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どうしてこうなった?  作者: 英心
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006 人生初の買い物

本日三話目です


 迷いながら彷徨う俺の足を止めたのは一台の荷馬車である。荷馬車と言うより護送車だ。極太の丸太で囲まれた中に数人の人影が見えた。忙しなく人を連れ出す輩は強面の連中ばかりだ。正直場違いな場面に遭遇して仕舞ったと後悔していた。そこへ仕立ての良い服を着た男が俺の下に近づいて来た。


「コレは良いタイミングで御出で下さいました。見た通り入荷したばかりで御座います。ささ中へどうぞ」


 有無を言わさない行動に流されるまま連れていかれる俺。ゴクリと生唾を飲み込んでしまった。


「私『ライオット』と申します。当館の主で御座います。お客様のお名前をお聞きしても宜しいですか?」

「えっと、工藤英司と言います」

「ほぉ~氏持ちの方ですか。外国の貴族様でしたか、コレは失礼致しました」

「否、貴族では無いです。冒険者ですし、この国にも疎い人間です。今日は下見と言うか勉強がてらにお伺いしたまでで……」

「成程、ご希望は戦闘が可能で、国の話が出来る者をご所望と言う訳ですか」


 流石、商人。僅かな言葉から相手の求める者を導き出し、商談を絞るなんて凄ワザだと思えた。これは中々手ごわい相手との商談に成ったと工藤は気が引き締まる。


「ご予算は如何程で?」

「予算と言うより私は値段そのモノすらと言うか奴隷の事も知りません。ですから勉強に訪れたのです」

「クドウ様。御見掛けに依らず商売上手なご様子ですね。では、簡単に奴隷の仕組みからお話ししましょうか」


 奴隷とは、戦争によっての敗残兵。犯罪者からの罰として。借金苦による身売り。口減らしによる身売り。盗賊からの戦利品。等が奴隷として売買される。種族・階級と言った世俗の地位は一切剥奪されたのが奴隷だ。市民権は第二級扱い。つまり主人の許しが無ければ行動に制限が掛かるのだ。


人頭税と言った納税義務は主に掛かる一人当たり銀貨五十枚が春先に発生する当然役所に登録が必要だ。扱いは家畜以上人以下が原則だが、ラナの様に手厚く扱う主人も多く、買主次第と言う事らしい。主要目的は千差万別だ。重労働から綺麗処をコレクションする等扱いも待遇もバラバラで在る。


両者間の契約は魔法で行われ、絶対服従が決まりである。違反すれば魔法で体罰が執行されるらしく、他にも細々とした作法が存在する、奴隷側には厳しい条件だ。そして、価格はピンキリだ。基本は働き手、要は性別を問わず若い者が高い。序で幼子。そして老年と価格が下がる。容姿も大きく左右される。女性は綺麗な人が、男性は力自慢が人気で価格も高い。特記事項として魔法やスキル持ちも高額だ。俺の求める戦闘が出来る人材は人気が在ると言う事だ。


但し、此処で例外が在った『獣人』だ。彼等は年齢・性別・容姿に問わず安い買う側には有難い。女性の獣人は人と容姿が変わらない上に秘めた力が優れている。血脈と言うのだろうか、幼くして人を超える能力が在る。だから一般人にも広く買われてるのだが、それが差別へと繋がっているのだ。


「と言った具合です。本日は極上のモノを仕入れて居ります。是非ご観覧だけでもなさって下さい」


 此処まで教わった手前、無下にも断れない。仕方なく付き合う事にした。別室に連れていかれた俺は、其処で五人の女性達と向き合う事に成った。


「あの~何故に女性ばかりですか?」

「おや!?クドウ様はソチラの趣味がお在りでしたか?」


 ブルブルと首を横に激しく振る俺に万遍な笑みを向けるライオット氏。二人は人族三人は獣人の女性達が、薄い衣を纏って立っていた。


「最初の者は海の向こうで敗戦した国の貴族の娘です。蝶よは花よと育てられ、ご覧の通り容姿はこの国でも屈指でしょう。戦闘や家事には不向きですが、傍に置くだけで男の価値が上がると言うモノです」


