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リ=ヴァース・ファンタジア  作者: 白雨 蒼
一章『カーニ=ヴァル・ベル』
10/34

Act9:異邦への扉

  

 三日月の刃が閃くたびに、無数のポリゴンが虚空へと四散していく。舞い散る光の破片はさながら桜の花びらのように中空を漂い、やがて粒子となって掻き消える。

 一閃、また一閃と刃が飛び交い、斬撃を生む。その斬撃の軌道の先に必ず標的が存在し、その一刃の下に命を散らしていく情景は苛烈の一言に尽きた。

(……頼もしいな)

 胸中で呟きながら、白と紫に彩られたドレスに身を包む少女の討ち漏らした蜥蜴人(リザードマン)系のモンスターへ向けて、ヒュンケルは無造作に銃口を突き付けて、銃爪(トリガー)を引く。

 ガンッ! という音と共に吐き出された鉛の弾が異形の急所を貫き――昏倒(ノックダウン)。体勢を崩しその場で動きを止めたモンスターへ、ヒュンケルは立て続けて銃爪を引いた。

連続して射出される弾丸が雨の如く異形の身体を次々と撃ち抜く。無防備なところを立て続けに銃撃され、赤い鱗のリザードマンは僅かな絶叫と共にその身を爆散させ、少女に屠られた同胞と同じ末路を辿った。

「まったく……数ばかりは無駄にいる。流石はダンジョンといったところか」

 ぼやきつつ、ヒュンケルは銃尻から弾奏(マガジン)を排出し、新しい弾奏を装填する。ゲーム時代ならば弾奏の排出から装填するというその作業はボタン一つで出来たというのに、異世界と化してからはそれらの作業が手動になったのは、ヒュンケルにとって面倒事の一つだった。

 それでも最早数百数千と繰り返した作業。一連の作業を終えるまで一秒とかからず、ヒュンケルは《竜牙の黒銃》を徐に構えて狙いをつけると、迷いなく銃を撃つ。

 標的は前方。無数のモンスターを相手に優雅に舞い、鎌を振るう少女の背後。その少女へ今まさに飛びかかろうとする醜い小鬼(ゴブリン)

 マズルフラッシュと共に一直線に放たれた弾丸は大気を切り裂き、銃声が響く頃には疾うにゴブリンの後頭部を貫いていた。

 背後からの奇襲。しかも頭部という急所を撃ち抜かれたゴブリンは「ギャワ!?」という奇妙で短い悲鳴を残して地面へ伏せ、そのまま音もなくポリゴンの欠片となって消滅する。

 そんな死に様には一片も目を繰れず、ヒュンケルは今も舞い続けるユウへと淡々と言葉を投げた。


「後ろがお留守だぞ、《死神》さんや」


 そんなヒュンケルに対して、ユウは酷く嬉しそうに口元を綻ばせて笑う。


「それくらい守ってくれるでしょう? それとも、リューグじゃないと援護もしてくれないのかしら? 《賢人(さかびと)》さんは」


 返ってきた言葉に、ヒュンケルはむっと眉を顰めて言葉を詰まらせると、その様子を見たユウは、してやったりとますますその笑みを深めた。

 その間も、少女の舞は止まらない。

 三日月の刃による殲滅は終わらない。


 ――《死神》の処刑は、なんびとにも阻まれることなく遂行され続けていた。


 流麗たる舞。決して早くもなく遅くもなく、ゆるりとした速度で少女が回転する。その円舞に合わせて、膝丈ほどのスカートのフリルがふわりと踊った。鮮やかな銀髪が揺れ、その間から時折覗く淡い微笑。

 何処ぞの舞踏会の中心で踊っているかのような錯覚すら覚えるほど艶やかなその舞姿に、先ほどまで憮然としていたヒュンケルすら思わず短観の声を漏らすほどだ。

 無論、此処はそのような華やかな場所ではない。

 閑散としながら騒然とした、異形の群れる荒廃した古城の広い廊下だ。

 そのもの寂しく、そして物々しい古城の廊下で少女が舞い踊るたびに、彼女に切りかかり、あるいは殴りかかろうとした異形たちの首が飛び、身体が輪切りになる。

 一切合切容赦のない惨殺。《死神(ユウ)》を中心とした、死神の鎌の織りなす死の舞踏が繰り広げられ続ける。絶命して四散する、異形たちのポリゴンの破片の中心で、異形たちの断末魔(バックコーラス)に包まれながら少女は刃を振るった。


「――邪魔よ」


 淡々とした声音で、少女が異形の群れを断ずる。その手に握る大鎌が、鮮血の赤色(ブラッディ・レッド)のライトエフィクトに染まった。

「死に踊りなさい!」

 怒号と共に、少女が鮮血の色に染まる鎌を大きく振り上げる。その渾身の振り上げに引き寄せられるように、少女の前方の地面が真紅の輝きを放ち――転瞬、巨大な血色の三日月刃が無数に飛び出し、進行方向に立ちふさがっていた無数のモンスターたちを一気に掬いあげ、あるいは切り上げた。

 ――大鎌奥義アーツ・スキル、《紅い月の斬(アルアラーフ・コルモゼィ)》。

 紅の刃が無数に吹き上がる。

 血染めの斬撃が幾体の異形を穿ち――容赦なく切り刻み、光の粒子と化して霧散していく。

「大鎌のアーツ・スキルってのは、見た目派手なの多いわな……」

 背後に忍び寄ってきた異形に銃弾を叩き込みながら、ヒュンケルは肩を竦めた。

 呪葬鎌使(デスサイズ)は習得するスキルなどの威力も総じて高く設定されており、同時にその見た目(エフィクト)も派手なものが多い。より上位や奥義のアーツ・スキルとなれば、技の演出は非常に派手だ。

 石畳みから噴き出す真紅の刃に穿たれ霧散する異形。その中で、

「ほう……」

「あら……」

 二人が感心したように声を漏らした。ユウの放った《紅い月の斬》を受けなお、息をしている異形がいた。

 無数の斬撃が消失し、真紅の輝きに彩られていた壁や床、天井が元の薄暗い闇に戻る。


 ――びちゃり……


 刃に穿たれ、中空に打ち上げられていた異形が床へと降り立つ。同時に空間全体に異様に響き渡った水音。

 最早この近日で耳慣れたその音に、ヒュンケルは不敵に微笑み、逆にユウは眉を顰めてその異形を見据える。

 これまで見たものの中で、どれにも類さない姿をしたその異形は、ゆるりとした動作で上体を起こした。その黒い体躯に穿たれた無数の風穴が、徐々に塞がっていくのを見て、ヒュンケルは口笛を吹く。

「これはまた……致命傷すら回復する域に至ったか」

「相手にするのが怖い?」

「まさか」

 視線すら異形から逸らさず尋ねるユウの言葉に、ヒュンケルは苦笑と共にかぶりを振った。

「ただ少々――面倒臭いだけだな」

 台詞と共に、ヒュンケルの右腕が閃く。脳裏にスキルウィンドウを開き、スキルを選択すると同時に銃爪を引く。発動するのは拳銃(ハンドガン)下位アーツ・スキル《ソニックブリッド》。右手に握られた《竜牙の黒銃》が咆哮する。銃口が火を吹くと共に弾丸が大気の壁を破り、それを巻き込み纏って異形へと飛ぶ。

 弾丸――《聖銀の弾丸》は銃口から発せられると同時に音速の域へと至り、衝撃を纏って異形の身体へと叩きこまれる。

 人間以外には威力を上げる付与効果を施されている弾丸による一撃。ユウの《紅き月の斬》も合わせれば、十分に必殺に至ると確信して放たれた弾丸。

 しかし、

「――……嘘だろう」

「あらあら」

 ヒュンケルが苦虫を噛み潰すような表情で言葉を吐き、ユウが僅かにその相貌を見開く。

 衝撃波を纏い放たれた弾丸は、異形の禍々しい爪の並ぶ手の平によって堰き止められていた。

「リューグか、こいつは……」

「そういえば見切るわね。彼」

 自分の銃弾を揚々と剣で弾き飛ばし、あるいは回避する友人を思い出したのか、ヒュンケルが忌々しげに呟きを洩らすと、ユウは小さく失笑して肩を竦める。

 此処ではない城内で最上階を目指して奔走している友人が、ほぼ同時刻に盛大なくしゃみをしたことなど知る由もない二人は、

「お前も同じだろう?」

「あら、なんのことかしら?」

 軽口を一度交えると共に地を蹴った。ユウが異形へと駆け出し、ヒュンケルは後ろへと大きく退く。

 ドレスのスカートの裾を風に靡かせながら、少女は一気に距離を詰めてその手に握る大鎌を振り被る。

 同時に、黒身の異形も動いた。

 長い四肢をしならせ大きく宙へと飛び上がると、それは前方へ飛び、寸前まで異形の立っていた場所へと切り込んだユウを見下ろし、彼女目掛けて腕を突き出す。

 突き出された腕が変形する。腕の先は集束し、鋭利な黒槍と化して眼下に飛び込んできたユウを襲う。

 少女の顔が驚愕に彩られ、その相貌は頭上に跳んだ異形を見上げて見開かれる。


 ――銃声(ドン)


 放たれたのは鈍色の一閃。同時に異形の身体が弾き飛び、放たれた黒槍はユウから大きく逸れてあらぬ方向へと飛び、壁を穿ってその勢いを止めた。

 放ったのは拳銃下位アーツ・スキル《ヘビーブレット》。ノックバック効果を及ぼす重い銃撃を受けて大きく撥ねた異形を追撃する弾雨。薄暗闇に咲くマズルフラッシュの数だけ弾丸が叩き込まれる。


 ――ガアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!


