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どうしてこうなった?  作者: 英心
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005 予想外の話

本日二話目です


 昨日は思いもしない買い物が出来た。正確にはリースに近いが、それでも安心・安全が手に入ったと思う。お蔭で俺の財布は厳しい状態だ。残金は金貨十一枚・銀貨八十二枚・銅貨九十枚にまで減った。

コレから親方に教わったサバイバルグッズの購入に向かわなければ成らない。お金が何処まで残るか不安だ。


そんな事を考えて朝食を取って居たら、喉を詰まらせる。慌てる俺にラナがコップ一杯の水を手渡してくれた。


「そう言えば、仕事中の飲み水をどう確保しようかな」

「そんなの魔導水筒で事足りるじゃないかい」


 独り言のように呟いた俺に女将が応えて来る。


「魔導水筒?」

「薄々感じてたケド、お客さんって世間知らずって言うかモノを知らな過ぎるね~良いかい!魔石を使う道具『魔導具』ってのは色々在るんだ。生活魔法で事足り事を魔導具で補うのさ」


 不思議な男だとつくづく思う。利口なのか馬鹿なのか判断に迷う。何故子供でも知る理をこの男は知らないのだろう。と不思議に女将は感じた。


「何で?魔導具を買う事と魔石を常に買えばお金の無駄だよな?」

「金は掛かるけど、自力の魔法を使うと疲れが溜まるじゃないか。それに魔導具の魔石は高くは無いからね。便利さを考えると人は魔導具を使うのが安全で楽なんだよ」


 思わぬ情報だ。と成れば、俺が注文した灯りとか湯浴みのお湯も魔石で賄えるのではと聞いてみたが、費用対効果でソッチハ割高なんだと。


「なぁ~お客さん。アンタ冒険者なんだよね!?」

「そうだよ」

「親心と思って聞いておくれ、正直不安でしょうがないよ。この際『奴隷』の一人でも買ったらどうだい!?ウチの宿なら心配なく泊めてあげるからさ」


 またまた、思いもしない発言が飛び出す。俺に奴隷の購入を勧める女将に驚きの視線を向けてしまう。


「おや?お客さんの国じゃ奴隷は禁止だったのかい?珍しいね。でも奴隷も扱いを酷くしない限り有難い者だよ。ラナだってそうだ。もう二年に成るけど今じゃ娘みたいに思ってるしね。一度考えると良いよ」


 そう言って女将は奥へと消える。健気な娘ラナが奴隷だったとは衝撃な事実だ。だが、決して二人には俺が思っている主従関係は無い。ちょっと躾の厳しい母娘そんな感じだった。そう考えると俺の奴隷購入もアリなのかとさえ思えてしまう。


 迷いながら錬金術師の工房へ向かう為町を歩きだす。散々迷った挙句工房では無く、ギルドへ足を向けた。シャルルさんに相談を持ち掛ける為だ。


今日もギルドは閑散としている。どうやら冒険者とは朝一番で活動するのが常らしい。この辺も俺が知らない常識なんだろう。目的の人を探す俺に後ろから声を掛けられた。


「今日はどうされました?武具はまだ準備されてないようですが、お仕事を物色ですか?」


 声を掛けて来たのは探していたシャルルさんだ。武具は勧められた親方の店で手直し中。今日はサバイバル品の準備の予定で仕事の活動は明後日からだと伝えると彼女はホッとする表情を俺に向けてくれた。


「思ってたより慎重派なんですね。安心しました。エイジさんは無鉄砲な方かと思いましたけど、問題なさそうですね。となると、今日の訪問は何ですか?」


 昨日より親近感を持てる対応に少し驚きと喜びを感じる。それでも彼女の俺を見る評価は変わって無い様だ。


「アハハッ。そんなに頼りないですかね」


 シャルルさん見る限りでは、二十代前半に思える。ツマリ俺の半分程の年齢の女性に心配される俺ってどうなの?って事だが、コレだけ世間から不安がられると正直自信と言う芽は生えて来ない気がする。


「成程、奴隷の購入は確かにアリです。実際そうした冒険者も多いです。新人さん達は資金が乏しいので、普通は知り合い同士でパーティーを組むのが多いのですが、エイジさんですと時期もズレてますし、資金にユトリが在るなら、その女将さんの勧めを私も押しますね。因みにどちらの宿ですか?」


 確かにその考えはアリだと思った。此処まで人を心配させるこの人には、傍に誰かが付いて居た方が安心だ。奴隷ならば、『契約魔法』で裏切られる心配はない。一体誰が目の前の男性に、そんな助言をしたのかが気に成った。


「宿は此処から南にある『ベラ』さんと『ラナ』ちゃんが居る宿ですよ」

「あぁ~『ルスト』ですか。中々良い宿にお泊りですね。料理が美味しい事で評判な宿ですよ。お節介なベラさんと可愛いラナちゃんが看板娘ですしね」


 へぇ~と思える評価だと思った。確かに姉御肌のベラさんの言葉に耳が痛い気もするが、今朝の忠告も有難いとも思えるし、ラナちゃんの笑顔は癒されるからだ。しかし、シャルルさんからも奴隷を勧められると本格的に考えを改める必要が出て来た。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「奴隷か幾ら位なんだろう。それに買うんなら、やっぱ男性より女性だしな……俺が相談できる人と言えば、親方位か……一度聞いてみるか!」


 シャルルさんには、これ以上の相談は無理と考え、親方の工房へ向かって居た。サバイバルグッズを買って無い事にお叱りを受けたが、事の経緯を話すと親方も納得してくれた。


「で、相場とかどうなんですかね?」

「バ、バッキャロー!お、俺が知る訳も無いだろう。其れにお前が買うのは女性なんだろう。し、知るもんか。そんな話を俺に振るんじゃねぇ~」

「はぁ~そうですか。すみませんでした」

「おぅ!間違っても幼子なんて買って来やがったら、お前さんとの取引はパーだからな!心して買いに行けよ」


 俺に犯罪に触れる趣味は無い。予算の問題も在るし、理想通りの買物には成らないだろう。一応親方とも武具の話は折り合いを付けておいた。並の装備で問題ないだろうと言う事で、装備代に金貨一枚で一式揃えて貰う確約を得て俺は奴隷商を覗く事にした。


 町の南側大門に近い場所。宿の通り向いの路地裏。少し雰囲気が違う感じがする。所謂色町へと呼ばれる大人な一角だ。日が暮れれば、表通りの酒場とは違う色の灯が灯る通りだ。独特の香水が漂い、男と女の駆け引きが毎夜取り交わされる場所。異世界だろうとその辺は変わりは無いのだろう。そして工藤も決してそんな場所が嫌いでは無かった。


人には時折、そんな場所を毛嫌いする人が居る。人にはそれぞれ人生が在り考え方が在るのだ。全部を否定する事は無いだろう。それが工藤の持論だった。

 それでも奴隷を持つと言う事に幾何かの後ろめたさを感じるのも事実だ。此の先に進むべきか足が止まる。自由を無理やり奪う事は許されない。しかし、其処でしか生きられない命が在る事も彼は知っている。だからこそ、悩んでいるのだ。終身雇用や何代にも続いて執事に着く話も聞く。要はどちらの立場であっても互いに『尊厳と自由と意志』が存在すれば……その基準は何だろう?誰が決めるんだ?自問自答する工藤。


この場所に数店の奴隷商が存在する。その一軒の前に俺の足は止まった。

時間を割いて読んでくれて有り難う

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