 確かに白人・金髪・青い瞳はハリウッドスターかパリコレクションに出てそうなモデル級の美貌と体つきだけど、完全に俺の求める人と離れてるよね!何で?自慢?それとも俺が金持ちに見えるの?否、虐めだよね。


「次も同じく海を渡った国の元大棚の令嬢です。同じく敗戦が基で倒産に至った次第だと聞きます。此方は育てる喜びが味わえるでしょう」


 育成モノのゲームなら在りかも知れないけど……娘より下の幼女をそれも戦闘には連れてけないッショ!育てる方が御金が掛かりそうだし、犯罪者扱いはゴメンですよ。


「三人目は猫族です。狩りが最も得意とする種族ですな。例え買主で在っても、心を許す事は稀で、反ってそれを好む方も多いですな」


 ソソルものは在るけどさ、言うと聞いてくれないって基本的にどうなの?


「四人目は犬族です。此方も猫族に匹敵する狩りの名手と言われます。従属心が強く主の右腕として活躍が期待できます」


 あぁ~うん。犬は人間の友と言われてるからね。耳も鼻も聞くんだと思うよ。でも二人目の子と同じく、ちょっと幼過ぎない?


「最後は兎族です。正直出回ってる数が少なく生体は謎が多い種族ですが、聴覚は人類史上類を見ない力でしょう。それと長い脚から繰り出す速さは獲物を追い込むのに最大の力を発揮するかもしれません」


 雅か、ここで、本物のバニーガールに出会うとは思わなかった。キャンギャル処の騒ぎじゃない。秋葉のメイド娘も、たじろぐ破壊力だ。全体的に白い毛色が目を引く。メリハリの在るボディーは正直目のやり場に困る思いだ。丸い尻尾はフワフワとしているように見える。


「価格はこの様になって居ります」


 そう言ってライオットは価格表をテーブルの上にそっと忍ばせる。

一番の女性が金貨百枚。二番が金貨七十枚。三番が金貨三枚四番目が金貨二枚そして五番目が金貨三枚だ。コレほどまで、人と獣人との価格差が在る事に驚いた。差別は俺の世界でも在るが、コレは根深いモノだと思い知らされる。


見てくれで、即決するほど舞い上がってない俺は三人には早々に引き払って頂き二人と面談する事にする。


「では、名前と年齢、それに得意な獲物をを聞かせてくれ」

「名前は『ルーシー』にゃ。歳は今年で十五にゃ。ナイフと鞭がお得意にゃ」

「『レイ』歳は十八。何でも扱えるが、弓と剣が好きだ」

「其れじゃ、次にこの国の読み書きと計算はどうだ?」

「冒険者を求めてると聞いたニャ!け、計算が要るとは思わないニャ~にゃ」

「アナタは、この国のと尋ねるが、私が知る限り文字は世界共通と認識しているのだが、それ以外も在るのか?」


 へぇ~良い情報を得たと思ったが、少し誤魔化す事にしよう。


「君達の御国に言葉が在ると思ったんだが、居な、無いなら構わない。それで質問に答えて貰ってないんだが」

「四則演算等造作も無い。我々部族を馬鹿にするな」

「そ、そうニャ!シソクエンゾウ位知ってるニャ」


 シソクエンザンだけど、まぁ~良い。選ぶのは彼女一人で十分だろう。

 

タイミングを計った様にライオットが部屋に戻って来た。一旦二人を帰して、ライオットと交渉に入る。

敵もさるもの引っ掻くものである。交渉は難航を極めたが、次回の顔繋ぎとしてライオットが折れてくれた。結局『レイ』を金貨二枚で交渉は纏まった。


時間を割いて読んでくれて有り難う

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