 異形が吠える。叩き込まれる十近い弾丸を、異形は咆哮と共に全身を震わせて両腕を交差させて薙ぎ払い、そのすべてを叩き落とした。

 その情景には流石にヒュンケルは目を剥き、僅かにだがその動きを止めた。

 同瞬、一条の光の帯がヒュンケル目掛けて放たれた。

 異形の白面。その下方が、あの巨大な異形と同じように粘着音を響かせて大きく開かれる。

 そこから吐き出された光撃は、寸分の狂いもなくヒュンケルを捉えていた。

光が身体の中央を貫く寸前、咄嗟に身を捻って直撃は逃れるも躱しきることが出来ず、右の脇腹が強い熱を発する。

「――ぐっ……」

 負った傷を左手で抑え、ヒュンケルは眉間に皺を寄せる。


「――貴様!」


 瞬間、ユウが激昂と共に異形へと肉薄した。十メートル近い距離を一気に詰めるとともに、少女は両手で握る大鎌を容赦なく異形の黒身へ振り下ろし、死を齎す三日月刃を注ぐ。

 狩る――という言葉を体現する刃が異形の身体を捉え、

「はあっ!」

 ユウは渾身の力で異形を投げ飛ばす。その小柄の対格には不釣り合いな膂力が、長大な異形の身体を彼方へ飛ばし、壁へと叩きつけると、少女はそのまま異形になど目も繰れずヒュンケルの下へと駆け寄る。

「ヒュンケル、無事!?」

「ん、ああ。この程度はかすり傷に過ぎない」

 当惑するユウをよそに、ヒュンケルは至極冷めた態度で応じながらウィンドウのアイテム欄から傷薬(ポーション)を取り出して、それを無造作に傷口に振りかけながら立ち上がる。

 ポーションのかけられた傷口が淡く光を帯び、そこに生じていた裂傷は瞬く間に塞がっていくのを確認し、ユウが安堵の吐息を洩らすのを見て、ヒュンケルは僅かに渋い顔をして――ポンポンと少女の頭を叩いた。

 彼の予想外の行動に虚を疲れたのか、ユウは両目が零れ落ちそうなくらい見開いてヒュンケルを見上げた。が、彼はその少女の視線とは目を合わせようとせず、その真紅の双眸を異形へと注ぐ。

 そんな彼を見て、ユウは、


「――これがデレ……ふふふ」


 という呟きと共にくつくつと忍び笑いを漏らすのを耳にし、寸前の自らの行動を後悔するヒュンケルだったが、その後悔の念は異形の挙動によって瞬く間に消失した。

 同時に耳朶を叩く、ミシ……という鈍い音。

 ヒュンケルは目を細めてより異形を凝視し、その音の意味を把握すると、舌打ちと共に肩を慄かせた。

「進化する……か。限度を知れと、言いたくなるな」

「どういうこと?」

「すぐに分かる――横に跳べ!」

 ヒュンケルが叫ぶと共に横へと飛ぶのに合わせ、ユウは反射的に彼の言葉に従い真逆に飛ぶ。

 次の瞬間、先ほどまで二人が立っていた場所を穿つ無数の衝撃。ユウの視界がそれを捉え、少女は驚愕する。

 穿ったのは銃弾だった。黒い――深淵の闇のような漆黒の弾丸。それを視認したのと同時に、ユウは視線を穿たれ弾けた床から異形へと移動させ、そして絶句する。

 異形の身体。その両肩に隆起する不気味な筒状のそれを黙視し、まさかと思いながらその名を口にした。

「銃……身?」

 半ば無意識に呟かれたその言葉に、ヒュンケルは冷や汗を頬に伝わせながら首肯した。

「そうだ。大口径の長銃身(ロングバレル)が六つ、奴の身体に出来上がった」

「そんなこと、可能なの? モンスターが?」

 かつて自分で異形の進化を推測しこそしたが、流石にここまでの変異は想定の範囲を超えていたのだろう。ユウはいぶかしむようにヒュンケルに問いかけるが、彼は銃の弾奏を交換しながら、

「論より証拠が――今、目の前にいるだろう?」

「現物を見ても信じ難い光景ね」

「何を今更――」

 ユウの答えに、ヒュンケルは嘲るように鼻で笑う。

「ゲームの中に俺たち(プレイヤー)が取り込まれる――それを考えれば、もう何が起ころうと不思議じゃあないだろう」

「それはそうだけど……」

 ユウが不満気に顔を顰めて言う。

「あのモンスターはもう、その範疇を超えている気がするわ」

 少女のその指摘に、ヒュンケルは一瞬返す言葉を失う。「むっ」と一言漏らしたまま沈黙し、やがて、

「だがどの道、することは変わらないさ」

 厳かに告げると、ヒュンケルはためらいなく銃爪を引き、銃口が吠える。同時に彼は左手を翻し、虚空より魔道書を具現させる。

「徹底した殲滅――それに限る」

 そしてヒュンケルは脳裏のスキル欄から一つの魔術(バースト・スキル)を選択し、一拍置いて言葉を紡いだ。

「――我、願い乞うは煉獄」

 選択したのは上位バースト・スキル《プルガトリオ・ベーゼ》。スキルを選択すると同時に、ヒュンケルの手にする魔道書のページが高速で捲り上がると、彼を中心として無数の文字がその周囲を踊り、同時に眩い赤の煌めきに包まれた。

 飛び交う無数の文字羅列――その最中、ほんの一瞬の間浮かび上がる文面を、ヒュンケルは余すことなく読み解き、それを言葉と変えて読み上げていく。

「汝、(いずる)は地の底。

 大地の彼方。

 命ある者決して望まぬ、世の淵に満ちる不変の(くれない)――」

 MMORPGである〈ファンタズマゴリア〉には、詠唱というものは厳密に存在しない。ゲームのシステム上、バースト・スキルの発動までにかかる溜め時間のことを俗にそう呼ぶに過ぎない。

 本来ならば、ただスキル欄に表示されているスキルをボタン一つで選ぶだけで、後は自動で溜めから発動までの一連の動きをシステムが行うだけ。

 だが、異世界と化したこの〈ファンタズマゴリア〉では、ユウの使う《音鳴詠唱(サウンドキャスト)》が変化を齎したように、上位の魔術に組み込まれたのは――浮かび上がる文の詠唱。

 上位、あるいは最高位バースト・スキル発動と共に周囲に、あるいは魔道書に浮かび上がる文面を口頭で読み解くことでそれを詠唱とし、魔術の発動を促すという、ただのゲームプレイヤーからすれば随分と難易度の高い仕様だった。

 ただし、ヒュンケルにはこれを簡略化する術がある。それも彼にだけ行使することの出来る、ゲーム時代でも異世界と化した現状でもあり得ない――仕様外(イレギュラー)の技。代償(リスク)はそれないに大きいが、それを行使すればこのような面倒臭い詠唱などする必要はない。

 だが、


(――たまには、後衛職らしく振舞おう)


 そう胸中で呟き、不敵に微笑みながら詠唱し続ける。

「――常闇及ばぬ冥府の片隅。

 響き渡る亡者の呻きも諸共に。

 生きも朽ちるも(かいな)(いだ)け。

 血肉に染まれ、煉獄の猛火――」

 ヒュンケルの紡ぐ詠唱。それを阻まんと異形が飛び出すが、同時にユウがそれを迎え討つために地を蹴り、ヒュンケルへの道を阻むように立ちはだかって鎌を薙ぐ。力まかせの大振りから、形もない衝撃波が走り異形を襲う。

 回避することもせず猛進する異形が、全身に幾つもの衝撃を走らせ、僅かに突撃の勢いが止まる。

 同時に、ヒュンケルがにやりと笑んだ。銃を手放し翳す右手の先に描かれる大型の魔術陣。目が眩むほどの赤光が、薄闇に彩られた通路を容赦なく呑み込み、そして――


「――《闇すら喰らう業火(プルガトリオ・レーゼ)》!」


 ヒュンケルの大音声を皮切りに、異形の足元から周囲の赤光をも飲み込むような真紅の炎が立ち上った。

ユウが寸前に飛び退き、同時に炎に呑まれた異形が絶叫する。

 吹き上がった炎はその勢いを留めず、異形を蹂躙するかのように躍り――そしてその存在そのものを喰らう。

 銃撃をものともしなかった再生能力も追いつかないほど、超高温の炎が再生する間もなくその全身を焼却し、焼滅へと導く。

 十秒もしないうちに人型の異形は煉獄の炎によってその身を焼かれ、灰燼と化したのち霧散する。

 その様子を特等席で見ていたユウは、しばし呆然と異形が佇立していた場所を凝視し続け、やがて背後のヒュンケルを振り返って、

「こんなことしなくても、伝説級武具(レジェンタリーウェポン)を使えば済んだと思わない?」

 と尋ねると、彼は僅かにため息を漏らして答える。

「この先何があるか分からないのに、おいそれと使ってられるか。リューグの()は違ってMP消費が激しいんだ。《貫く王の雷槍(グングニール)》と《魔眼穿つ砲銃(タスラム)》は」

