炎の大魔導師はペットが苦手 -6-
非常に頭を抱えています。
どういうわけか、トビーがコーンフレークを食べなくなりました。チョコワも、チョコクリスピーも、フルグラも与えましたが、ダメです。拒否します。皿を、ぐーっと押し返してくるのです。生意気だ、などと言っている場合ではありません。このままでは、摂取すべきカロリーが明らかに不足します。
「欲しくないペン。心配しなくていいペン」
言うわりに、トビーの顔色はみるみる青白くなっていきます。
「トビー、食べたいものはありますか。なんでもいいので言ってください」
「え? 別に……」
そういったきり、トビーは眠りについてしまいました。
別に。心配いらない。
この言葉を鵜呑みにするほど、わたしは愚かではありません。このままでは抵抗力が落ちて病気になるか、餓死するかです。そうなる前に対策を打つ必要があります。
「連絡くれたってことは、ぼくを元に戻す魔法が完成したってこと? それとも、ぼくに会いたくてたまらなくなったとか? ……って、え! トビー? どうしてこんなに痩せちゃったの!」
フレデリック君に魔導テルで連絡すると、その日のうちに彼はこの家にやってきました。
「ーーというわけで、トビーは危機的状況を迎えていますので、フレデリック君を呼びました」
「危機的状況!? トビーは死んじゃうかもしれないってこと!? 見捨てるの!?」
フレデリック君は眠ったままのトビーに追いすがって、ぎゃんぎゃん泣いています。
「食事を口まで運ぶことはできますが、飲み込ますにはトビーの意志がいります。トビーにはその意志がありません。動物病院にも行きましたが、魔物は出て行けと門前払いにあいました」
「ひどい!」
「……」
フレデリック君は目に涙を溜めています。しかしながら、これが現状です。魔物たちは、わたしたち人族の生活をおびやかす嫌われものです。そうそう、受け入れられるものではありません。
「じゃあ、どうするの! あきらめるの? ミリアはトビーが死んでもいいと思ってるの!?」
ミリア。おばさんじゃなく、こんなときに。へえ、ふうん。
「フッ。あきらめるなんて、誰が言いましたか。フレデリック君。今からヒョウザリン地方に行きますよ。トビーの生まれ故郷になら、おそらくトビーが食べられるものがあるはずです」
それだけじゃありません。きっと、失われようとしている生きる気力だって、蘇るにちがいありません。
人族の住む土地は、トビーにとって、負担や慣れないことが、たくさんあったのかもしれません。毎日悪態をつきながら、楽しそうにしていたとしても、本当は無理をしていたのかもしれません。
ガリガリのわたしに、毎夜、お母さんの面影を重ねていたくらいですから。
お母さんに会えば、トビーも必ず元気になる。そう、信じたいです。




