貴方の体温で。
昼過ぎの事。
突然鳴り響く携帯に驚き乍も少し嬉しそうにメールを開く。
恋人からのメール、仕事が忙しいのかあまり多くは無いが、無事ならそれでいいと思っている。
「少し遅くなる、かぁ…。」
その一言を見ると自然としょんぼりしてしまう。
折り畳み式の携帯、少し古いが使いやすいのでそのまま、携帯を折り畳み懐に仕舞うと氷でまた遊び始める。
おれは普通の悪魔だった。
氷を扱う悪魔、だがしかし人間に興味を持った。
人間の姿に変わり、人間を守り続ける事約…覚えていないねぇ。
勿論炎は無理だ、少しの熱ですぐにふらつき、火傷なんてすれば溶ける程。
でも不思議な事に、恋人の熱には耐える事が出来た。
「…イグニス…。」
まだ帰らない恋人の名前を呼び、無事に帰る事を祈る様に目を細める。
彼は炎の召喚獣だ、相性は凄く悪かったし、寒いのが無理だ。
しかし彼は、イグニスはおれを抱きしめる。
体調が悪くなるのも気にせずに。
その熱が、抱きしめられた体温が、おれを少しずつ溶かしていくように、おれは堕ちた。
今でもその時を思い出すと赤くなる。
悪魔としては歳はそこまでいっていないが外見が二人ともおじさんだ。
それでもイグニスはとても凛々しくて、かっこよくて、素敵で…。
「女々しいねぇ…おれは…。」
メールの返信は一言、"まってるよ"
ソファに寝転がり、お気に入りのクッションを抱きしめ、おれはイグニスの帰りを待ちながら、寝てしまった。
………
突然の浮遊感、そしてぬくもりに目が覚める。
寝ぼけた眼を開けると、彼の赤い髪がチラリと見えた。
「…ったく…。」
しょうがねえな、と溜息が一つ聞こえた。
「…おかえり、イグニス…。」
冷たい手で彼の頬に触れると、ぴくりと体が跳ね止まった。
優しい顔で覗きこんでくる彼に、ふにゃりと笑った。
「…ただいま、アークル。」
顔中にキスを落としてくる、くすぐったそうに目を細めているとベッドに下ろされ横に寝転がってくる。
二人で抱き合って、熱い彼の体温に、また意識が持っていかれる。
「おやすみ…。」
唇に触れる熱にまた微笑み、二人は眠りについたとさ。
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