「不憫――いいえ、不便ね」

「うるさい」

 からかうように告げるユウに、ヒュンケルは不機嫌そうに言葉を返しながら歩き出す。

「さっさと進むぞ。これ以上面倒が起きる前にな」

「ええ、そうしましょう」

 ヒュンケルの言葉に、ユウはにこりと笑んで彼の後に続いた。


◆     ◆     ◆


「ちょっ、まー! なんだよあの数、わけわかんねー!」

「黙れ、うるさい」

 ウォルターの情けない絶叫をフューリアが一刀両断する。叫んだ青年は少女の冷淡な対応に思わず息を呑み、やがて「……はい」と短く答えた。

 その彼の様子に呆れ気味に息を漏らし、フューリアは両の短刀を構えて大きく踏み込む。

 目前まで迫ってきたモンスターの間を縫うように駆け抜け、すれ違いざまに刃を滑らせる。走る刃を通して手ごたえを確認し、視認することもなくフューリアは宙へと舞い、身体を反転させると、何もない虚空を蹴って床へ――即ち眼下に居並ぶ、今まさにすれ違った異形たちへと切り込んだ。

 絶対的な死角からの強襲。更に寸前の斬撃によって蓄積されたダメージによって、異形たちのHPは瞬く間に削られ致死量(ゼロ)へと至り、モンスターたちは悲鳴と共にポリゴンとなって四散する。

「ひゃー、すげーな……」

 鮮やかな剣閃に、ウォルターが感嘆したように吐息を漏らす。しかしフューリアはそんな称賛など気にも留めずに疾走する。

「さっさと行くぞ。時間が惜しい」

 ついてこれなければ置いていく。言外にそう告げると、ウォルターは慌てて彼女の後に追随するため走り出した。

「遅いぞ!」

 走り出してすぐに飛んだ叱咤に、ウォルターは全力で走りながら叫ぶ。

「おまっ! 全クラス最速と呼ばれるほどの敏捷度補正受ける隠刀士(スカウト)と後衛職の魔祓師(エクソシスト)の走る速度を一緒にすんな!」

 返ってきた言葉に、フューリアはむっと眉間に皺を寄せて嘆息する。ただし、それは互いのクラスなどによって生じるステータスの成長率などを理解して自責したわけではなく、

「文句の多い男だ」

「どうして今の説明で、俺個人が悪いという結論に至った!?」

 端的に彼への評価を定めたからに過ぎず、漏らした言葉にウォルターは激怒した。

が、フューリアはそれを無視してさらに加速し、脇道から現れた骸骨の戦士(スケルトンウォーリアー)へと短剣を叩き込む。

 骸骨の戦士が強襲に怯む。フューリアはそこに生じた隙を逃さず、身を低く屈めて足払いし、体制を崩し無防備になったその頭蓋に短剣を突き立てて粉砕する。

 そうしてモンスターが絶命したのを確認すると、少女は振り返ってようやく追いついたウォルターへ、

「ほら急げ。次が来る前に抜けるぞ。鈍間」

「誰が鈍間だ!」

 辛口かつ辛辣に投げかけられた言葉に、ウォルターは青筋を立てながら怒号し――次の瞬間、その相貌が鋭いものとなってフューリアへと飛びかかった。

 突然の動きに、フューリアは意表を突かれて反応が遅れる。油断し切っていたといってもいい。まさかこの男が、パーティを組んだ相手に怒りに任せて攻めてくるとは思ってもいなかったのだ。

ましてやあのリューグやヒュンケルが、なんやかんや言いながらパーティ入れを強行するような人物だ。そのような卑怯な真似をするとは想像もしていなかった。

(くそ!? 防御が間に合わない!)

 とっさに両手を動かしてウォルターの攻撃を阻もうと試みるも、すでに彼は目前へと迫り、その手に握る十字杖が振り下ろされようとしていた。

 襲い来る痛みを想定して目を塞ぎ、歯を食いしばる。

――しかし、いつまで経っても想像した痛みが身体に走ることはなく、それどころか、


「ぼーっとすんな!」


 という叱責の声と共に、背後で何かを強打する音が耳朶を叩き、フューリアは慌てて眼を開いて背後を振り返れば、先ほど倒したはずの骸骨の戦士が起き上がっていた。

 ウォルターの十字杖は、その骸骨型のモンスターを殴り飛ばし、続けて術の準備へと移っていた。その全身が眩い輝きを放つ金色のライトエフィクトに包まれ、同時にモンスターを捉えるように《円陣(サークル)》が具現し異形を束縛する。


 ――《聖浄術(ホーリースペル)》。魔祓師のみが行使することの許される、不浄なる魔を諌め、清め、祓う秘術。


 二言三言、ウォルターが言葉を口にし、術は完成すると、彼は不敵な笑みと共にその秘術を解き放つ。

「消えとけ!」

 ウォルターが吠えると共に、骸骨の戦士を捉えていた《円陣》が閃光を放って爆発する。光の衝撃に飲み込まれた骸骨の戦士は絶叫し、同時に光に包まれて跡形もなく消滅(ロスト)した。

 その情景を半ば呆然とした様子で見守っていたフューリアに向け、ウォルターは振り返りながら、

「おたく……不死(アンデット)(タイプ)のモンスターは倒した後に《聖水》ぶっかけないと倒せないって言うお約束(セオリー)忘れてんのか?」

「あ……」

 開口一番に告げられたその言葉を聞いて、フューリアは夢から覚めたような間抜けな表情でそう一言漏らした。

 不死系のモンスターはただHPをゼロにし倒しただけでは消失しない。物理攻撃で倒した後、不死系モンスターは他のモンスターと違って、HPがゼロになってもしばらく活動を停止したのち復活するのだ。

 そのため倒した後、活動停止している時間内に消耗品である《聖水》をかけないと消滅はしないという特性を持つ。

 他の方法としては、魔術による攻撃、光属性を付与(エンチャント)した武器での攻撃、あるいは魔祓師の《聖浄術》によってのみ消滅する、それらの手段を持たない場合、相手をするのは非常に厄介というのが不死系モンスターの特徴だ。

 そのことを失念していたフューリアは、自分の失態にばつが悪そうに顔を顰めて項垂れた。

 少女のその様子を見て胸中を悟ったのか、ウォルターはにたりとからかうような笑みを浮かべて、

「しっかりしてくれよ、前衛さんよ」

「後衛さえまともなら、しっかり出来るんだけどね」

「だからどうしてお前らは俺の扱いがそんなぞんざいなんだよ!?」

 返ってきた辛辣な言葉に、涙目で訴えるウォルターの様子に肩を竦め、フューリアは半眼で彼を見据えながら、

「普段の行いが悪いんじゃない?」

 と短く返して歩き出す。

「俺が何をしたって言うんだよ……」

 ほろりと涙を流しながら項垂れ、大きくため息を漏らしながら少女の後を追うウォルターは、徐に頭上を見上げて、続けて周囲に視線を巡らせ――唐突に口を開く。

「……しっかし、この城ってこんなに薄気味悪かったっけか? ゲーム時代にプレイしてた時は何度も訪れたけど、ここまで暗くはなかったし、広くもなかったと思ったんだけど――」

「まあ……そうだな。でも、それは此処に限ったことじゃあないさ」

 ウォルターの指摘に、フューリアは同意するように辺りを見回しながらそう言った。

 間髪入れず、ウォルターが問う。

「それって、どういうこと?」

「私もよくは知らないけど、ゲーム時代に存在していたダンジョンのほとんどが、ゲーム時代のマップよりも遥かに広大になっているんだそうだ」

 聞いた話だがな――そう付け加えながら、しかしそれが事実であることを、幾つものダンジョンを探索してきたフューリアは知っている。


 かつて――まだ〈ファンタズマゴリア〉が異世界と化して間もない頃、初心者向けに設定されているダンジョンに彼女が訪れた際のこと。ゲーム時代で通い慣れ、三ケタに届くほど攻略したそのダンジョンを潜っていた時に気づいた最初の違和感は、ウォルターの感じているそれだった。


 ――広い。


 そう。かつてゲーム時代の〈ファンタズマゴリア〉で体感していた時のダンジョンの広さよりも遥かに広い。そう感じたのだ。

 無論、最初は気のせいだろうと高を括っていた。

 だが、潜れば潜るほど、進めば進むほど、その違和感はより大きなものとなり、日が傾きかけた辺りで、ようやくフューリアは自分の陥っている状況を把握した始末。

 慌ててきた道を戻り、何とか入口に辿り着いた頃にはすでに日が沈んだ後。拠点への転移用魔術道具(マジックアイテム)を使い帰還する破目になったのだ。

 そうして帰還して数日、聞けば皆が同じような違和感を覚えていることを知り、後に一部のダンジョン攻略者によるダンジョンの肥大化が判明するまで、多くの《来訪者》が当惑することとなったのは異世界化して間もない頃の苦い思い出だ。

 そんなフューリアの胸中など知る由もないウォルターは、何処か納得したという様子で頷いていた。

「なるほどな。どーりで想像より広く感じるわけだ。ふーん……肥大化……ね」

「お前、そんなことも知らなかったのか?」

 ウォルターの零した言葉に、フューリアは疑問を抱いてそう尋ねた。自分と比べても遜色ない戦闘技術に、文句は多い割に的確な判断と行動力を持っている彼なら、それ相応のダンジョンも踏破しているはずだと容易に推測出来る。

