メイリンの失踪
山賊が逃げ帰った後、ディドはメイリンに言いきかせた。あの呪文はめったに使ってはいけない、と。次の街で呪術師の師を探すから、そこでもっと負担の少ない呪文を学びなさい、と。
呪術師が何なのか、分からなかったメイリンはディドの言葉にうなずきかけて……あることを思い出した。
「そういえばディドさん、時間は大丈夫なんですか?」
「それは気にしなくてもええよ。何とかする方法はなくはないから」
「それならいいですけど……」
「それより今晩は野宿やけど大丈夫?」
気づかわし気に聞いたディドにメイリンは笑って言った。
「大丈夫よ。だって、ヨーリさんに拾われる前はそれが当たり前だったもの」
なら大丈夫やな、と言って野宿の支度をするディドに早くないか聞くと、もう日が落ちる直前だという。
それなら仕方ないかと思い、メイリンは黙ってその支度をするところを見ていた。
「ねえ、わたしにできることはない?」
そう聞いてもメイリンちゃんにはさせられへん、というだけ。つまらなくなってきたメイリンは、ディドには黙って少し周りを散策することにした。
野宿の支度が終わってメイリンを呼んでも返事がないことをいぶかしんだディドは、顔を上げたが、メイリンの姿はなかった。
「油断してたな。メイリンがお転婆だってこと、忘れてた」
ディドは周辺の森から探すことにした。ただ問題は、いつからいなくなったのかが分からないということだ。
「全く、人騒がせなお姫様だ」