3.とある繁華街の居酒屋にて
――とある繁華街にて。
そう、先ほど、魔王の家来であるエアリーが自らの仕事をこなすために訪れた、あの繁華街だ。
その繁華街に規模はそんなに大きくはないけれども、お洒落で人気のある居酒屋があった。
そこでノアと呼ばれる20歳そこそこの青年と、その仲間たちが楽しそうに過ごしていた。
ノアの仲間たちは男女混合で5人ほど居て、彼らの年齢はノアとほとんど変わらないようにみえた。
黒髪ドレッドヘアに目鼻のくっきりした顔立ち、濃い目の化粧、褐色の肌、身体のラインがはっきりとわかる露出度の高い服装という個性的な容姿の、イケイケな雰囲気をまとった女性がピンク色のカクテルを手にしながらふと呟くように言った。
「……そういや思ったんだけどさ、この頃男同士のカップル増えた気がしない?」
すると、その女性の向かい側の席に座っていた、左眼に黒い眼帯を付けた男性が、「あ、それ俺も思った」と、女性の発言に対して同意をした。
すると、ふたりの共通の友人であると思われる茶髪ショートカットの女性が、
「この間夜中に公園に行ったら、男同士でキスしてたよ」と、会話に混ざってきた。
すぐ傍に座っていた黒髪三つ編み黒縁眼鏡の女性が、かすかに頬を染め、周囲に聞こえるか聞こえないかくらいの声量でぼそっと呟いた。
「男同士で……キス……」
「うげっ、マジかよ」
黒い眼帯を付けた男性の隣に座っていた、金髪碧眼の男性が、茶髪ショートカットの女性の発言にドン引きしていた。
「男同士のキスなんて、想像しただけで砂吐きそう……おえー」
「ちょっ、大丈夫!?」
黒髪ドレッドヘアの女性が心配そうに声をかける。
「お、おう、なんとか大丈夫だ」
「そっか、それなら良いんだけど」
「男同士でなんて、ありえないよな~ なぁ、ノア?」
金髪碧眼の男性は、一番端の席に座っていたノアという、銀髪緑眼の青年に話を振った。
「!?……お、おう……」
いきなり話を振られて戸惑ったノアは、話の内容をほとんど理解できていなかったものの、とりあえずの返事をした。というのも、彼は仲間たちとの会話よりも、居酒屋での美味しい食事を楽しむことに夢中になっていたからだ。
枝豆に冷奴、白和えに焼き鳥、たこわさにフライドポテト、塩キャベツ……。
ノアはお酒自体はあまり好きではないのか殆ど飲まなかったが、いわゆる“酒のつまみ”と称される料理はたらふく食べていた。
「それにしてもここの料理は相変わらずどれも旨いな。特にこの焼き鳥、最高だぜ!」
満足そうに焼き鳥を味わうノアに、金髪碧眼の男性はやや呆れた様子で「それにしてもお前、ほんとによく食うよな」と言った。
するとすかさず、黒髪ドレッドヘアの女性が口を開いた。
「そのわりにはノア、体型全然変わってなくない? 羨ましいわ」
黒髪三つ編み黒縁眼鏡の女性はまたしても周囲に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で呟くのだった。
「うらやま……しい……」
彼女の声が聞こえているのか聞こえていないのかわからないが、周囲の人々は誰ひとりとして彼女の言葉に反応することはなかった。
「あーしこの頃彼氏に痩せろって言われてんだけどー 何かコツとかあんの?」
黒髪ドレッドヘアの女性の問いかけに、茶髪ショートカットの女性は頭を悩ませた。
「うーん……コツねぇ……」
「好きなものたらふく食べても綺麗に痩せられる方法あればいいんだけどな」
茶髪ショートカットの女性が何かを言いかけたその時――。
「ターゲット発見! なの~!」
どこからともなく現れたのは、魔王の家来であるエアリーだった。