 しかし、彼は苦笑と共にかぶりを振った。

「知らなかったんじゃねーの。単に気づかなかったってのが正しい」

「はあ?」

 ますます訳が分からなかった。どうしてこれほどの実力を持っている人間が、もはや共通認識とすら言えるダンジョンマップの肥大化を認識していないのか。

 しかし、その疑問はすぐに解消された。

 ウォルターが何処か申し訳なさそうな笑みを浮かべて、頬を掻きながらその答えを口にする。

「――俺、ダンジョンの探索とかは大体、リューグやヒュンケルについてってたんでねー……」

 何処か虚ろな目をし、諦観したように口にした言葉二、フューリアは彼と似たような表情で納得の吐息を漏らした。

 リューグとヒュンケル。

 その名を上げるだけで、どういうわけか無条件で納得してしまうから不思議だが、あの二人とパーティを組めば、並大抵のダンジョンに手惑うことなどまずあり得ない。


 ――何せ、廃人(ジャンキー)なのだ。


 彼らと言う存在は、他の《来訪者》とは一概を成す異端存在だというのが、フューリアの認識の一端に存在する。

 皆が命がけで、必死になってもがきながら攻略に身を投じる中で、彼らからはその必死さというものが欠如している。それどころか、この状況を楽しんでいる節すらあるように、フューリアには見えた。

 無論、彼らと交流があるフューリアには、リューグたちが真剣に現実への帰還を考えているのは知っている。そのために日々各地を奔走していることも含めて、ユウを通じて幾度となく交流しているから分かってはいるのだ。

 しかし、それを踏まえた上でなお、彼らはこの状況に並みならぬ興味を抱いているのは確かだと、フューリアは確信している。

 それ故に、彼らは他の《来訪者》と違い躊躇いがない。

 未知へ踏み込むことへの恐怖もない。

 多くの《来訪者》は、僅かなHPの減少すら恐れている。HPの減少は、そのまま死へ直結するからだ。

 少しで――それこそ最大HPの数値から『10』減少するだけで、慌てて回復をするほどに。

常にHPは満タンに。万全の状態で挑む。それが鉄則とすら言わんばかりに、多くの《来訪者》は自身のHPに気を配りながらダンジョンに挑む。

故に、ひとつのダンジョン攻略にかける時間は相当なものであり、短くても二日から三日。長ければ一週間以上で、最長では一月かける者すらいるのだ。


 しかし、リューグやヒュンケルにはそれがない。


 彼らは多少のHPの減少など気にも留めない。ほとんどの《来訪者》はHPの色が半分以下(イエロー)になれば大混乱するというのに、リューグやヒュンケルを始めとした一部の《来訪者(プレイヤー)》は、そこに至って初めてHPに気を配るようになるのだ。

 彼らはHPが七割を切らないと――即ち危険値(レッド)に至ってようやく回復をする。敵がボスクラスのモンスターと戦ってでもいない限り、自分の命(HP)など気にも留めないような気違いな人種なのである。


 ――まるで、命を顧みないように……だ。


 それ故に、彼らのダンジョン攻略速度は通常の《来訪者》の倍から三倍近い速度であり、初心者向けのダンジョンなど、彼らは半日もしないうちに攻略する。

 つまり、彼らはそういう存在なのだ。

 根っからのネトゲ廃人。

 たとえ〈ファンタズマゴリア〉がゲームであろうが異世界であろうが、やることは変わらない――そういう連中だった。

 そんな彼らとダンジョン攻略をしようものなら、当然ながらダンジョンの肥大化など瑣末な問題にしかないらない。

 何せ彼らは、そんな変化にすら気づかぬように当たり前のように奥へと進み、そして最奥へとたどり着いて帰ってくるのだから。

 ウォルターはリューグたちとダンジョンに挑んだなら、おそらく〈ファンタズマゴリア〉がゲームであった時代の攻略速度と大差ない時間でダンジョンを踏破したのだろう。それならフューリアを始めとした多くの《来訪者》が感じていたダンジョンの異様な広がりぶりに鈍感になるのも、ある種仕方のないことと言えた。

「――というより、よくあの二人とダンジョンに行ったね」

「いや、我ながら後悔しかしてねーよ。うん」

 同情するような視線を向けられ、ウォルターは乾いた笑いを漏らしながらそう応じ、しかしすぐにその表情を一変させ、にっと白い歯を見せた笑みになる。

「でもなあ、こういうことに巻き込まれるからな。ステータス上げはもちろん、戦い慣れしておくにこしたことはないだろう?」

「あんた……」

 揚々と口にした青年の言葉に、フューリアは目を剥いた。そんな少女の驚いた顔を見て、ウォルターはしてやったりと口角を吊り上げる。


「どうよ? 少しは見直したか?」


 茶化すように問うその言葉に、フューリアは何となく納得した。

(こいつは――私と同じ……か)

 この世界を脱出するという目標以上に、フューリアにはユウと肩を並べて戦う――という意識がある。

 異世界と化した〈ファンタズマゴリア〉。そこで最初に出会った少女。

 訳の分からない状況。ゲームの世界に取り込まれるという異常の中にありながら、凛と立った小柄な友人の姿に鼓舞されて、本人にその気がなかったにしても、自分を奮い立たせてくれた彼女と並び立ちたい――その一心で自らを鍛えた自分。


 彼は、同じなのだ。


 なんやかんや口では文句を言いながら、結局この城に同行した青年。

 その根底にあるのは、自分と同じ気持ちなのかもしれない。そう想像すると、どうにも可笑しく口元が自然と綻んだ。

 笑う青年に向けて、少女はふっ……と笑い、


「そうだな――あんたが、頭に超がつくほどの馬鹿者だというのは理解したよ」


 そう答えると、青年はあんぐりと口を開き――そしてその場で地団駄した。

「それ見直してねーじゃん!」

「そんなことどうでもいいだろう? さっさと行くよ」

「しかも無視かよ! 泣くぞ! 俺、終いには泣いちゃうぞ!」

「泣け」

 一言で切って捨て、フューリアは彼に背を向け歩き出す。背後で「ちくしょー……」と涙交じりな声が聞こえてきたが、とりあえず無視して目の前の扉を開き、

「下らないことしてないで、上を目指すぞ。この奥から行けるみたいだしね」

「へいへーい。賭けに負けたくもないしな……」

 軽口を叩きながら、二人が扉を潜って辺りを見回す。

 そこは左右に鉄格子の付いた部屋が幾つも並ぶ、狭い通路だった。一見して、此処は牢屋か何かなのだろうと推測し、フューリアは短剣を手にしたまま、ずかずかと通路を歩く。


 モンスターの出てくる気配は……ない。


「どうやら……ただの通路みたいだね」

 フューリアは安堵の吐息と共にそう言葉を漏らし、視線だけを背後に向けると、

「……」

 すぐ後ろを歩くウォルターは、まるで何かを観察するかのような目で牢屋の中に視線を巡らせていた。その表情は随分と険しく、何かを検証しているような様子に、フューリアは歩きながら首を傾げる。

「……どうかしたのか?」

 しかし、ウォルターは答えない。

 彼は黙ったまま、頑なに視線を牢屋の奥へと向けていた。そして、唐突に手にしている杖を翳し、

「コール、《リュミエール》」

 魔術を発動させた。発動したのは《リュミエール》。僧侶系クラスの使う初歩的な明かり取りの魔術だ。暗闇を照らし出す光球がウォルターの頭上に具現し、彼を中心に辺り一帯をその光で照らす。

 突然現れた光源に思わず目が眩み、フューリアは目を細めながらウォルターを見向く。

「いきなりどうしたんだよ?」

「……お前、《鍵開け(ピッキング)》スキル――使えるか?」

 しかし、彼はフューリアの質問に答えることなく、逆にそう尋ねてきた。少女が眉を顰める。《鍵開け》のスキルは、盗賊(シーフ)系クラスならば初期で習得するスキルの一つだ。鍵の付いた宝箱や扉を開けるために使用するスキルで、MMORPG〈ファンタズマゴリア〉ではそれなりに使用頻度も高いため、盗賊クラスなら誰もが習得し、熟練度も上げている。

「そりゃ隠刀士なんだ。それくらい使える――けど、それが今何の関係が――」

「なら、今すぐこの牢屋――いや、俺が指定する牢の鍵を開けてくれ」

「いや、だから、なんでそんなことを――」

「頼む」

 こちらの追及にも聞く耳持たず、しかしいつになく真剣な表情でそう頼みこむウォルターの姿に、仕方がないという風にフューリアは首肯した。

「……分かった。だけど、ちゃんと説明はして貰うよ」

「恩に着る!」

 少女の返答を聞くや否や、ウォルターはすぐに左右に広がる牢に飛び付き、中を探る。「ここじゃない」「これも違う」そう言葉を漏らして次々と中を検分し、奥へと進む青年の後ろに追従すること、約十分ばかり。


「此処だ! フューリア、この牢を開けてくれ!」


 ついに何かを見つけたらしい彼が、まくしたてるように牢を指さしてそう告げると、フューリアはやれやれと溜息一つ漏らして牢へと歩み寄る。

「それじゃ――思いっきり行くか」

 掛け声と共に、フューリアは大きく拳を振り上げ、牢目掛けてその拳を叩きつけようとする。

 明らかに扉を殴る姿勢を取る少女を見て、ウォルターは慌てて制止(ストップ)をかけた。

「おいおいおいおいおい! 何思いっきり殴ろうとしてんだ!? つか、誰が『壊せ』って言ったよ!」

「ちまちまと鍵開けなんて、面倒臭いだろ?」

 さっきまで無視され続けた意趣返しと言わんばかりに、真顔でそう返すフューリア。

ウォルターはあんぐりと口を開いたまましばし絶句し、かぶりを振った。

「そこは隠刀士らしく鍵開けしろよ!」

「五月蠅い男」

「嘘っ!? 俺か、俺が悪いのか!?」

「分かったから喚くな。今開けるよ」

「……なんでかなー。お前と話すとリューグ(あいつ)らとは別の意味で疲れるな」

 項垂れながらそう呟く。が、フューリアは軽く聞き流して牢の錠に手を伸ばし、そこに浮かび上がるタッチパネルに指を走らせる。するとカチリっ……という音と共に、フューリアの前に立ちはだかっていた格子の扉がガチャリと開く。

