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§4 不穏な空気
帰宅すると娘が這って出迎えてくれた。
1歳前でまだ立ち上がらないが、言葉だけは早かった。
そんな娘も、なぜか機嫌がよろしくない。
ぐずりそうな雰囲気を発している。
抱き抱えてオシメを触るが、問題ない。
「ただいま」
と伝えると、いまにも泣き出す勢い。
かと思えば、拍子抜けに話しだした。
「なぜ?」
「はい??」
「パパ、ダメでしょ」
「いったい何がどうなっているんだ?」
今度は私が狼狽する番らしい。
実際に意味もなく目眩がした。
わけがわからない。
娘が大声で泣き出す。
家内が慌てて飛び出してきた。
「何があったの?」
「それがわからないんだ」
事の顛末を手短に説明するが、話しが余計にボヤけてくる。
「きっと夜勤で疲れてるのよ」
「そうなのかな。でも麻衣子、かなりシッカリと話したぞ?」
「私の口癖を真似てるのよ、乳児だもの。それより早く休んだら?」
赤ん坊らしく盛大に泣き言を張り上げる麻衣子。
先ほど一瞬だけみせた大人の表情には驚い
たが、やっと子供に戻ってくれた。
それが嬉しかった。




