炎の大魔導師 VS 氷の大魔導師 -3-
あれから三日経ちましたが、フレデリックとやらは現れません。
やはり、ティア鉱石を手に入れるのは無理だったのでしょう。
あの男の魔法は氷魔法。氷属性の魔物であるイワトビーとは、相性が悪すぎます。
待っていても仕方ありません。そろそろ寝る準備をしましょう。
先ほどからドアを遠慮なく叩く、無慈悲な騒音が部屋の中に届けられています。
これでは精神が乱れて眠れません。
時計は、二十三時を回っています。
ノックの音は止みそうにありません。
腹立たしさを覚えながらも、わたしはドアの前に立ちました。
「どなたですか」
「わたしだ、フレデリックだ。ミリア殿、開けてくれないだろうか。約束通り、ティア鉱石を持ってきたぞ」
確かに、フレデリックの声です。
ドアを開けてやると、目の前に現れたフレデリックは傷だらけでした。
「どうしたんですか、この傷は」
「ああ……。わたしは、大魔導師と言っても、専門はもっぱら研究で、得意な魔法は氷魔法だけだからな。さすがに、イワトビーみたいな氷属性には苦戦したよ」
それは、そうでしょうね。
「手を出してみろ」
掌を差し出すと、フレデリックとやらはそこに楕円の石を乗せてくれました。
この複雑に濁った黒色。まごうことなきティア鉱石です。
一気に目が覚めました。
これがあればまた、魔道研究を再開できます。返すべきものさえ返してくれたのなら、これ以上うだうだ責めるのはやめにします。
「確かにティア鉱石を返してもらいました。それでは約束通り、さっそく決闘を始めましょう」
「え? 今から? ちょ、ちょっと待ってくれーー」
「準備はいいですね、ではいきます。モアファイアー」
「うわああああ!」
モアファイアーくらい、フレデリックとやらは容易に収められるはずです。
むしろ、こちらのほうが分が悪い。相手は氷魔法の使い手なのですから。
「うわああああ!」
「?」
「うわああああ!」
「どうしたのです、早くモアブリザードを放って相殺すればいいではないですか」
「火、火を消してくれ! わたしはもう、魔力をいっさいがっさいなくして、魔法は使えなくなってしまったんだー!」