「ほら、開いたよ」

「おお!」

 促されるや否や、ウォルターはなだれ込むようにして牢の中に飛び込んだ。フューリアもその後に続く。

 薄暗闇の中、ウォルターの魔術の光が牢内を照らす。

 そして――そこに広がる光景を見て、フューリアは息を呑んだ。

 入った牢の中、ウォルターが一目さんに向かったその場所に積み重なっていたのは、幾つもの剣や槍、斧に杖、鎧に外套、そして大量の硬貨に、無数のアイテム……。

それはただのダンジョン置き物(オブジェ)ではない。ただの置き物であるのなら、フューリアはここまで驚愕することはない。

 大量に転がるアイテムに埋もれ、それらを発掘するかのように漁るウォルターが我鳴る。

「これも……これも……、これもこれもこれも!」

 転がる武具を、鎧を、外套を手に取り、ウォルターは悲痛な叫びを上げた。

「全部だ! これ、全部……嘘だろ……」

「ウォルター……これは……何だ?」

 悔しげに漏らす彼の背に、恐る恐るフューリアが問う。いや、本当ならば問うまでもなかった。そこに溢れる武具防具の数々。それの意味することを、フューリア自身も理解していた。

 ただ、信じたくないのだ。

 だから――問う。

 だが、返ってきたのは無情なまでの残酷な答え。


「見ての通りだよ……全部プレイヤー――《来訪者(ビジター)》たちの保持していた装備品だ」


 忌々しいと言わんばかりに、彼は吐き出すようにその答えを突きつけた。

 返ってきた返答に、フューリアは今度こそ身震いした。

(これが……全部。なら……どれだけの……!?)

 そこに転がっている武具防具の数は相当だ。一人一式と考えても、此処にある数だけでも数十人分はあるだろう。本当に職装備の物から、中には攻略組が身に纏っていてもおかしくないような上等な物まで存在している。

「だ、だが……本当にそうと決まったわけじゃあ――ない、だろう。モンスターのドロップということもあり得る……違うか?」

 一縷の望み――その想いで、フューリアは震える青年の背に問う。しかし、彼は小さな呻きを漏らしながら、そっとかぶりを振って見せた。

「知ってんだよ。俺……」

「……何を?」

 答える代りに、ウォルターはひょいとフューリアに一つの外套を投げて渡しながら言った。

「……その装備品。ポップウィンドウ見てみろ」

「ポップ……ウィンドウ?」

 言われ、首を傾げながらフューリアは投げ渡された滑らかな手触りのする、鮮やかな蒼い色の外套を指でタッチする。一瞬の間を置いて、少女の目の前に薄青いウィドウが表示された。

 何の変哲もない、しかしそこそこの性能パラメータを持つだけの外套だ。だが、その一辺に目を繰れた瞬間、フューリアははっと息を呑んで、思わず手にしていた外套を落としてしまう。

 ウォルターが言わんとしていることが分かった。


 ――オーダーメイド。


 武具防具がプレイヤーメイドである場合、そのすべてには製作者の名がシステムによって自動的に刻まれる。

 そう、普通であれば、プレイヤーメイドの武具に刻まれるのは制作者の名前だけである。だが、それ以外の――即ち制作者以外の名前が刻まれる場合がある。

それが限定者装備(オーダーメイド)。ただ一人のために作られる専用装備を指す言葉(システム)

 文字通り、たった一人のために作られ、その人以外は装備することのできないようシステム制限のかけられた武具のことだ。

 これはゲーム時代、PK対策として組み込まれたシステムの一つで、たとえPKされてもドロップした装備品がPKによって盗難・売却されることを防ぐために作れられたプロテクトである。

 しかしいつの頃からか、PK対策という本来のシステム以上に、高レベルのプレイヤーたちが、自らの持つ高ランク武具防具を自分専用のものにすることによって、その武具防具を自らの『符号』とするためのものへと変化していった、その残滓。

 そして其処に表示されている保持者の名前――それが白ではなく透明がかった灰色をしている――その意味を理解した瞬間、フューリアは愕然となって息を呑む。

 そんな彼女に向けて、ウォルターは言う。

「その外套の持ち主は――《蒼影》のAKIRA(アキラ)

 この都市(ユングフィ)の中堅ギルド《硝子目の猫団(キャット・オブ・グラスアイズ)》に所属する、速さが売りの刀使い。二月前にようやく《剣聖(ソードマスター)》にクラスチェンジした……うちの店の常連の一人だ」

「それじゃあ……本当に、そうなの……か?」

(此処にある装備品すべて……誰かの保持していた物? なら、持ち主は……)

 その先は、考えるまでもなかった。

 オーダーメイドの武具。そのポップウィンドウに記されている保持者の名前(ホルダーネーム)が薄れている。それは即ち、その保持者が現在死亡状態を意味する。

 そしてゲームではなく、異世界と化した〈ファンタズマゴリア〉における死は、蘇生待機ではなく――

 言葉を失くし、半ば呆然とするフューリア。

 そして、積み重なる武具を見つめていたウォルターは、

「拙いぞ……これ、思ってた以上に拙いって」

 そう言葉を漏らし、フューリアを振り返り、

「急ぐぞフューリア!」

 少女の横を通り抜け様にそう告げる。当然ながら、フューリアは意味を図りかねて未だ困惑する頭を必死に働かせ、走り出そうとするウォルターの背に問う。

「今度は何だ、少しは説明しろ!」

「説明できたら苦労ねーって! ただ……そうだな、言えることがあるんだとすれば――」

 駆け出そうとして制止を食らったウォルターは、鉄格子の扉に手をかけ、反対の手で髪を掻き毟りながら、言葉を探すように数秒黙した後、ただ――こう答えを返した。


「――そう。俺たちはだいぶヤバいことに首を突っ込んだってことだけだ!」


 そう吐き捨てるように言葉を口にし、彼は一目散に通路の奥――上へ向かう階段へと走り出した。

「……どういうことさ、それ」

 訳が分からない説明に対し、辛うじてそう悪態を吐き、少女もまた彼の後を追って通路を走り出す。

 ただ、分かったことがあるとすれば……


 彼の言葉は、何故か納得できた――それだけだった。



◆     ◆      ◆


 剣の一撃が、頭蓋を砕き、拳の一撃がその巨大な体躯に風穴を開けたのを最後に、異形のモンスターは鈍重な音を轟かせて床に倒れ伏し、粉塵を巻き上げながらその姿を消失させた。

「これで最後だね」

「うん」

 リューグの確認の言葉に、ノーナは短い肯定で応じた。その手に備えていた手甲が光の粒子となって回帰する。

 それに見習って、リューグもまた手にしていた剣を腰の鞘に納め――視線を彼方に佇立する大きな扉へと向けた。

 縦の長さは果たしてどれくらいか。目測でおよそ三十メートル程度。横の幅ですら、左右合わせて十メートル近くあるのではないか。

「……ファンタジーの城の扉って、どうしてこう無駄に大きいんだか」

「開けるのが大変」

「だろうね……」

 漏らした愚痴に返ってきた少女の純粋な返答に苦笑を零しながら、しかしてその表情を普段の穏やかな微笑とは似付かない険しいものに一変させ、リューグはその扉へと歩み寄った。

 そして、手を伸ばせば触れられる距離の所で一度止まり、

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

――あるいは……禁断(パンドラ)の箱となるか。

 一瞬の逡巡。開いた扉の先に何があるのか。その未知に対しての期待と危惧がリューグの中で衝突する。

「シュレーディンガーの猫は箱の中……ってか」

「何、それ?」

「昔の科学者がやった粒子論に関する思想実験、かな?」

「分かんない」

「だね……まあ、詰まる所――」

 難しい顔をして首を傾げるノーナの様子に、リューグは僅かに笑みを零して扉へと手を伸ばし、


「――開けなきゃ分かんないってことだよ」


 トンっ……と、伸ばした手が扉を叩く。

 瞬間、リューグの手が触れた場所から光が走り、巨大な扉全体を駆け抜けた。同時に部屋一帯に響く地鳴りのような音と共に、彼らの前に立ちはだかっていた長大かつ重圧な扉がゆっくりと開かれる。

「さて……お招きに預かろうか」

 開き行く扉を見上げ、リューグは失笑しながら一歩踏み出す。ノーナもそれに続いた。

 くぐった扉の先に広がっていたのは、随分と開けた広間(ホール)

流石は古の王城。今や悪鬼邪妖の蔓延る異形の巣窟と化そうとも、その景観が損なわれていることはなく、訪れる者を圧倒する。

一見して、広さも随分な面積だ。目算だが、千人程度の人数なら容易に収容できるだろう。こういう広い場所というのは、リューグにして見れば学校の体育館くらいしか縁がなく、目の前の広く高い空間に、思わず目を剥いて圧倒されてしまう。

