4.魔王の“萌え世界征服計画”進行中!
「ターゲット発見! なの~!」
エアリーが可愛らしい声を上げ、ふわりと居酒屋の天井から舞い降りた。ハートの弓を構えるその姿は、天使のようでありながら、明らかにただごとではない空気を放っていた。
「えっ、な、なに……!?」
ノアが箸を止め、仲間たちと顔を見合わせる。彼らの目の前に、小さな羽を持った美少女が突然現れたのだ。
「え、誰……?」
金髪碧眼の男性が眉をひそめる。
「安心してなの~! 魔王様のお仕事を手伝うだけなの~♪」
エアリーは軽やかに跳び、ノアに向かって弓を引いた。ハート型の魔法矢が放たれると、居酒屋内に柔らかな光が広がり――
「あれ……なんで俺、女と一緒に飲みに来てるんだ……?」
左眼に眼帯を付けた男性が、戸惑いの声をあげる。
「え、え……!? あれ……? 俺……なんでこの女と飲んで……?」
金髪碧眼の男性も同じく、心の中で混乱し始めた。
「うーわ、ちょっと……どうなってんの!?」
黒髪ドレッドヘアの女性が声を上げる。が、隣の男性たちはすでに、視線を互いに熱く交わしていた。
「な、なんでこんなに……ドキドキするんだ……?」
「俺も……なんだか……胸が熱い……」
ノアはといえば、焼き鳥の串を口に運びながらも、ふと横を見ると、近くのテーブルの男性と目が合っていた。何故か心がざわつき、普段なら見逃すような視線の交換に、妙な胸の高鳴りを覚える。
「これは……何だ……!?」
ノアは焦るが、箸は止められない。食べ物の誘惑と胸の高鳴りが、同時に彼を襲うのだ。
エアリーは満足そうに微笑む。
「うふふ~、順調にイケメン同士がくっついてるなの~♪」
その様子を、どこか遠くで魔王が水晶玉を通して観察していた。
「うっひゃあ~! やっぱりイケメン同士の絡みは最高だわ~♪」
魔王はソファに寝転びながら、顔をニヤけさせる。手には愛読のBL本が握られ、同時に水晶玉から目を離せない。
「この世界征服……っていうより、ただの目の保養になってる気もするけど……いいのよ、いいのよ、私が楽しければ!」
魔王はそう言うと、またページをめくり、イケメン同士の甘美な絡みに没頭するのだった。
――居酒屋内では、混乱と胸キュンが同時進行で巻き起こり、ノアたちも徐々に現実よりも“不思議な胸のトキメキ”に意識を奪われていった。
「うふふ~、これからどんどん増やしていくなの~!」
エアリーは力いっぱい矢を次々放ち、居酒屋内にハートの光が飛び交う。外の街でも、確実に魔王の“萌え世界征服計画”は進行していったのだった。




