出立
次の日、メイリンはディドに自分もディドと行く旨を伝えた。
ディドは微かに笑い、メイリンに旅支度をさせた。
「さあ、行こうか」
ディドの声に、メイリンは首肯した。
「俺は護衛者だ」
耳慣れない単語に、メイリンは首を傾げた。
「その文字の通り、商人や、旅人を護衛する者だ。だから、俺がメイリンちゃんを守るから安心してええねんで」
メイリンは黙っていた。今までには全く知らなかった世界が目の前に開けていく。
その彼女の沈黙を誤解したのか、ディドは慌てていった。
「まさか俺、信頼されていない?それはそれで哀しいねんけど」
そういう意味ではないと、メイリンはディドに伝えたかったが、どうやら伝わりそうになさそうだ。
「不安やったら俺の仲間の紹介したるで」
優しくいってくれるディドにメイリンは心から感謝した。
「ありがとう」
ディドは恥ずかしいのか、すぐに真っ赤になった。
「そんなん言われんでもメイリンちゃんの気持ちは分かっとる。だからお礼なんか言わんといて。
俺が勝手にメイリンちゃんを連れ出しただけやから。メイリンちゃんから、安定した生活を奪ったも同然やから。
嫌になったらいつでもいうてな。メイリンちゃんのいたところまでいつでも戻るから」
「……ありがとう。本当に、ありがとう」
ディドはますます困惑したようだった。
「わたしは、あの場所に甘んじていただけだから。
別な世界が見えてよかった。あのままあそこで一生生活していたら、得られなかったもの、見えなかったもの、たくさんあると思う。これから、それをいっぱい見たいと思うの」
メイリンが伝えると、ディドも笑った。
「せやな。そうすればええねんで」