 だが――その広い空間の中央。そこに幽鬼の如く立っている人影を視界に捉えた刹那、リューグの思考は即座に驚嘆から警戒へと切り替わる。

 悪役これまさに――そんな感慨さえ抱けるほど、その人物の容貌は超然としていた。


 ――呪術師。否、魔術師か。


 無論、職業(クラス)の話ではない。その男の出で立ちに対して、一言で要する言葉はまさにその二つであった。

 頭頂から爪先まで隠すような長い濃紺のローブ。首の周りや腕に施された意匠細かな装飾。足元に描かれるは、半径十メートルほどの幾何学模様によって描かれた――おそらくは魔法陣。

 その魔術師は、魔法陣の中央手前に立ち、何かをぶつぶつと唱えている。流石に距離が開き過ぎていて、リューグの耳にはそれがなんの言葉であり、何を唱えているのかまでは聞き届かなかったが、するべきことがなんであるかは理解出来ていた。

 かつん……と、ブーツが石畳みを叩く。

 瞬間、魔術師の動きがピタリと止まり、ゆっくりとリューグたちの方を振り返ると、


「おや……これはこれは……お客人とは珍しいことで」


 低い声で、そう楽しげに首を傾げた。フードから覗く口元がにたりと三日月を描く。

 その様子に畏怖したのか、ノーナがぐっと握り拳を作るのを見て、リューグは遮るように腕を翳し、無言で少女を抑止する。

 何故? そう尋ねるような視線を向けてくる少女に、リューグは言葉なく首を横に振って、一歩前に踏み出した。

「そんなにこの場所を訪れる人は珍しいかい、魔術師殿?」

「ええ。とても、とても珍しいですとも。何せこの地は呪われし地。王を失い、時代に忘れ去られ、今や凶悪な魔物の蔓延る異形の巣窟。腕の立つ冒険者でも、理に長けし魔術師も、容易に訪れようとはしない――畏怖されし場所ですからね」

「その腕の立つ冒険者ですら訪れないような場所で、貴方は何をしているのかな?」

 芝居がかった口調で話す魔術師に、リューグはにこりと笑んでそう問うた。

 すると魔術師の動きが止まり、じろりと……フードの奥の双眸がリューグを見据える。

「貴方……《来訪者》ですね?」

「そうだけど、それがどうかしたのかい?」

 即応する。別に隠匿する必要もない。そう判断したリューグは、特になんの感慨も抱くことなく鷹揚に首肯すると、魔術師は突如絶叫を上げた。



「知っています……ええ、知っていますとも!」


 一体、何が起きたのかリューグにも、ノーナにも分からなかった。二人はただただ目を点にして、いきなり不可解な挙動に走る魔術師の様子に呆然とする。

「我が名はムオルフォス! この世のあらゆる知識を得んがために、両界の門へ手を伸ばそうとする者!」

「はい?」

 辛うじて、その一言だけが口から零れたが、魔術師――ムオルフォスの耳には届かなかったのか、あるいは聞こえていたけど聞き流したのか、彼は意気揚々としゃべり続けた。

「古今東西のありとあらゆる書物に目を通し、既存する魔術、呪術、錬金術を習熟し、名高い賢者に教えを請い、時には禁術にまで手を伸ばすこと幾星霜! しかし、どのような知識も、術も、私の望みをかなえるには至らなかった!」

「リューグ、あいつ恐い」

「うん、僕も恐い」

 コートの裾を摑むノーナに、リューグは同意を示した。

(狂人……って奴か)

 こういう、人としての領分を逸脱した奇天烈な人間は何処にだっているものだ。

 天才と馬鹿は紙一重というが、歴史に名を連ねる偉人たちが皆こんな人だったら嫌だな、というわりとどうでもいいことを考えて現実逃避に走るリューグを余所に、ムオルフォスの独白は続いていた。

「世界に存在するあらゆる神秘魔道……そのどれを以てしても、私の望みをかなえるような驚天動地の存在(もの)はなく、我が探究心を満たせぬ事実に絶望し欠けていた。

――だが! そんな思慮深き私を、神は見捨てはしなかった!」

 彼はそこで一度言葉を区切ると、フードの奥に秘めた瞳を見開いてリューグたちを見据え、


「そう! 貴方たち、《来訪者》の登場です!」


 ビシッ、と指さして声たからに宣告する。

「天に瞬く光と共に、境界の向こうよりこの幻想創界(せかい)へ誘われた、いと高き魂を持つ者たち。人知及ばぬ知識と、常人を超える力を相併せ持った、この世界を救うため、神より見定められた選ばれし存在――それが、貴方たち《来訪者》!」

「……随分な甲斐かぶりだね」

 感極まったようにつらつらと言葉を並べるムオルフォスに対して、苦笑するリューグの態度は酷く冷ややかなものだった。言葉にはしないが、ノーナも似たような態度で、呆れたように眉を顰めている。

 が、そんな二人の態度など気にも留めないムオルフォスは、酷く興奮した様子で喋り続ける。

「聞けば、貴方達の存在していた世界は我々の住まう世界よりも遥かに発展した技術を持っているとのこと。

 魔術も使わずして、遠くにいる人間と小さな道具一つで会話をし、時には形なき手紙を送る。

 更には馬なくして走る鉄の馬車を始め、挙句には巨大な鉄の塊が空まで飛び交うという!

 私は、それが真実であるかをこの目で確かめたい……!」

「別段、面白いものでもないと思うけど?」

「それは、貴方たち《来訪者》にとって、その道具が日常の一部と認知しているからに過ぎない。私たちにしてみれば、そのような未知の道具は、学術的にも、好奇心的にも、興味を引かれる存在なのですよ」

 リューグの投げやり気味な発言にも、魔術師は逐一応答し、そして唐突にくつくつと笑いを漏らした。

「……話を聞いた時も思いましたが、実に貴方方の住む世界は興味深い。是非とも、一度赴いてみたい限りです……くくく……」

 ムオルフォスは楽しげに笑う。しかし、相対ずるリューグにとってはさして興味もわかない、どうでもいいことだった。

 ゆえに、リューグは人当たりのいい微笑の中に、僅かだがその視線を鋭いものに変えて、左手で鞘を握りながら告げる。

「さて……ずいぶん楽しげなところ悪いけど、そろそろ話を元に戻そう――此処で何をしている? 魔術師、ムオルフォス」

 カチリ……と、親指が唾を弾き、鯉口を切った。瞬間、ムオルフォスがわざとらしく両手を持ち上げて、大仰にかぶりを振る。

「怖いですね。このような一介の魔術師に、物騒な代物を向けるというのですか?」

「僕からすれば、古今東西あらゆる魔術に手を出している貴方のほうがよほど物騒で、危険な人物に見えるよ?」

 魔術師の戯言に対し、リューグはにこりと笑みを向けると、ムオルフォスはおどけた口調で一言、

「これは、一本取られましたな……」

 そう、口にして再び笑い声を漏らした。

 対して、青年は僅かに眉を顰める。

「こちらの質問に答える気はない……そう捉えていいのかな?」

「いえいえ、それは違いますよ。《来訪者》殿」

 リューグの言葉に、ムオルフォスは慇懃に首を横に振った。

「私が、此処で何をしているか……でしたか? その答えは単純明快――」

 魔術師が呻くように頭上を見上げた。


「こちらとあちら、即ち! 我々の住む世界と、貴方方の住む世界の間に存在する境界線――そこに、門を築き開くことです!」


 快活に、明朗に、その言葉は酷く空気を震わせて、同時に水を打ったような静けさと共に、否応なしとリューグたちの耳朶を叩いた。

 魔術師の言葉は、容易に看過できるものではなかった。

 予想外の事態に言葉をなくす二人を見て、ムオルフォスは意外そうに眼を瞬かせ、小首を傾ぐ。

「おや? 随分と驚かれているようですな。それほど意外でしたかね」

 その問いに対し、リューグは若干の間を置いてゆっくりとかぶりを振った。

「……以外、じゃあなく、予想外の発言だったんでね。流石に愕然となかったと言えば嘘になる――そして同時に、それは不可能だということを僕たちは知っている」

「ほう……」

 ムオルフォスの語感に、僅かなれど不満げな気配が孕んでいた。しかし、たとえ彼がどれだけ不満を抱こうと、事実は変わらないとリューグは胸中で断じた。

 リューグたちにとっての現実(リアル)と、このゲームの世界(ファンタズマゴリア)の間に門を作り繋げるとムオルフォスは言うが、それはどう足掻いても実現し得ることではない。

 そもそも、ムオルフォスという人物自体が虚像(フィクション)なのだ。MMORPG〈ファンタズマゴリア〉に存在するNPC。高度なAIを有しているといえど、それこそがムオルフォスという存在のすべてを定義する言葉だ。

 故に、彼の行動は彼の意思によるものに見えて、その実〈ファンタズマゴリア〉のマザーシステムが組み立てたプログラムに従って行動(シミュレート)されている演技(ロール)に過ぎない。


 そう――過ぎないはずだ。これが、ゲームであるならば。


 リューグの胸中に生じていたのは、一抹の不安だった。

 MMORPGである〈ファンタズマゴリア〉が異世界と化してからこれまで、ゲームの世界に取り込まれたというそれ自体が最大の非現実的現象だった。それを上回ることなど、これ以上はあるまい――そう思っていた。

