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ずんぐりむっくり転移者は異世界で図太く生きる〜イケメンじゃなくても異世界で生き残れますよね?〜  作者: まっしゅ@
第四章 異世界転移したけど英雄扱い!?

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ゴーシィ、モテない理由を知る〜異世界生活八十七日目③〜

 僕はこれから新しい相棒となる野太刀をゴルゾフさんから受け取りました。

 直接確認しては無いのですがあちらの世界同様、(なかご)には刀銘がを刻まれているそうです。


 銘は【波折(なおり)】。

 刃文が濤乱刃(とうらんば)(うねりが出てきた波を模している刃文の事)、更にそれが重なった様に見えるのでそこから付けられた銘になります。




 そして実は一本、腰に提げているもう一振りの相棒。

 此方は対人用に拵えてもらった小太刀、又は長脇差と呼ばれる一般的に刀と呼ばれる打刀と短い刀である脇差の中間の長さを持つもの。


 銘は【(さざなみ)】。

 これも同じく刃文、湾れ刃(のたれば)から取られています。

 同じくミスリルによって造られているので刃渡りが少し短い分に加えて軽いので取り回しに優れ、狭い場所やこの村の周辺の様な森の中でも扱い易い一振りです。

 僕があちらの世界での()()()で尤も使っていたのも同じ種類でした。


 そんな二人振りの相棒達を身に着け、ルンルン気分で村を歩いていた僕。

 まさかこんな事になるとは夢にも思っていませんでした。






 こんなに早く、相棒を振るう事になってしまうなんて―――








「ゴーシィ、次はこっちを頼む」

「分かりました」


 額の汗を袖口で乱暴に拭い、波折を肩に担いぎつつ、エルフに言われるがまま次の場所へ。


「次はこいつだ。一思いにやってくれ」

「はい。…………っしっ!」


 袈裟斬り一閃。

 相手は抵抗も無く斬られ、そのまま重力に従い、倒れます。


「よし、こいつで最後だな」

「いえいえ。何か力になれる事があれば何時でも言って下さい」

「あぁ、そうさせてもらうよ。でもまさかそんな細い剣でこの太い木を斬れるなんて思いもしなかった」

「僕もしても良い鍛錬なりました」

「そう言ってもらえると助かるよ、ありがとう」


 僕は波折を鞘に収めながらそう告げました。


 村を歩いていると外で何かやっているのが見えたので、声を掛けてみれば、数人のエルフが協力して木の間伐をしていました。

 折角なので手伝える事は無いか尋ねると、まだ予定の木が数本残っているとの事でしたので、ちょっとした訓練も兼ねて手伝う事に。


 初めて斬ったのがミスリルの原石、続いてが木。

 波折の役割が現在ツルハシか斧になっていますが、命を奪うだけが仕事じゃないので良しとしましょう。

 こんな使い方しているとゴルゾフさんに怒られる気もしないでも無いですが、村の役に立つなら良いかなと。

 その時はその時でちゃんと斧を使ってやる事にすれば良いですし。


 手伝ったお礼に幾らかの食料と立派な布を頂けたので、フィズさんへの良い手土産になったと思います。


「それにしても、昨日の件ですっかり雰囲気が変わりましたね」


 普通に話し掛けたら普通に返してもらえる。

 それだけで関係性が改善されたのが実感出来ました。


 一部は行き過ぎて怖がられてる気もしますが、それも時間が解決してくれると思い…………ます。


 他にも、エルフ族の居住区で荷物を運びをして果物を貰ったり、ドワーフ族の居住区で酒造りを手伝ってまた酒を貰ったりしていて気付けば日も暮れ始めてきました。


 両手にお土産をぶら下げて家に帰るって何か不思議な気分です。


 家に戻れば朝出掛けた(攫われた)僕が背中と腰に刀を提げ、両手に大荷物を持って帰ってきた理由を根掘り葉掘り聞かれました。


 そりゃそうですよね、刀を受け取った後先に戻れば良かったです。

 向こうの世界でよく「女心が分かってない」と言われてたのはこういうところなんでしょう、身に沁みました。


 一通り何があったかを説明して、フィズさんが不満そうではありましたが納得してくれたので一安心。

 そのまま夕食となりました。


「朝は手伝ってもらえなかったので、今から手伝ってくれますよね?」

「はい、勿論です!」






 夕食が終わり、お風呂入って寝る前になりました。

 寝る前の挨拶をして、各自の部屋に入り、僕はベッドの上で少し考え事をしていました。

 寂しい……とかそんな話では無く、独りベッドで考えているのはこれからの事。


 昨日の一件以来、元々友好的だったドワーフは勿論、エルフの態度が軟化しました。

 残りのハルピュイアとマーフォークの居住区はまだ足を運んだ事が無いので分かりませんが、一度行ってみたいと思っています。

 聞くところによるとハルピュイアは一定の場所にずっといる訳では無いのであまり数がいないらしいですが、それでも行かない選択肢は無いでしょう。


 幾らそれぞれのトップは受け入れてくれても、全員が同じ様に受け入れてくれるとは限らない事はエルフ族の一件で身に沁みましたし。


 それと今後、この村で永住するのか他に行くのか。


 これに関しては直ぐに決める必要がある訳では無いので追々考えれば良いかもしれませんが懸念点が一つ。


 僕はローゼンに戻る気はありませんがフィズさんはどうでしょうか?


 彼女にとってあの国は生まれ育った場所です。

 自ら僕に付いてきてくれたとは言え、故郷に戻りたいと思う事があるかもしれません。

 それも一度話して確認しなければいけませんね。


 そして、今考えている一番の問題。


 それは仮にヒト族がこの村を発見しし、攻めてきた或いはそれに準ずる行為をしてきた場合、僕はどう立ち回るか。


 基本的にはこの村を守る為に立ち回るつもりですが、あまりに敵対関係を強めてしまえば、それから先ずっと戦い続けなければいけません。


 もし、異世界人としての価値が役に立つのであれば、この身一つでどうにかなるのであれば、動き方を変える必要もあるかもしれません。






 この村の住人と仲良くなればなる程、懸念点が増えるジレンマに苛まれながら、僕は寝苦しい夜を過ごす事になりました。

 刀で木を斬るんじゃねぇよ!ってツッコミは無しの方向でお願いします。

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