プロローグ物語の始まり
世界の成り立ちを読んだ方が分かりやすく読めると思います。
辺境の村に朝がやってきた。
この村では、基本的に大人は、朝日がのぼる前に起き日が出た後に外に出て畑仕事などを行う。
そんな村に朝日が昇る前から小さな人影があった。
その人影は、村の広場の【魔物除けの水晶】の前で力なく倒れてしまった。
しばらく時間が過ぎ、一人の男が出てきた。
その男は、農夫というには、ずいぶんと鍛え上げられた体をしていて、片手には剣を持っていた。
男は、クリスタルの前に誰かが倒れている事に気づいた。
近よってみたら、倒れているのがまだ年端も行かない幼い子供だと気づくと、男は急いで近寄り、体に異常が無いか、まだ生きているか調べた。
目立った外傷は無かったがひどく衰弱していたので男は、朝の日課である剣の素振りを行うのをやめて、すぐに子供を抱きかかえ家に戻った。
家では、男の妻が朝ご飯を作っている最中だった。男の妻も女性というには、ずいぶんと鍛えられている体をしていて纏っている雰囲気は、どこか楽しそうだった。
妻は、男の方を振り返り男を見た。そして、すぐにいつもと違うことにきずいた、男の腕には、子供が抱かれていたからだ。その見慣れない光景に妻が状況についていけてないと、男が妻に向かってこういった。
「すぐに、柔らかくした食べ物と、体を温めるものを用意してくれ。」
と言った。
村はそこまで大きくないので、村の子どもの顔は、全員覚えていたが、自らの夫である男が壊れ物の様に抱いている子供には見覚えが無かった妻は、困惑しながらも夫の言った通りに準備をした。
すぐに、普通に炊こうとしたコマイ(米のような食べ物)をお粥にして、お椀に入れた後、毛布など、体を温める物を持ってきて、夫がベッドに寝かせた、その子供(男の子だったので少年)に掛けてあげると、タイミングを見はからったかのように、何があったのかを話し出した。
「広場で倒れていたのを見つけて、弱っていたからつれてきた。」
と言いながら、少年の頭を撫でた。
その話しを聞いて妻は、自分が今の話で抱いた疑問を言ってみた
「てことは、孤児なのかしら?」
最近は、魔物が活発に活動しているので、その影響で親とはぐれたのではないか、と考えていた。
「いや、たぶん孤児である可能性は、あるが理由はお前が考えているような感じではないと思うぞ。この子は、たぶん捨てられたんじゃないかと俺は思う。」
と夫は答えた。
それを聞いた妻が「なんで、、」と反論しようとした所で夫は、子供の頭の部分、髪を指差した。
「あっ、、、」妻は今頃になってじっくりと見て気づいた、その子は、顔の形が整っていて綺麗な男の子なのだが、
これだけなら問題は無かった、これだけなら。男の子の髪と眼の色は全て、何もかもを吸い込むかのような、逆に何もかもを拒絶するかのような黒色だった。黒色は大半の人間や亜人などからは、忌避し忌み嫌われていた。原因は、世界の成り立ちに出てくる、闇ノ神の行動が主にその理由だった。
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この世界ヨルムガルでは、最初の神は、5柱いた、これは創世ノ神ヨルムを除いた数である。ヨルム亡き後、世界を完成させた5柱の神たちは、地上に無数の生き物を召喚していた。5柱の神達にはヨルム無しでは、生き物を創ることは出来なかった。そこで別の世界から生き物を呼び寄せていた。その結果地上には、無数の生物が終わりの無い生を謳歌していた。このせかいには、寿命という概念が無かった。これに対し怒った神がいた。
それは、闇ノ神アゼルだった。
アゼルは、まず死者がくるべき場所【冥府】を創り、その次に、世界を覆っているヨルムの遺骸を少し使い、魔物を創った。寿命の無い生物を殺すには、圧倒的な力を持つ魔物が必要だった。そうでなければ神々の創りし【龍・竜】とその眷属たちに負ける可能性があったからだ。そうして創られた魔物は無数の魔物を生みなおかつ【龍・竜】にも負けなかった。その強さは、ヨルムが創った【竜】始祖竜に、勝るとも劣らない強さだった。アゼルは、その魔物に名前を与えた【死の獣】と呼んだ。
アゼルには一人で概念を創る事が出来なかった。概念を創るにしても、ヨルムの力が必要だった。
その後の世界は、混沌の時代を迎える。死の概念が無いために終わりなき死と生の繰り返しが行われた、【冥府】は、死者が溢れんばかりに来たと思ったら。すぐに生き返る。この繰り返しだった。
アゼルは最初は「うまくいった」と喜んだが、思っていたようにいかないと知ると、他の神々と同じく困ってしまった。「このままでは、いつか世界が終わってしまう。」と悩んだ神々は考えた末に、光ノ神ライズに、【冥府】の対となる場所を創る様にたのんだ。
その名を、【天界】と言う。
普段神々がいる【神界】に酷似しているが役割としては、死者の選別や世界の生物達の寿命などの決定などを目的としている。神々は、ライズが天界を創っている間に死の概念を創った。この行動のおかげで混沌の時代は終わりを迎えた。
そして、役割が無くなったデニクスは、神々により誰も来ないような場所に封印した。
だが、デニクスがいなくなっても、魔物は、出現し続けた。
すでに世界には、魔物という概念が存在してしまっていた。
いつの間にか出来ていた概念、実は、アゼルは死の概念を他の神々と創る時に、こっそり魔物の概念を付け加えていた。
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これらの行動により、闇ノ神アゼルの象徴である黒色とは、忌み嫌われている。人間の子供でもし黒の髪をもっていたら、すぐに殺されるか、忌み子として虐げられるかのどちらかしかないという。だがこの夫婦は、
「おれは、引き取りたいと思うんだが、お前はどうする?」
妻の方を真剣な眼差しで見つめる夫、それに対し妻は、
「わたしは、別にいいと思うよ。髪が黒だろうと何だろうと獣人なのに人と結婚した私はすでに大人からは嫌われているからね、それにね、家族は多いほうがたのしいよ。」
と言いながら。いつの間にか作り終えた朝ごはんとお粥をテーブルに置き、三角巾をとったら中から愛らしい虎耳がピョコっと出てきた。
「そうか。じゃあとりあえずは、朝飯をくうか!。」
「ええ、わたし特製お粥を食べればきっとこの子もよくなるよ。」
「そうだな。じゃあ食べさせてやるか。」
これが、辺境の村の夫婦でSランクの冒険者レオと冒険者ミーサの養子になった少年【リュウ】との出会いから家族になるまで、そしてこれから数年たった後に物語は、始まる。
読んでいただき有難う御座います。