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イワトビーの長老 -5-

「誤解です。わたしではありません。何を証拠に、そのようなことを……」


「なに、難しいことではない。ただ長い時間をかけて、丹念に調べ上げた結果だ。ブラックペンギンを海に突き落としたのはだれなのか。トイレドアの下から付きの者たちに指示書を出しながら、聞き込み調査をしてもらい、あやしい者を洗い出していった。そしてついに複数の目撃情報と、いじめの主犯格としてイワオが指揮を執っていたことも判明したのだ。もう、逃げられんぞ」


「逃げるなんて、そんな。だって、わたしは何も悪くない。皆のために、早いうちから亜種を始末しようとしただけですよ。あいつがいずれ脅威になるのはわかっていた。だって……」


 イワオはひと呼吸置くと 、嘴を舌で舐めた。


「だって、あいつは、あいつの正体は、決して泳げはしない黒い鳥、カラスなんですから! 海で泳げない代わりに、大きな翼で上空を羽ばたき、4本の指から伸びる爪は鋭く尖っている。肉も切り裂く深い爪で、我々イワトビーのまるい背中に爪を食いこませ、大空に舞い上がってしまえば、同胞は二度と戻ってこないでしょう。あいつが成長すれば、そんな未来がやってくることは容易に想像できるのに、平和ボケしている大人たちは、子供の亜種を加護しようする。馬鹿としか言いようがない。真実が何も見えていない」


「プラックペンギンが本当は黒いカラスだと、どうしてわかった?」


「わたしは、皆と違って、一度ヒョウザリン山を降りて、平原の地を踏んだことがあります。そのときにイワトビー以外の生物もたくさん見ました。下界には、物語の中でしか聞いたことのないような、多種多様の生き物がたくさんいました。どの生物も美しく、とても感動的でした。しかし 、その世界線の中には、弱肉強食というむごたらしい現実も隠れていることを知りました。弱い者は、強い者に食べられる。強い者はさらに強い者に食べられる。そのような光景を幾度となく見るうち、わたしはとんでもないことに気づいてしまったのです。イワトビーは、この世界線において、かなり弱者の部類に入るということを」


 イワオは、こぶしを握るように羽の先をきつく折り曲げながら、一点の雪地をにらみつける眼は、ギラギラと光っていた。



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