 だが、どうだろか。

 最近になって、立て続けに起きているMMORPG〈ファンタズマゴリア〉の仕様を逸脱した現象の数々。

 突如消えた《来訪者》。

 都市内部でのエンカウント。

 仕様には存在しないはずのモンスター。

 公開されていないはずの転移方陣。それを構成する膨大な量のプログラム。

 そして此処に来て――AINの領分を越えた発言をする魔術師の出現。

 これでは危惧するなというほうが無理な相談だった。

 そしてその予感は的中へと至る。

 ムオルフォスが動く。彼は虚空より豪奢な飾りの施された杖――錫杖を取り出してそれを摑むと、シャラン……という小気味よい音を鳴らして石突で魔法陣を叩く。

 同時に機会が起動するような低い音と共に、描かれていた巨大な魔法陣が淡い紫の輝きを放った。

 とっさに身構えるリューグとノーナ。しかしムオルフォスは静かに笑った。

「身構えなくとも大丈夫ですよ。これは、貴方方に牙剥くものではない……そう、両界の狭間へ向けての、手向けのための術陣ですから」

 ムオルフォスの言葉の意味が理解出来ず、リューグは眉を顰め――そしてふと気づく。

 ムオルフォスの背後、先ほどまで彼の影になっていて見えなかったのか、見ればそこには人一人が入りそうな大きさの棺が横たえられていた。

 魔法陣の光は、その棺を中心に輝いている。


 ――ぞわり……


 背筋を、冷たい何かが走り抜け、リューグは息を呑み、我知らずの内に一歩後退さっていた。左手の鞘を握る手に力が籠る。

(……なんだ……今の? いや、それよりも――)


 ――あの中身は一体……なんだ。


 抱いた疑問はそれだった。

 あれほど巨大で、幾何学的な文様で描かれた魔法陣の中心に据えられた棺が、ただの置物と思うのは難しい。

 険呑なリューグの気配を感じ取ったのか、隣に立つノーナもまた、言葉なく両手を掲げ――そこに真紅の玉石の嵌められた手甲を携える。

 そんな二人を見て、魔術師はまるで謎かけをするかのように言葉を投げた。

「さて……剣士に少女よ。魂とは何か、考えたことはあるかな?」

 それはあまりにも唐突な質問であり、この場において果たしてそれがどれほどの意味があるのかと考えるよりも早く、

「全然」

 と、ノーナがかぶりを振った。その反応に、魔術師は満足したように大仰に頷くと、続けて視線をリューグへと向けた。

「剣士よ、貴公はどうか?」

「あいにくと……答えの出ない問題を探るほど暇じゃなくてね」

 リューグは曖昧に答える。実際、魂の有無は古来から現代に至るまで幾度となく議論されながら、結局にしてその存在を立証することは叶わず、今もその存在の定義が曖昧なもの。科学的、医学的にその存在は否定され続けるも、魂という概念は神学や人文科学を始めとし、世界中で今も多くのその言葉と意味を漠然と認知するものだ。

 故に、明確な答えなどない。

 そんなリューグの答えに満足したのか、ムオルフォスはくつくつと笑いを漏らしながら頷いた。

「なるほど……では、死した者の魂は何処へと還るかは、分かりますかな?」

 新たな問い。リューグはその問いの真意を探るように沈黙する。


「天国?」


 答えたのは、ノーナだった。

「素晴らしい」

 ムオルフォスが感嘆する。

「――そう。宿るべき肉体を失った魂は天へと回帰する。では、回帰する魂は何処を通じて天へと帰るのか? 魂が天へと向かうその道こそが、世界と世界を隔てる空間なのではないか。

我々の住む世界、貴方方の住む世界、そして魂が集う『天』という世界が存在する巨大な『世界』があり、それらすべてが漂う空間こそが、世界と世界を隔て、時に繋ぐ空間があるとすれば?」

「……多元宇宙論かよ」

 多元宇宙論とは、簡潔に言えば宇宙は複数存在するという仮説である。『宇宙』は惑星と惑星の間に広大な宇宙空間が広がって幾つにも隔てられているように、大きな箱の中に『宇宙』という小さなビー玉が幾つも転がっていて――つまり、リューグたち《来訪者》の本来住んでいた現実(リアル)が存在する宇宙。この〈ファンタズマゴリア〉が一つの世界として確立し存在する宇宙。そして数ある世界で死んだ魂たちが回帰する宇宙が存在する――そう言いたいのか。

(いや……違うな)

 リューグは胸中でそう断定した。

 この男はただの論者ではない。魔術師であり、同時に狂人でもある。真偽定かではないこの机上の空論をただ唱えているのではなく、別の意図があるのだとすれば――


 いや、そもそもに。


 この魔術師はなんの話をしていた? 何故、こうも語り続けている?

 リューグは黙考する。

 しかし、考え――その答えに至るよりも早く、ムオルフォスは流暢に言の葉を紡いだ。

「さて――天へ魂が至る道を用いて、貴方方の世界へ通じる門を築く……そのために必要なことは、一体何か……お分かりかな?」

「何?」

 思わぬ言葉に、リューグは声を上げた。その様子に、ムオルフォスは楽しそうに笑んで続ける。

「我々の住む世界は大きく分けて三階層に別たれています。天界、人界、そして冥界です。その御理解は可能ですかな?」

 問いに、二人は答えなかった。しかしその意味は理解した。

 ――世界三分。

 古今東西あらゆる神話や神学、仏門に手通じる世界を大きく分けた時の図式。神や死後の魂の住む世界、有限の命を持つ者の住む世界、悪魔・亡者の住む世界と分けられる。

 それはファンタジー世界においての鉄則だ。

 だが、それがどうしたというのか。今この場において、それがどんな意味を持つ?

 しかし、ノーナが魔術師の言葉の意味を把握しきれず首を傾げるその隣で、リューグは不意にある結論に至り、目を見開く。

 その様子を見たムオルフォスは、我が意を得たりとばかりにほくそ笑んだ。

「我々の世界の住人が死んだ際、その魂は我々の世界に存在する神の御許――天界へと至る……では、この世界の住人ではない者たちが死んだ際、その魂は何処(いずこ)の天界へ回帰するか――どうやら剣士殿。貴方は随分と聡明で、そして相当の慧眼の持ち主のようで」


 にたり……と、ムオルフォスがフードの奥で笑った。


 それを感じ取ると同時に、リューグは背を掛けるおぞましさを振り払うように地を蹴り、疾走。瞬く間に魔術師との距離を詰め――剣の間合いに捉えると当時に抜剣する。

 じゃりぃぃん……という音と共に鞘走る刃を魔術師の脳天目掛けて振り下ろし――しかし、それは眼下で怪しい輝きを放つ魔法陣がそれを阻む。

「我が儀式は疾うに始まりました……貴方方は大人しく、葬送の歌でも奏でて上げて下さい――天へと手向けられる同胞へ捧ぐべき、葬送の歌をね!」

「その棺……やっぱり!」

「ご察しの通り――《来訪者》の棺ですよ」

「え!?」

 背後でノーナが驚愕の声を漏らし、リューグがその顔色を憤怒に染めた。

 この男は言った。


〝この世界の住人ではない者たちが死んだ際、その魂は何処の天界へ回帰するか〟と。


 答えは明々白々。

 その住人が住んでいた、〝本来在るべき世界〟の天界へ――だ。

 つまり、リューグたちにとっての帰るべき世界の天界。天国と呼ばれる、その場所へ。

 しかし、今のリューグたちは本来住んでいた世界とは異なる異世界〈ファンタズマゴリア〉に、《来訪者》として存在している。

 ならばこの異世界で死んだ場合、《来訪者(かれ)》らの魂は何処へと召されるか。それは本来あるべき世界の天国へと召されるだろう。魂という存在が、実在するのであればだが、今はその議論は大した意味を成さない。

 先の多元宇宙論と世界三分――魔術師がそれらの話をした意味が、今ならば分かった。


 リューグたちの住んでいた現実の存在する世界を〝A〟と、この〈ファンタズマゴリア〉が存在する世界を〝B〟と例え、〝A〟の天界を〝a〟とし、〝B〟の天界を〝b〟とする。

 〝A〟に住む人間の魂は、死ねば当然〝a〟へと至る。〝B〟に住む人間の魂も、死すれば同じく〝b〟へ至る。


 〝A〟→〝a〟

 〝B〟→〝b〟


 という図式になるだろう。

 ならば、〝A〟に住む人間が〝B〟に存在する場合はどうなるか。これも当然〝a〟へ至らねばならない。しかし〝B〟から辿り着くことが出来る天界は当然〝b〟しか存在しない。

 しかし〝B〟から〝a〟へ直接辿り着くことはできない。

 ならばどうするか。

 それは〝A〟と〝B〟の間に存在する空間に一時的に穴を開け、そこを通して〝B〟から〝A〟へ魂を送り、その上で〝a〟へと至らせればいい。


 〝B〟→〝A〟→〝a〟


 その図式へ至る。

 ムオルフォスの目的は、まさにそれの実現だ。

「この世界で死んだ《来訪者》の魂。それは当然、貴方たちの存在する世界の天界へと至る――そのためには当然、この世界と貴方方の世界を隔てる空間に道が築かれるはず!」


「この……外道が!」


 唾棄するように言葉を吐きながら、リューグは飛び退り、再び踏み込みと共に上段からの斬撃を魔法陣の光壁へと叩きつける。

「はあぁっ!」

 同時にノーナも地を蹴った。わずか一度の跳躍でリューグの傍らにまで飛び込んできた少女は、渾身の力を込めて拳打を放つ。

 斬撃と打撃。二つの衝撃が紫苑色の光を襲うが、大型の異形をも掃討する攻撃を、光壁はものともせずに受け止めた。

「無駄ですよ――この魔法陣は我が半生を掛けて研鑽したあらゆる魔道の結成……たとえ《来訪者》の力を以てしても突破は不可能です!」

 狂人の、狂気から生じる執念。それには脱帽せざるを得ないだろう。だが、その狂気がために犠牲になる名も姿も知れぬ誰かの命を、


(――見捨てられるかっっっっ!)


