夕食の用意をしていた。


(でも僕社交性ないからな…)

一度接客業のバイトをやった時は一日で仕事をクビになっている。


夕食の支度が終わり、叔父が帰ってくるのを待ちながら一息ついた時に荷物が届いた。

箱には叔父宛てと書いてあり壊れ物注意のシールが貼ってあるので丁寧に扱った。

たまに叔父は訳の分からないものを買ったりするのでこれもそうかと、ダイニングのテーブルに丁寧に置いておいた。


しかし待っていてが夜になっても叔父は帰ってこなかった。

いつもなら遅くなると電話かメールが来るのだが、電話が来たのは深夜の日付をまたぐ前だった。


『ゆう、こんな時間にすまない』

「うん、大丈夫だよ」

『仕事の関係で帰るのがかなり遅くなりそうだ』

「そっか…夕食は冷蔵庫の中にあるから帰ってきたら温めて食べて」

『あ~…すまない、飯は食えそうにない……実は俺は今海外に居る』

「……へ~」

『リアクションが薄い!』

「いや、寝る前にテンションが上がらなくて」

(それに結構な頻度で叔父さんは海外に行ってるし)

『もっとあるじゃん!もっと愛をちょうだい!ギブミーラブ!』

(テンション高いな…)

「はいはい、愛してる」

『よし!てなわけで、俺は数か月海外で暮らす訳なんだが』

「…えっ?数か月?」

『ああ、数か月間は仕事で滞在しないといけなくなった…』

「…そっか」

『…いや、やっぱり帰ろうか?ゆうを一人にさせる訳には行かないし…!心配だ!!俺が!』

「はっ?、いやいや!」

(てか、あんたがかい!?)

『上司を倒してでも日本に、ゆうの場所に俺は帰るぅぅ!!』

「いや、落ち着けよ。いい大人」

『でも…』

「ハァー…、僕はもう子供じゃないんだから、一人でも大丈夫だから」

『……そうか、そうだな…わかった!雄一を信じる……信じるぞ…』


いや疑ってるじゃんとなんとか口に出さず僕は心の中で思うだけに止まった。


「うん……あ、そうだ叔父さんに荷物が届いていたけどそっちに送る?」

『ああ、それは大丈夫だ。実はその中にゲームが入っている』

「ゲーム?」

『ああ、やろうと思って買っておいたゲームだ、箱に専用のハード機とソフトが入っているから、好きに遊びな』

「いいの?」

『ああ、放置しておくのも勿体ないしな、しばらくどこにも連れていけそうにないから好きに遊んでくれ』

「わかった、ありがとう叔父さん」

『おう、じゃあ元気でやれよ』

「うん、そっちもね」



    ◇◇◇



翌日、夏休み前の登校も終わり明日から夏休みが始まる。

家の細々とした用を片付け、僕は前日予定したようにバイトでも始めようかとPCで求人を見るかたわらで違うサイトを立ち上げていた。


『Uncivilized earth online』の公式ホームページ


前日の叔父の荷物に入っていたのが『Uncivilized earth online』のソフトとVR専用ヘッドギア。

どこかで聞いたようなゲームタイトルだが最近のゲーム事情を知らないのでどんなゲームか確認だけでもしておこうとソフトパッケージ書いてあるホームページへ飛び、PVを見ることにした。


ちなみにこのゲームが萌え要素たっぷりのゲームだった場合箱を閉じそっと叔父の会社へ送ろうと真剣に考えていた。


『Uncivilized earth online』はタイトルの通りオンライン上でやるゲームのようで多人数で遊ぶようだ。

PVにはキャラクターが縦横無尽に駆け回り、武器を使いモンスターを切り、派手な魔法を使うシーンが映っている。

それを見た僕の感想は、画質が綺麗だな……ぐらい

まったく興味がわかなかった。


PVが終わりマウスで下にスクロールしていくといくつかの画像を見つけた。

モンスターと戯れるシーン。

食事を食べてるシーン。

どこかの綺麗なお城、和洋中の街並み、図書館。


ん?


お城、街並み、図書館。


「図書館!?」


確かに今映ったのは本棚が並べられていた図書館だった。

それを見て僕はある可能性を考えていた。


(いや、有りえるのか?ゲームと言えば、本棚を探しても今までのゲームは数行のテキストが流れるだけだが、しかしこれはVRゲーム実際に触って読むことができるんじゃないのか?)


僕は数秒考えて、やってみない事には判断が出来ないと『Uncivilized earth online』をプレイすることに決めた。


箱からヘッドセットを取り出し僕は端末から説明書を落とし、読みながら試行錯誤しヘッドギアの環境設定を終わらせることに成功した。


ゲームはネットを介してオンライ上の舞台を遊ぶようだ。そのログインが出来る日は明日の昼12:00

僕はログインのできる時間まで家の事を全て終わらせようと決め家事をこなし過ごした。

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