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学園ディフェンスー正直敵と戦いたいわけない  作者: 学園ディフェンス部長
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三話 責任を取りたい事にしておく、取りたくないけど

  カズコは内心焦りまくっていた。


 カンスケのせいで、自分が敵がやってくる真相を知っていると言ったのがクラス中に聞かれた。

 絶対に知られたくなかった事なのに。



 てめえふざけやがって、クソがテメェマジでテメェふざけるなバカが。

 そうキレながらカンスケに殴りかかりたかったが、やめた。


「……」


 必死でカズコは考える。

 今、どうするべきか?

 そしてすぐ答えは出た、簡単な話である。


「敵が突然現れるようになった原因は私の父親だから」

「そうなのか?」


 クラスメイト全員に聞かれるよう、カズコは真相を語りだした。

 もちろん真面目な顔を作って。

 どうせこうなった以上はそのうち隠し事がバレる、なら今ここでマシなバレ方をするべきだろう。


 予想通り、クラスメイト達は真面目に黙って聞きだした。



「私の父親は研究者だった。チームを組んで、"別の世界に存在するモノ"を持ってくる装置を開発していた」


「でも失敗した。……父の研究は、"人に危害を加えるだけの存在"を別世界から呼んでしまうようになった。そして父は行方不明になった、生死もわからないけど……逃げたのかもしれない」


「……これで私が何で話したくないかわかったでしょ?自分の父親のせいで、こんな状況になってる。敵との戦いで怪我した人もいるし、社会でも色々と問題にはなってる……だから皆に言い出せなかった、それはただ私が卑怯者だから」


 父親の研究が事故って学園に敵が襲撃してくるようになったのは本当の事だった。

 自分の親のせいで、今みたいな状況になってると言うのが怖いのも本当の事だった。

 父親の事がバレたら、誰かから傷つけられるんじゃないかとカズコは怖かった。

 カズコは”人”が”敵”になるのが怖かった。


 人を襲う目的しかもたないシンプルな連中よりも、人の方がカズコは怖かったのだ。


「カズコ。親が何かでも、出世に関係がないケースも結構あると思うぞ。あまり気にする事じゃない」


 カンスケがカズコにそういった。

 遠回しな慰めの言葉だが、その意図はカズコに伝わらなかった。


 ただ、カズコはカンスケの言葉を”使える”とは思った。

 自分の人格が、たくさんの人が仲間をしてくれるような高潔なものだと見せかけるために。


「たしかに親の罪は子供には関係ないと私も思う!私は悪くない。仮に私を責める人がいればそいつの性根がゴミだ!」

「ゴミ?」

「だけど、私の親がしたことである以上、私自身が何かするべきだとは思った。責任を変わりに取ろうと思って、ここにいる」


 よし、上手く騙せてる!

 そうカズコはほくそ笑んだ、周囲の反応は、おおむね同情的に見える。

 上手く”親の失敗をリカバリーしようとしてる正義感あるヤツ”を演じられた、そうカズコは自画自賛する。


 正直なところ、親の失敗の責任なんてとりたくはない。

 ただ、いずれ父親のせいで敵がやって来るようになった事が世間にバレるかもと思ってた。

 だから『私は親の責任を取るために頑張ってました!』と言える立場がほしかった。


 敵がやって来る理由がバレた時、自分を攻撃されないように。


「だから最初にやった話に戻るんだけどさ、私はカンスケがこのクラスのリーダーになってほしい」

「俺が、か?」

「うん」


 そして、ついでにクラスのリーダーの話をする事にした。

 今はカズコの言葉を皆が真剣に聞いている状態、つまり周囲の行動を誘導できそうだから。


「皆は私をリーダーにすすめてくれるけど、父の事があるからどうしても”私でいいの?”って思っちゃうし。なによりも私が前線で戦いたいからリーダーになれない」

「えっ?カズコが前線で?!」


 カンスケが滅茶苦茶驚いた。

 カズコはなんでそんな反応されるか少し考えた。  


 そういえば、カンスケには戦いが怖いってのを伝えていた、じゃあ驚いてもおかしくない。


「私は親の責任を取るために戦ってるから、直接敵を倒していきたい。だから、指示を出したりする役目に興味が無い」


 カズコはそう言って、責任を取りたい事にしておいた、一切合切取りたくないけど。

 本当は戦いとかしたくないし、戦うにしても出来るだけ楽な仕事だけやっていくつもりだけど。


 クラスメイトたちの反応をもう一度見ると、やはりカズコに対する敵対感情はほぼ無さそうだ。

 カンスケだけはカズコの過去にあまり関心が無さそうで無表情だった、出世以外ほぼ興味が無いのだろう。


 とりあえずカズコの狙い通り、真相を知ってるのがバレてしまったという事態を上手く収められたようだ。


 しかしまだ考える事がある、バレた秘密をクラス内で留めさせるかという事だ。

 ……クラスメイト全員に”かくしてくれ”と言っても、秘密を守れない奴もいるだろう。

 だがしかし、クラス内だけに秘密をとどめておけるならカズコはそれがベストと思うのだ。


 どうしようかな、と迷っているといきなり放送アラームがなった、今回はメチャクチャ激しいドラムだった。これは敵がやって来た時の音だ。


『強敵が現れました、担当クラスだけでは手が足りない可能性があるので。希望者の方々はお願いします』


 放送音声によると、そこまで緊迫した状況ではないらしい。

 普段よりは強い敵が来たようだが、別に対処しきれないという程でもないくらいだ。



 ただ、それでも普段よりは危ない相手だ。

 カズコはできたら戦いたくないと思った。

 まぁ、どんな相手ともできるだけ戦いたくはないが……


 そして窓の外を見て、一応どんな敵が来たのか確認しようとすると。


「よし。カズコ、戦うつもりなんだな?」


 とカンスケに声をかけられた。


「……え?」


「俺は出世のために。カズコは親の責任を代わりに取るために戦うんだろ?」


 カンスケも、カズコの話をちゃんと聞いていた。

 カンスケの認識では、”カズコは親の起こした事態に責任を重く感じ、恐怖心に耐えて戦っている”となっている。

 実際そこまで間違っては無い。


 ただ一つ、カズコは出来る範囲で戦っていくつもりなのだいうカンスケの思い込みだけが間違っている。


「みんな!たたかおうぜ!」


 クラスメイトの一人がそんな声を上げた。

 カズコは慌ててそちらを見る、やけに明るい顔だ。


 とんでもない嫌な予感がして、カズコは一瞬で汗だくになった。


「あぁ!俺たちカズコを助けるぞ!」


 別のクラスメイトも妙に好戦的だ、しかもカズコを引き合いに出している。


「私も!カズコの話聞いたら、なんかやる気出た!」


 親の責任を取るため戦うというカズコの話は、なんだかんだ良心のあるクラスメイトたちの戦意を高揚させていた。


 この調子だと、カズコは戦うしかなさそうだ。

 放送で強敵と呼ばれてたようなやつと。


「ふふ」


 カズコは無理やり笑おうとして、でも上手く表情が作れなくて。

「わあああああああああ!!!!」

 そして叫んだ。


 戦いたくない、その思いを秘めたカズコの絶叫は、クラスメイトたち皆、雄叫びと認識するのであった。


もしこの小説の続きが読みたいなどと思ってくだった方がいれば、まずはありがとうございます。


もしもよろしければ、ブックマークや感想など頂けると作者の励みになります。

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