初めての戦い
この街道は古く、周りを森に取り囲まれている。その街道を話しながら歩いている二人。そこを根城にする山賊たちには格好の的に見えたのだろう。
ひゅん、と空を切る音がした。ディドはメイリンを抱いて飛びすさった。
「なに?」
抵抗しようとするメイリンにしっと口をふさぐと何かを察したようだった。
姿の見えないものとの緊張した時間が続く。その空気を破ったのは向こうだった。
「こんなところに二人きりで来る方が悪いんだよ」
そういって山賊の一人がディドに向かって切りかかった。ディドは、いつ抜いたのかわからない短剣でその長剣をはじいた。
「なっ……」
剣をはじかれた山賊は一瞬驚いた表情をしたが、すぐにまた気を取り直したようだった。すぐさまメイリンに向かっていった。
メイリンは驚いて逃げようとした、が、何かをディドにささやかれたと思うと急に山賊に対して向き直った。
「やる気か」
それには答えず、目をつぶって詠唱し始めた。
「その目は人にあらず、神のものなり。その耳は人にあらず、神のものなり。その口は人にあらず、神のものなり。その手足は人にあらず、神のものなり。その心は人にあらず、神のものなり。悪魔よ、呪いの代行者よ、我に代わり、その痛みを授けよ」
それは、店主ヨーリがメイリンに教えた呪いをするときの言葉だった。それは、神、悪魔の力を借りて行うもの。ヨーリが教えた言葉は、神の力を借りて悪魔に命令するという、難易度は高いが、負担の比較的少ないもの。それを知ったディドは、それを言うようにメイリンに言ったのだった。
「ヨーリから教わった呪文を使って」
その呪文を聞いた山賊は一目散に逃げだした。
「こいつ、呪術師か」
というつぶやきを残して。