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ブラックペギーの末路 -1-

 鋭い爪が、イワオのまるくてプニプニな背中に突き刺さろうとしたそのとき。


「モアファイアー」


 爪と背中の間に炎の球が飛んできた。


「そこまでにしておきなさい、ブラックペギー。わたしがきたからには、もう乱暴は働かせません。大人しく観念してください」


 ようやく炎の大魔導師ミリア、賢いヒロイン枠である主役の登場です。


 長らくお待たせしました。


 長らく……待ってましたよね。


「あ! おまえは! さっきふざけた氷のちんちくりん魔導師と一緒に、丸焦げにしてやったはずの女魔導師!」


 ブラックペギーが上空から翼でわたしのことを指さしています。


「チッ、何を寝ぼけたことを言っているのですか。わたしは炎の大魔導師です。炎のことは知り尽くしていますし、そもそも自由に操れます。そんなわたしが焚火にくべられて、丸焦げになるはずがありません」


「えっ? 炎の大魔導師? そうなの? そんなのちっとも名乗らなかったじゃない」


 困惑気味のブラックペギーは大きなコブをもたげながら、首をかしげています。あれだけ大きなコブの重量で首がもげてしまわないのですから、支えている首の筋肉は大したものです。


「大魔導師たるもの、不利な場面でわざわざ鷹の爪を見せびらかすようなことはしません。炎に巻かれて焼け死ぬと見せかけながら、泣き喚いていただけです。実際に焼かれることはあり得ません」


「え、演技だったってこと? じゃ、じゃあ、あのちんちくりんは?」


「ちんちくりんこと自称氷の大魔導師も、魔法でガードしていましたから、まったくダメージは受けていません」


「うん、ぼくもへっちゃら」


 わたしの背中に隠れていたフレデリック君も、ひょっこり顔をのぞかせました。


「あ、ちんちくりんまで無事だったのか!」


 ブラックペギーは黒い嘴から汚い唾をペッペと飛ばしながら、フレデリック君を睨みつけています。


「だから、ちんちくりんて呼ばないでよ。ぼくには立派な氷の大魔導師フレデリックって名前があるんだから」


「ヒョオリノヒャイマロウシフレレリッコ?」


 ブラックペギーが自信なさそうに復唱しています。


「ちがう、こ・お・り・の・だ・い・ま・ど・う・し・ふ・れ・で・り・っ・く! ぼくが子供で、まだあんまり滑舌よくないからって、それはないよ! 屈辱だ!」


 フレデリック君は目に涙をためています。


 確かに中身は大人でも(記憶はあると確信しています)、現容姿は六歳くらいの子供ですから、フィジカルは大人には及びません。


 舌っ足らずといえば、その通りです。


 でもそればかりは、子供として生きている本人の努力でどうにかなるものでは――……。


「ちょ、ミリアおばさん、笑いすぎ……!」


 泣き顔のフレデリック君に袖を引っ張られてしまいました。とはいえ……。


「ヒッ」


「引き笑いもやめて。傷つくから」



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