西園寺蘭子の霊感情話番外編 八木麗華の悪逆非道
ウチは八木麗華。関西ではそれなりに名の知れた霊能者や。
最近は、東京にも事務所を開いて、活動先を開拓しとる。
親友の西園寺蘭子が東京で仕事をしておるんで、あまり関東は荒らしたないねんけどな。
そやから、ウチは東京では副業に力を入れとる。
蘭子には絶対内緒の「取立て屋」や。
今回も、同じサラ金からの依頼や。
また貸付先が支払い渋ってるらしい。
毎度毎度、アホかっちゅうねん。
まあ、そんなアホがおるさかい、ウチの商売が成立するんやから、ええんやけどな。
早速取り立てに向かう。今回はいつもより気合い入っとるねん。
今夜は、蘭子達と合コンや。
蘭子は只働きばかりしてて、稼げてないらしいから、ウチが稼いで助けたるねん。
優しいやろ? 惚れてまうやろ?
そんな事思うているうちに、取立て先に着いたわ。
またヤクザの事務所やないか。
あのクライアント、少しは学習せいっちゅうねん。
アホ過ぎるわ。
しゃあない、チャッチャとすませて、はよ合コンや。
「毎度、鳥楯ローンでおま」
ウチは陽気にドアを開いた。
「おう、あんたが噂のインチキ霊能者か?」
何や、今日は大人しゅうしとこ思うたけど、いきなり喧嘩売られたわ。
よう見ると、アホなヤクザの群れに混じって、山伏みたいなカッコしたおっさんがおる。
「はあ? 何の事やら、わかりませんなあ。ウチは、只のサラ金の事務員でんがな」
感情が高ぶってしもうて、東京弁で喋られへん。
「惚けるな。うちの関連会社が、あんたのせいで潰れたんだ。その落とし前、つけさせてもらうぞ」
山伏モドキのオッサンがいるせいで、ヤクザの一人がいきがっとる。
単純やなあ。今から地獄見せたろか?
ウチは例によって巨乳の間からお札を取り出し、悪霊を放出した。
「オンアビラウンケンソワカ!」
すると山伏のおっさんが真言唱えて、悪霊を消してしもうた。
「うわははは、どうだ、女! 手駒を失ったら、お前など只の小娘よ」
おっさんは何や知らんけど、自分が物語の主人公やと勘違いしたらしい。
「ほお、さよか。ほなら、肉弾戦でもええで」
ウチは指をボキボキ鳴らして言うた。
相手が何人いたか、数えんかったのでわからんが、五分で終わった。
「申し訳ありませんでした」
素直なヤクザは気持ちがええ。最初から突っ張らんで払っとけば良かったんや。
ホンマ、アホやで。
全員、前歯折れて、目の上腫らしとっておもろいわ。
特に山伏のおっさんは、ウチに偉そうな事言いよったから、五割増しで可愛がった。
元の顔がわからんほどボコボコや。
「大変申し訳ありませんでした」
おっさんは泣きながら詫びた。
「毎度。今後ともよろしゅうに」
ウチは笑顔全開で礼を言うて事務所を出た。
さてと。回収金額は結構な額やから、ウチの取り分も多いで。
これなら、蘭子達の分も大丈夫や。
楽しみやなあ、合コン。ムフ。
ほな、またな。