003 就職活動
本日四話目です
商人街での就活に失敗した俺は、念の為にと食にっがいにも足を運んでみたが、結果は同じく惨敗。仕方なく冒険者ギルドへと望みを託すしか無かったのだ。
「えっと……申し込み用の記載に間違いは御座いませんか?」
出された申込書を書いた工藤に受付係の女性がマッタを掛ける。
「アレっ?何か間違えましたか」
「その……私にはエイジさんが、二十代に見えるんですが」
女性は申請書の不備を確認しているようだが、彼から見れば、間違いや書き漏れは見当たらず何を女性が戸惑っているのかさえ理解できない。
其ればかりか話を和ませようとしたのか彼の見た目と年齢について有ろう事かヨイショを持ち掛けて来た。
「幾らなんでもそれには、無理が在りますよ~三十半ばって言われたら嬉しい気にも成りますケド」
「……」
アレッ?反応が薄いぞ。午後の冒険者ギルドは人が少なかった。閑散とした広い室内に欠伸をしている職員もチラホラ見える。だから俺は一番好みの受付嬢の下に訪れたんだけど、雅か本当に自分の年齢が問題視されるとは、思いもしなかった。
「もしかして、四十代じゃ加入出来ないって事ですか?」
「否、そう言う事ではないんです、普通その年齢で新規加入の方は粗皆無でして、少し驚いたと言うか……失礼しました。当ギルドは広い間口が身上です。元犯罪者で在っても更生した方や奴隷の方でも加入は認めております。ですからエイジさんも問題なく加入できますよ」
犯罪者と比べられたのはショックだったが、『奴隷』と言う言葉に少し反応しました。コレって少し不安が解消できるかもしれませんね。
「でわ、改めてご説明します……」
受付嬢『シャルル』サンの説明は、在り来りの内容だった。ランク制で依頼金の幅が在る。当然仕事内容はハードに成っていく。そして仕事達成毎のポイント制だ。ポイントが貯まれば、昇級する仕組みである。そして、自己責任と未達成の場合のペナルティー。ギルド内での争いの禁止等だ。
「何かご質問は在りますか?」
「特には在りません。あぁ~一つ教えて頂きたい事が!」
「魔法に関してですが、習得方法とか知りたいんですケド、何か在りますか?」
「習得ですか」
「ハイ」
「……初等学で学んだと思いますが?」
此処でもヤラカシたと、内心舌打ちをかました。
「実は遠方出身者でして、昨日この地に参ったばかりなんです。オマケに国元で碌に修行をしなかったものですから、この際基礎から学び直そうと思いまして」
少しは誤魔化せただろうか?不安が過った。女性は表情を変えず、それに対応する。若い割にプロ意識が高いと変なトコで女性に感心してしまった。
「……そうでしたか、それで氏を御持ちだったんですね。でわ、簡単にご説明します。ご存知の通り魔法には白魔法と黒魔法が在り……」
要約すれば、攻撃魔法は『黒魔法系』回復には『白魔法系』が存在する。冒険者としての実務経験を重ねて行けば、素質が在れば自然と身に付くらしいのだが、敢て強化習得するならば、『魔石』を利用した攻撃をし続けるのが早道なんだと。
『魔石』って何よ!?って聞きたかったが流石にこれ以上は墓穴を掘りそうなので控える事にする。何故なら誰も俺が『異世界人』だとは気づいて無いからだ。
これは多分両刃の案件な様な気がするからだ。過去に俺似たケースの人が居たならば、擁護と侵害の両極端なケースが考えられるからだ。何方にしても、もう少し様子を見てからカミングアウトするべきだと思う。
登録も無事済ませ、仕事の流れも知った。後は準備を整えるだけだ、二度手間には成ったが、再度職人街に足を運ぶ。今度は客として俺の装備を整える為だ。受付嬢のシャルルさんにお薦めの店を聴き向かう事にした。
工藤がギルドを出ると同時に上の階から一人のお事が受付嬢シャルルの下に近寄って話し掛けた。
「何か騒ぎが在ったようだが?」
「ギルド長。単なる新規加入の手続きをしたまでです」
「この時期にか?」
女性の言葉にギルド長が興味を示しだす。
「ハイ。この時期にです。春先に土地を得られなかった農家の息子達。才の無い落ち零れの商人の子息、初夏の頃では訓練に脱落した騎士団の訓練生。新人と言えば、そんな彼らが主なんですケド今は秋口……落ち零れとはチョッと雰囲気が違う方でした」
何かを感じ取ったのか更に話を聞こうと身を乗り出すギルド長。
「他におかしな点は?」
「やけに教養が高いかと思えば、基本的な事を知らな過ぎでしたね。本人は外国から来たと言ってましたが……確かに初めて見る黄色人種の黒髪でした」
「それじゃ~まるで、御伽話だな。それにこの町で外人が初登録か……」
ヴェイルは内陸にある街だ。西の方に港町が存在するが、王都を含む幾つもの町が在る。北方面には東地区最大の町エメロスが在り南方面も内陸地で農村地帯だ。そして東方面は、険しい連山で覆われ、瘴気に満ちている。並の人の力では山々を超える事は不可能とされ、危険な魔物も多く生息していると危険視されていた。
そいう言う意味でヴェイルと言う町は監視の役目も補った場所なのだが、果たして謎の新人は一体何処から舞い込んできたんだろうとシャルルは考えて居た。
「当面その新人の様子を見ててくれ」
「判りました。一応『ドラン親方』の工房を勧めておきました」
「それは良い判断だ。何時も乍ら良い働きだよ、序でに他の冒険者との揉め事も抑える様にな注意しててくれ」
普段ギルド員のイザコザには寛大な態度を示す長が、『注意を払え』と言明して来た事に女性が驚いた。だが、それ以上の突っ込みはしない。これ以上踏み込めば、要らぬ仕事が増える。彼女の勘がそう信号を流し、諫めるのだ。
「……心得ました」
執務室に戻ったギルド長『ギャバン』は一人顎に手を置き考えた。
「雅かな。否、……だが、教会から話も無いし。まぁ~様子を見るしかないか」
本人を見て居ない無い以上、この先からは憶測でしかない。だから考えない事にする。今はまだ、大きな波にも成ってい無いからだ。津波と成るならければ、如何と言う事は無い。手練れの新人が舞い込んだだけで終わる。唯、自分でも防げない大波だった場合は……不安は感が出すとキリが無いと。
だから、ギャバンは暫く静観する事にすると決めたのだ。
時間を割いて読んでくれて有り難う