 心の中で慟哭にも似た叫びを噛み締める。

 同時に、


「――貫けっ!」


 咆哮と共に、雷光がリューグとノーナの間を駆け抜けた。

 爆音の如き衝撃と、鼓膜を貫くような雷鳴を引き連れて、眼前の魔術成す障壁と火花を散らすのは、黒金の投擲槍――《貫く王の雷槍》。

 振り返ったノーナが喜色露わにそこに立つ《賢人》を見るのを横目に、リューグはこの機を逃すまいと槍に並ぶように前へと飛び出す。

 振り返る必要はなかった。放たれたその槍が、言外に彼の意思を示している。

ただただ、リューグはそれに合わせて剣を振り上げる。脳裏に描かれるスキル欄――そこに並ぶ技の数々の中で、最高の威力の技を選択する。

 片手剣奥義アーツ・スキル《メルフォース・ドライブ》。かつて巨大な竜をも討ち取った必殺の斬撃。

 金色の剣が、目も眩むほど眩い紅輝(こうき)を纏う。あの時よりも遥かに強く眩い輝きを放った剣が、稲光と並んで魔法陣の光へと炸裂する。

 〈ファンタズマゴリア〉の全武具の中でも最高の貫通力を誇る槍の一撃と、《聖人》の二つ名を持つ剣士の全霊の斬撃。

 これならばイケる。そう確信しての二撃だった。

 しかし――


「――無駄だと、言ったでしょう」


 その声を肯定するように、リューグたちが息を呑む。

 剣を覆っていた光が集束し、視界が開けるその先――切先が捉えた魔力の光壁は、微塵の傷も負うことなく、堅牢たる壁を健在としていた。

 リューグとヒュンケルが言葉なくその壁を見据え、すぐそばにいるノーナも目を剥いて驚愕する中、魔術師の軽笑が木霊する。

「くははははは! どうですか……異世界よりの異邦者たちよ! これがこの幻想創界(せかい)の者の力ぁ! 人を超えし《来訪者》すら打ち克てぬ力ぁ! そしてその目に焼き付けるがいい……貴方たちが及ばぬ故に、散り行き、そして捧げられる同胞(はらから)の末路を!」

 叫び、ムオルフォスは錫杖を掲げて祝詞を紡ぐ。

 魔法陣の輝きがより一層強くなり、魔術の起動に伴って放たれる衝撃波がリューグたちの身体を打つ。

「くぅ……!」

 ただの余波が全身を貫く。それだけで、僅かずつだが確かにHPが減少していた。

「とんだ大規模魔術のようね、これ……」

「君は何処からともなく現れるね? いっそ二つ名を《幽霊姫(ファントム)》にでも変えてみたら?」

 いつの間にか姿を現したユウを一瞥し、苦々しげに魔法陣を睨みながらそう嘯くと、白髪の少女は冷笑と共に言葉を放った。

「お断りよ、無能剣士」

「遅刻組がよく言う……」

 肩を竦めながら立ち上がり、アイテム欄から霊薬の瓶を取り出すと、中身を一気に嚥下する。減少したHPと、ゼロに至ったMPが瞬く間に回復していくのを眺めながら、リューグは左の人差し指で足元の魔法陣を指さし、

「これ、どうにかできないのかな?」

 短く問うと、ユウは申し訳程度に首を横に振った。

「無理ね。これ、上位の召喚術式(サモンスペル)よ。それも最上級の生贄を使った儀式(サクリファイスリトゥアル)……」

「それは、打つ手なしということか?」

 続けて問うたのはヒュンケルだった。それに対して、ユウは含み笑いと共に肯定する。

「ええ。私ではどうしようもないわ――そう、私では……ね」

 そう言って、ユウはふとあらぬ方向に視線を向けた。その視線を追って、三人が一斉にその方向に視線を向けて――目を瞬かせたのと、その光が発動したのは同時だった。

 純白のような閃光が室内を駆け抜け、幾つもの光芒が舞い踊り、中空に巨大な幾何学の陣を描く。

 描かれた術陣の光が駆け巡り、室内全体をその輝くに染めてゆくと、その輝きに呑まれるように紫苑の発光が薄れていく。

「――こ、これは!?」

 驚愕したのはムオルフォス。それと同時に、失笑したのはヒュンケルだった。

「随分と、良い所取りだな?」

「なら要らなかったか? 俺の最大出力の《聖浄術》」

 返ってきたその声に対し、声を漏らして笑いながら、リューグは大きく首を振って、

「いいや、最高のタイミングだよ。ウォルター」

「ナイスタイミング、お蕎麦屋さん」

 隣で、ノーナがぐっと親指を立てた。が、サムズアップを向けられた当の本人は問うと、がっくりと肩を落としながら悔恨の声を漏らした。


「チビちゃん……名前覚えてないのかよ!?」


 ピンチに駆け付けたヒーローの姿が一瞬にして台無しになる有様に一同が苦笑する中、ウォルターの放った《聖浄術》はよりその勢いを増し、ムオルフォスの魔法陣を侵食――その力を徐々に、だが確実にそぎ落としていく。

 力の弱まった瞬間を見計らい、ウォルターの背後から蒼銀色の影が飛び出すと、その手に握られている二振りの短剣を膂力の限りに振り抜く。

 剛刀が二閃した。

 橙色のライトエフィクトを纏った二刀が、魔法陣の中央にあった棺を砕くと、そこに横たわっている人物を担ぎ上げる姿に、ムオルフォスが恐慌する。

「ま、待て!」

「そう言われて待つ奴はいないね」

 錫杖を翳す魔術師にそう一言くれてやると、フューリアは大きく跳躍してその場を離脱する。

 先程まで己の勝利を確信し、渇望を満たすに至ると信じていた男が、確かな絶望の呻きを漏らす。

 今なお僅かにだが光を放つ魔法陣の中央で、ムオルフォスは憎悪の視線をリューグたちへと向けた。

「貴様ら……許さぬぞ。私の智への探求、その邪魔をした貴様ら……許さぬ――許さぬ!」

 怒号と共に、ムオルフォスは再び手にする錫杖を空へと掲げた。杖の先に描かれるのは、床に描かれる巨大な術陣とは異なる闇色の円陣。

 リューグは油断なく剣を構えた。皆がそれに倣うように各々の得物を構える。

 最中、己も銃と魔術書を現出させたヒュンケルは、フューリアに棺から救出した《来訪者》を戦線から離脱させるように指示する。彼女は首肯一つで部屋の外へと担いで行った。

 その様子を見ていたウォルターが十字杖を担ぎながら、「俺も離脱したいね」と嘯くが、ノーナを除いた面々によって早々に却下され、わざとらしく項垂れたのはご愛敬。


「来い、我が下僕共! この愚か者たちを千々に切り裂き、我が求道の贄としろ!」


 宣言と共に、闇の術陣が爆散する。

 同時に、床の各地に最早見慣れてしまったあの黒い水溜りが――〈門〉幾つも現出する。

 ……びちゃ……びちゃ……

 音の数だけ、いやそれ以上に続々と姿を現すのは、彼の異形――白い仮面を被った黒の人型。

「まったく……数ばかりだな」

「もう見慣れてしまって、怖れる気にもならないわね」

「いや、俺は今も遠慮したいね。こんな気味悪い連中」

 ヒュンケルが、ユウが、ウォルターが口々に不満を漏らす。

「油断大敵」

 そんな三人に向け、ノーナが拳を握りしめながら警告する。

「ぎりぎり間に合ったか?」

 風を切って戻ってきたフューリアが、二刀を構えながらそう問うた。

「丁度、今から始めるところだったよ」

 剣を一振るいし――無行の位を取ったリューグは、微笑でそれに応じた。

 そして――


「――やるぞ、皆」


「「「「「了解」」」」」


 その声と共に、六人が一斉に異形の群衆へと切り込む。

 戦いの火蓋が、切って落とされた。



◆     ◆      ◆


 剣撃の音が耳に届き、青年はその赤い相貌をゆっくりと見開いた。

 城の一角。その廊下の窓枠に腰かけ、背を預けていた影。

 双肩に十字の意匠が凝らされている黒衣を纏うその青年は、遠くから聞こえる幾つもの(サウンド)に耳を傾け、ふっ――と微笑を洩らす。

「さて……物語の幕開け来たれり――ってね」

 くつくつと頤に手を添え笑う。青年の灰色の髪が揺れ、未だ眠りから醒めきらない目を細める。


「さあ……まずはこの戦いを生き延びてね―――――兄さん」


 試すような、それでいて何処か祈るような感情の籠ったその声音が、人気の欠いた廊下に霧散し、


 ――ぱちんっ


 少年の鳴らした指の音が、空虚な空間に……酷く響き渡って行った。




 前回からなんとまあ丸ひと月近く間が開いてしまいましたが、なんとか話の続きが書き終わって一安心の白雨です。皆さまお久しぶりにございます(ふかぶか

 この作品書いているうちにふと自分が書こうとしている内容って結局どういうものなのだろうと調べていくうちに、色々知識収拾のために勉強したり、大学のサークル用のモノ、小説大賞投稿用のモノの考案・執筆も重なって執筆速度が遅くなってしまい、今日までかかってしまったとは……予想外予想外。

 それでも予定として、第一章は次話とこの章のエピローグ的な話を以て、今月中、遅くても来月頭には終わらせる予定です。

 では次話『Act10:黒き竜』にてお会いしましょうノシ

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