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学園ディフェンスー正直敵と戦いたいわけない  作者: 学園ディフェンス部長
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2話 真相を知りたくない?

コメディ小説にしたい

 夜、自分の家でカズコはベッドに入り込んではいるものの寝られずにいた。

 不安で落ち着かず、天井と壁も掛布団を順に繰り返して視界に入れる。

 今日の昼、学校でやったアサルトライフル落ち武者の撃退は非常に評価されたのだが、とても困る。


 いくらアサルトライフル落ち武者が未知の敵で、カンスケと共に被害を最小限に食い止めたといっても、カズコは評価されたくなかった。

 だって、あんまり評価されてエース扱いされると戦いの責任を多分に任せられてしまう……とカズコは焦っているのだ。


 これまでクラス内でコミュニケーションを頑張って来たのは、皆に守って貰うためだ。

 守るためじゃない。


 正直戦いなんてしたくない、怖い。

 この御守学園に来たのだって、仕方なくの事だ。


 そして悶々としているうちに、カズコは気づいた、自分と同じかそれ以上の実力の人間をエースに仕立て上げればよいのだと。 

 そうしたら自分は楽になれる。


 エースのアテはいる、カンスケだ。


 ……エースになるということはより戦いで危険な役目を担うことになるのだが、カンスケは 

 "俺はこの学校でも出世したい”とか言ってたし、別に問題ないだろう。当人の望みだし……とカズコは思った。


 カンスケ自身もクラスのリーダー的存在になりたがっているはずだ。


 なぜなら御守学園で出世というと、司令部に行く事だからだ。

 司令部とは名の通り、学園全体の司令をする部活動である。

 ただし人の信頼を集められる者しか入部できず、クラスメイトの七割以上から推薦が必要である。

 というわけで、司令部いきを目指すならクラスのエース的存在になるしかないのだ。


 カズコはカンスケがクラスの人気者になる事を、明日から手伝うと決めた。

 明日に希望が湧いてきて、ぐっすり眠れた。


 翌日。

 カズコが登校すると、いつものように男女とわずクラスメイトが何人か集まってきた。


「おはよー」

 適当にカズコは挨拶する。


「カンスケは、すごいやつだよ」

「どうした急に」


 そしてすぐにカンスケを褒めたたえ始める。

 行動は早いほうがいいと思ったからだ。


 多少不信感を抱いたクラスメイトもいたが、これまで頑張って仲良くなってきた連中だから大した問題ない。


「カンスケこそ、私たちのクラスを引っ張るのにふさわしいと思わない?」

「カズコのほうがいいって、あいつなんか不気味だから」

「そうだそうだ、カズコの方がいい」


 クソ、どいつもこいつも私の事褒めやがって……それにカンスケのやつ人との交流サボりやがって……内心カズコは苛立った。

 だが、その心情を表情に出さず、どうにかカンスケの事を周りに認めさせようと苦心する。


「カンスケは、優しいよ」

「え?なんかあるのあいつにいい奴要素」

「ほら、昨日の戦いとかで窓の外に飛び出した私を助けたじゃないか」

「そりゃ、仲間同士は助けるのが当たり前でしょ」

「……」


 カズコはクラスメイトの思考に驚いた。

 仲間同士は助け合って当然なんて、思いもしていなかった。


 だって自分は仲間に助けてもらいたいけど、仲間を助けるのはわりと嫌だ、危ない目に会いたくないし。


 だからカンスケを優しいと評価してるし結構信頼もしてるのだが……クラスメイトの中にはそう思わない人もいるみたいだ。


「あの……その……あいつは、世界とか守れる立場になりたくて勉強してるらしい」

「えー?!なにそれ?!ガキ臭ッ!」


 カズコのめちゃくちゃな発言は、次のような思考プロセスから生まれた。


 ―――カンスケは”出世したい”と言っていた、出世するって事は権力があるって事だ、そんで権力があるっていうのは色んな人を守れる立場じゃん、じゃあカンスケは人を守れる立場になりがってるって言っても嘘ではないよね――――



 どうにかしてカンスケがクラス内で人気になるため、カズコがさらに話題を広げようとところ、教室のドアがあいてカンスケが入って来た。


 カズコは焦った、カンスケを褒めたたえるのは今のところ勝手にやっている事だ。


 つまり本人と連携が取れていないわけで、下手をするとカンスケ自身の言動でカンスケをクラスの人気者にする作戦が失敗する。


 例えばだがーー

「世界?みんなを守る?知らん、オレは出世するためならクラスメイト全員生け贄にできる」

 とかカンスケが言い出したらまずい、本当に例えばの話でしかないが。


「カンスケ、ちょっと今後の事を話そ!」

「なんだ?必要なら手短にな」


 急いでカズコはカンスケに話しかけた、どうにかこの場を離脱してカンスケの出世を手伝うことについて話さなければならない。


「カンスケはさ、出世したいって事は……司令部を目指すんだよね?」

「あぁ」

「じゃあさ……わたし色々知ってるよ。使えそうな情報」

「へぇ」


「……例えば敵が襲撃してくる真相、カンスケにだけ教えようか?」


 ぼそりと、カンスケにだけ聞こえるようにカズコは言った。

 一人だけ情報アドバンテージを得て、今後有利に立ち回れるようにしないかという誘いだ。


 これにカンスケが乗れば二人きりで話す時間が取れるし、今後出世を手伝ってやるという相談ができる。


 ただ、結構カズコにとってはリスキーな選択肢だ。

 "カズコは敵がやってくる真相を知っている"と、誰にも思われたくない理由があったったからだ。


 だが、そのリスクを負ってでもカンスケと協力してカンスケという人間を出世させるリターンはあるとカズコは思っていた。


「なんで敵が襲撃してくる真相をカズコが知ってるんだ?」


 カンスケが普通の声量で聞き返した結果、カズコは目を見開く。


「黙れ……」

「カズコが自分から言ったこと聞き返しただけなのに……」


 カズコは反射的に黙れとつぶやいたが、手遅れだ。

 もう教室の中の結構な人間が、カズコにとって知られたくない事実を知ってしまった。


 教室中から注目が集まっていた。


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