6.【壊れる音】
お姉ちゃんが凄いことに気付いてどれだけたっただろう。
2人で抱きしめあっているが、まだ破壊音が聞こえており動くことが出来ない…
数時間にも思えるが、それほど経ってないようにも思える…時間の感覚がもう、分からない……
遠くで誰かの叫び声が聞こえる...
怖い…
お婆ちゃんが刺されるところ...お母さんが刺されるところ……全部が鮮明に脳裏に浮かぶ...
きっとお爺ちゃんももういない……
寒い……
唯一、お姉ちゃんの体温だけが安心できた。
ガラガラッ!バキッ、ガシャン!
音が近い…
"ギシギシッ、ギシギシ"
ドス、ドス、ドス……
鳴き声のような音や足音、やけによく聞こえる。
ギュッとお姉ちゃんを強く抱き締めた。
バキンッ!!
ほとんど光がなかったはずの保管庫に光が入り込んでくる。扉が壊されてしまったのだ。
近くで見る化け物の黒い甲殻は光を反射して鈍く輝いていた。化け物の背後には既に間取りも定かではないくらいに崩れている家が見える。
「アリス、わ、私が何とかするから!」
「お、お姉ちゃん?」
お姉ちゃんはそばにあった保管袋を手にとり思いっきり投げつけた。
化け物にはビクともしない…...が、化け物が保管袋を切り刻む隙にお姉ちゃんはそのすぐそばを走り抜けた。
「お前の相手は私だ!!」
走り出してすぐに見えなくしまう。謎の生物もお姉ちゃんを追って動き出しようだ。
私は保管庫の奥で身体を小さく丸めることしか出来なかった...
1人はとても怖い...
何か音が聞こえる...お姉ちゃん......大丈夫だろうか...
怖い.....
コツ、コツ、
しばらくして、足音が聞こえる…
とても怖い.....
「アリス」
「お姉ちゃん!?」
お姉ちゃんが帰ってきて、私はとても安心した。こんなにもお姉ちゃんは心強いものなのだと実感した。
私が顔を上げるとお姉ちゃんはニコッと笑いながら保管庫に入ってきた。
「巻けたみたい、家が崩れて隠れれるようになってる場所がある、そこなら大丈夫。今度はそこに隠れよう!?」
「うん」
手を引いてくれるお姉ちゃんには擦り傷が無数に出来ていて、深そうな傷もあり血だらけだ。私はお姉ちゃんの足でまといにしかなっていない…
こんなに勇気のあるお姉ちゃんにすがるしがない自分に悲しくなる。
保管庫を出るとすぐ……
扉の裏の死角から化け物が急に現れた。
「え!?そんな!?」
お姉ちゃんに保管庫へ押される。
「アリスは生きッ…テ……」
私は転びながらお姉ちゃんが槍のような腕で胴から2つに切られるのを目撃した。
「おねーちゃーん!!!」
涙が止まらなかった。ただ全力で叫んだ…
何かがプツンと途切れて、足の力が抜けた。
もう、私の家族は誰も居なくなった……
黒っぽい生物の脚がまた1歩こちらへ踏み込んでくる。
次は私の番だろう。私の足はもう力が入らず動かせなかった。
迫り来る生物をただ真っ直ぐ見つめる…...
そんな時謎の生物が、吹き飛んだ。理解が追いつかなかった。ただ生物の首だけがどこかに飛び、身体はそのばに崩れ落ちる。
「すまん、間に合って……は、ないの」
知らない巨漢のおじさん現れた。このおじさんが助けてくれたのだろうか!?
「?...…おねーちゃん!!」
今は急いでお姉ちゃんに、近づく…
お姉ちゃんは口から血を吐いて、あの力強い目から光が既になかった。お姉ちゃんを抱き締めるとやけに軽く感じた……
お姉ちゃんの下半身とくっつかないだろうか……
子供ながらに無理とは分かっていても、すがってしまう。さっきのおじさんを見上げると、とても悲しそうな目をしていた。
「お姉ちゃんは立派じゃった...」
「治らない?」
「すまんのぉ...、我々の技術でも……無理じゃ...」
現実を突きつけられ、辛うじて耐えていた涙が決壊した…
「ぅわぁぁぁぁぁん!!」
そこからもう覚えていない.........
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side:レイモンド
「強い子じゃ…頑張ったの」
泣いている女の子の頭を撫でる。発見からここまで出来る限り最速で来た。それでも、1時間はかかっている。
その時間もこの子にとっては何時間にも思えただろう...
きっとこの子のお姉ちゃんが少しでも時間を稼いでいなければ、この子も助からなかっただろう...
「隊長...」
「うむ」
少し少女から離れる...
「他に生存者は?」
「今のところは誰も…」
「そうか…」
「メイはあの子の傷の手当を…
足の傷も深い、精神ともに既に限界じゃ...」
「はい、すぐに!」
「さっさと残りを処理して、生存者の捜索を行うとしよう」
「了解です」
……バグズ被害はいつまでも隠し通せるものじゃないのぉ、村ひとつが1時間足らずで壊滅じゃ。問題はどう世間に話すか...いきなりなんぞパニックになるじゃろうて。
首脳陣は頭が硬いからのぉ、少しずつでも情報を流すべきだと思うのじゃがな...
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