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炎の大魔導師 VS 氷の大魔導師 -5-

 

 ようやく完成しました。


 まる十日と三日間。よく眠り、よく食べながら、よく魔道研究もしました。


 フレデリックの魔力を取り戻すには、まずはフレデリック本人の睫毛片目分全部(左右どちらでも可)と、南極の氷、魔道陸軍のアキレス腱、ただの大豆、ワイバーンのよだれ(これは潤滑油として何にでも使えます)、虹の青色部分だけ、その他もろもろの材料が必要となります。


 それらをかき混ぜ、ゴムベラが重くなってきたところで型に流し入れて、冷凍庫で一晩凍らせます。


 そこからさらにまた解凍し、フレデリックの残りの睫毛を一本一本追加し、何度も気の遠くなるような工程を繰り返したところで、「魔力の素」の完成です。


 炎の大魔道師であるわたしには、冷たいものを扱う回数も多く、少々きつい魔道研究でした。


 台座の上に佇んでいる魔力の素は、さすが氷属性の魔力を秘めているだけあって、さわやか青色の光を放っています。


 これをフレデリックの身体に移せば、魔力は甦るでしょう。


 古代の魔術書に書かれていたレシピを参考に作りましたが、その書物を残したのは偉大なる大魔導師ピルピルなので、問題ないはずです。




 さっそくフレデリックを呼び出しました。


 全てのまつ毛を抜き取られているので、玄関ドアの前に立つフレデリックの両目はバキバキに乾いています。


「さ、さすがだな。まさか、本当に魔力の素を作り出してみせるとは」


 フレデリックは両目を何回も瞬かせながら、細く目を開けています。


 きっと、ドライアイになっているのでしょう。しかしそんな苦難も、元通り魔力を取り戻すためなら問題ではありません。


「これくらい、わたしの手にかかれば当然のことです。では、魔力の素をフレデリックに移します。心の準備はいいですか」


「ああ、いつでもいいよ」


 両掌の中で青く発光している魔力の素を、そっと目を細めているフレデリックに近づけると、青い光は自ら動き、吸い込まれるようにフレデリックの中に取り込まれていきました。


「これでまた魔法を使えるはずです。なんでもいいので、なにか唱えてくださ――……?」


 なにやら様子がおかしいです。


 全身を青色の光に包まれたフレデリックは、みるみる、みるみる、縮んでいきながら、やがて五、六歳くらいの男の子の姿になると、着ていた服の一部が大き過ぎて、床にパサリと落ちてしまいました。


 ……これは、失敗した、ということでしょうか。


 目の前の男の子は、ぶかぶかの袖を揺らしながら、


「おばさん、だれ?」


 と、首を傾げています。


 おばさん? ああ、おばさん? 理解をするのに時間を要しましたが、どうやらわたしのことらしいです。


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