メイリンの出自
「まあ、俺の任務はメイリンちゃんを探し出して王都に連れて帰ることなんやけど、そんな気が無くなってしもうたな。だってメイリンちゃん、なんも知らへんもん」
「ちょっとまって。騎士って何?わたしにはおとうさんがいるの?一番偉い人は王様じゃないの?」
「あんな、メイリンちゃん、落ち着いて聞いてほしいねん。この国には今王様がおらへん。なんでかは俺らみたいな地下人には分からへんけど。
それで今、騎士のイェルツ様が政権を握ってはる。イェルツ様はいいお人や。俺らみたいな人のことをちゃんと考えた政治をしてくださっている。
せやけどそれをよく思わない輩もおんねん。それで今、王都の政治はめちゃくちゃや。イェルツ様がどれだけよくしようとなさっても、結局は貴族がかき回して、平民のところに来るときはもう最低やねん。税は二重にとられるわ、土地は追い出されるわ、さんざんやねん。
一部はほんまにイェルツ様がいい人やって知ってるけど、多くはイェルツ様が暴虐な為政者やと思てる。やから、メイリンちゃんがイェルツ様の娘やと知られたら恨みの対象になりかねない。しかも一部の人にはメイリンちゃんの名前は知られてる。
というわけで、今からメイリンちゃんは俺の弟子や。俺の弟子のメイ、やな」
最後は思いっきり明るく言ったディドに、メイリンはついていけず、目を白黒させただけだった。
「今はまだわからんでもええ。いずれ分かってくれたらええから。とりあえず、これからは、メイと名乗るんやで」
メイリンは首肯した。それをディドは満足そうに見ていた。
「ようし、ほんならさっさと行くで」